レビュー

【90点】【オクトパストラベラー2】初代の半アンチをも虜にする大幅進化!一方、シリーズ固有の問題点も浮き彫りに…。評価・レビュー・感想

タイトル(かな) おくとぱすとらべらーつー
ハード Switch,PC,PS5,PS4
発売日 2023年2月24日
点数 90点(傑作)
総評 ・初代の問題点を大幅に改善
・シリーズ固有の問題点は健在。メスを入れる時がきた

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序文

前作「1」(以下、「初代」と表記)が、古き良き2DのRPGを進化させた話題作として大ヒットしたことを受け、続編が発売された。
しかしながら、筆者は初代は正直微妙…何なら駄作に一歩足を踏み入れていると言えるほどの低評価を下しており、本作「2」にも過剰な期待は抱いていなかった。実際、体験版プレイ時も、「コレ結局キャラ変えただけの初代じゃん。良い点も悪い点もそのまま。まるで成長していない」という感想を持った。

しかし、製品版を実際にプレイしてみるとその評価はすぐに改めなければならなかった。
このゲーム、とても面白い。初代の問題点の多くにメスを入れ、非常に遊びやすい作りとなっている。

本作の良かった点、悪かった点について、初代との比較も交えつつ、本レビューでしっかりと紹介していく。なお、ネタバレ箇所もあるので、閲覧の際は注意。

良い点

本作の特筆すべき点は、初代が抱えていた問題点のほとんどに対し、一定のアンサーを提示している点である。具体的に見ていこう。

イベントシーンのフルボイス化

昨今のRPGではほぼ標準的に実装されている「フルボイス」であるが、実は初代ではメインシナリオですらフルボイスでないシーンが多くあった。初代で実装されていたのはいわゆる「パートボイス」で、これは、いくつかの短いテンプレートボイス(例えば「う~ん」とか「なるほど」とか「よし!」とか)をキャラのセリフに当てこんで流すというものである。初代ではパートボイスがものすごく多用されており、かつ実際の吹き出しに表示されるセリフと合っていないものが多く、物凄い違和感があった。こんなに中途半端なパートボイスを実装するなら、フルボイス箇所以外はいっそボイスいらないのではと思えるほどのストレスで、ゲーム世界への没入を損なうデメリットがあった。

しかし、「2」ではしっかりとイベントシーンはフルボイス化。これにより物語への没入度が大幅に高まった。
とはいえ、フルボイスというのは昨今のJRPGではほぼ標準実装なので、これは初代でマイナスだった要素がゼロに戻っただけともいえるのだが、声優さんの名演もありしっかりと加点要素として働いていると感じる。

フルボイスにより没入感とキャラへの愛着が大幅に高まった

初代で面倒だった要素の撤廃

  • 盗賊しか開けられない宝箱(紫宝箱)が撤廃。このせいで、盗賊を連れずに探索を行うと二度手間になることが多く非常に面倒であったが、あまりにも不評だったのか撤廃されている。
  • 捕獲した魔物の回数制限が撤廃され無制限となった。初代ではせっかく良い魔物と出会い、捕まえても、回数制限のせいで気軽に「けしかける」が使用できずに温存する必要があったりと遊びづらさの原因となっていた。

これらの要素は面倒この上なかったので、割り切って撤廃したのは英断といえよう。
また、少しズレた話だが、本作からPSハードでも発売されるようになったことにより、Switchと比較してロード時間が大幅に短くなった点も◎。PS5ではロード時間がほぼ皆無だ。

けしかけるの回数制限撤廃。有難い要素だ。

戦闘テンポの大幅改善

本シリーズの戦闘は、「ブースト」「ブレイク」といった固有システムによりそれなりに戦略性のあるものになっているが、初代においてはテンポの悪さが目立ち、特に中盤以降の雑魚戦の面倒臭さは精神に来るものがあった。弱点がわからない状況下ではブレイクさせるのも一苦労で、弱点の判別には運も絡む。ランダムエンカウントであることも影響して、探索が苦痛に感じることもあった。

一方、続編の本作では、戦闘システムは初代を踏襲しつつも、戦闘テンポが大幅に改善されている。

  • 倍速モードの追加。戦闘中に任意で切り替え可能。最大2倍速までな点は残念だが、劇的に楽になった。
  • 「底力」による雑魚の一掃。ヒカリやオーシュットなど強力な全体攻撃の底力技を持つキャラクターに、アビリティ「いきなり底力」「BPプラス」「先駆け」などを組み合わせることで雑魚を開幕で一掃できるようになり、雑魚戦のストレスが大幅に減った。
  • オズバルドの固有スキル「予習」が、初見ではない敵に対しては弱点を2種類ずつ表示してくれることとなった。未探索のエリアでは彼を連れていくことで弱点の早期発見が可能となり、戦闘が楽になる。

これらの要素により、初代にあった無用のストレスが大幅に減少。本来製作側が想定していたであろう本シリーズの戦闘の楽しみ方を、純粋に楽しむことができる土台が整ったといえる。

雑魚戦は大幅に改善された

シナリオ面の大幅強化

シナリオ面の進化も見逃せない要素だ。

  • 新要素「クロスストーリー」の追加で、主人公同士の絡みがきちんと描かれている。初代は、一度仲間になった後は「パーティチャット」というごく短いノーボイスの会話以外は主人公同士の絡みがなかったため、「仲間」というよりは「同行者」という立ち位置に感じられ、やや違和感があった。
  • 前述の通り、シナリオのフルボイス化により没入感を増している。
  • サブストーリー(クエスト)も力が入っているものが多かった。フィールドコマンドを用いてクリアするものが殆どで、適度に頭を使いゲーム性がある。他のRPGによくありがちな、「〇〇を何体倒してこい」とか「〇〇を〇個集めてきてくれ」といった作業的なお使いクエストが少なく、面白いものが多い。サブストーリーのクリアを通して自然とNPCへのフィールドコマンドの達成状況が埋まっていく感じに設計されている点も◎。

さらに、

ネタバレ注意(クリックで展開)
各主人公の物語が、最終的に「暗黒」という共通テーマに収束していく点も良かった。個別に完結しつつも、一部の未解決要素を残したまま終える各主人公のシナリオが、エクストラストーリーで纏まっていき、最終ボスを倒すという展開はなかなか熱いものがあった。

クロスストーリーについては他の組み合わせを見てみたいし、もっと掘り下げできそうなNPCも多くいた。DLCは期待できないのかもしれないが、もし実装されたらぜひ遊びたい。

クロスストーリーにより「仲間」感がグッと深まった

悪い点

さて、初代と比較し大幅進化し、満足度の高い本作。しかし、だからこそ感じた「シリーズ固有の問題点」につき述べていきたい。

「盗む」「強奪」「闇討ち」…仲間たちの関係性に違和感

初代からずっと感じていたことなのだが、邪道系のフィールドコマンド…特に「盗む」や「強奪」について、他の仲間が看過している点が非常に気になる。

  • ソローネの「盗む」は、商人としてのプライドを持つパルテティオの考え方とは相反する行為であるはずだが、特に揉めることもなく一緒に旅を続けている点にかなりの違和感を覚える。特にパルテティオは契約書の書き換えという非道な行為により父が貧乏落ち、病に伏した経緯があり、そのキャラクター像から見ても、相手の合意を得ずにアイテムを盗むという行為をする人間と共に旅をするとは到底思えない。
  • オズバルドの「強奪」についても同様だ。暴力により他者から金品を奪う行為をヒカリやアグネアといった真っ当な主人公が許すとは思えない。ヒカリの「試合」のように、勝った方がアイテムを得るなどといった両者の合意の描写があるならまだしも、「強奪」の対象となったプレイヤーの多くは続くセリフで抵抗する旨の意思表示を見せており、文字通り「強奪」だ。
  • 「闇討ち」「眠らせる」「けしかける」といった、相手の意に反し気絶させる系のアビリティもちょっと…。「仕事でただ警備しているだけ」「大切なものを守っている」NPCを気絶させて中の物を奪って…って、それホントにやっていいの?少なくとも仕事で警備している人は、主人公一行のせいでその後クビになってもおかしくないものだが。

主人公一行のやっていることは反社そのものであり、黒蛇などの悪役サイドとして出てくる集団と何も変わらない。蒸気機関を広めて世界中を幸せにする!」とか「下民も含め民は全員友だ!血の流れぬ世界を!」とか「踊りで人を幸せに!」とか言ってる人間の仲間が堂々と盗み、強奪、不法侵入を行っているのは滑稽極まりなく、極めて不自然だ。

フィールドコマンドに盗みや強奪があることを否定はしない。ただ、それであるならば、仲間一行は全員「闇」側の人間であるべきで、それらの行為を咎めそうな人間(特にヒカリ、アグネア、パルテティオあたり)を一行に入れるべきではない。

ゲームのお約束だから気にしたら負け、という考えもわかるが、このような「このキャラならこうするだろう」という納得感は個人的には結構重要で、そこが蔑ろにされていると没入感を著しく損ない、冷める。次回作ではぜひこの点についても納得のいくアンサーをしてほしいと考えている。

仲間はこれを許せるのか?

面倒なエンカウント周りとファストトラベル

エンカウント周りにも改善が必要だ。学者のアビリティ「エンカウント半減」によりある程度の緩和が見込めるものの、個人的に気になるのは、敵のレベルがこちらより低いエリアであってもエンカウントを制御する手段がない点だ。

例えば、ドラクエシリーズでいう聖水やトヘロスといった、弱い敵は出現しなくなるアビリティやアクセサリー、消費アイテムはあっても良いと思う。

関連して、ファストトラベルでダンジョン等の、「街以外の施設」に直接飛べない点もやや不便だ。特に不便なのは神官ギルド、狩人ギルドや発明家の小屋などといった施設にも直接飛べない点で、上述の通り敵が弱いエリアであってもエンカウントは発生してしまうので、移動時にかなり面倒。もう少し利便性を高めてほしいところである。

余談…フィールドコマンドと昼夜、仲間の入れ替え

本作の主要なシステムであるフィールドコマンドについては、個別に項目を設けて感想を述べていきたい。

そもそも正直なところ、初代から、街などでNPCに行うフィールドコマンドはあまり好きではなかった。

もちろん、面白いと思う瞬間もある。調べる系コマンドではNPC一人一人のバックグラウンドがわかって興味深いし、思いもよらない強力な味方や強力なアイテムを入手できた時は宝物を見つけた気分になり、面白い。それに、フィールドコマンドのメインストーリーへの絡ませ方は感心するし、鳥肌モノな演出もある。フィールドコマンドこそが本作を象徴するシステムであると言っても良いだろう。

ただ、上述の通り反社的なコマンドも数多くあり、悪人に対して行うならまだしも、何の罪もない町の住人に対して行いながらシナリオ上では正義面している矛盾に、嫌悪感と違和感が先に来てしまうというのがあり、印象があまり良くない。

それから、今作からの新要素として昼夜の概念が実装された。昼夜はワンボタンでシームレスに切り替えられるため面白い要素ではあるのだが、昼と夜でNPCの配置や登場人物が変わるため、昼夜で最低2度、街を探索しないといけなくなった。さらに、各主人公が使えるフィールドコマンドも昼と夜で異なるので、その辺りの管理も必要になった。

このNPCにキャスティで「聞き出す」をしよう → あっ、今は夜か。昼に切り替えよう → NPCが昼の配置に変わり目の前から消える といったことは日常茶飯事で、正直面倒。この場合、当該NPCの昼の居場所を探し出すか、夜に「聞き出す」系コマンドが使えるテメノスかヒカリを連れてくるために、仲間の入れ替えが必要となる。

そんなわけで仲間の入れ替えを頻繁にする必要があるのだが、仲間の入れ替えは(最終盤を除けば)酒場でしか行えない。入れ替えのためだけに酒場と往復をするのは単に不便なだけであり、ゲームを面白くはしていない。せめて町の中くらいはいつでもどこでも切り替えることができても良いと思う。

結局、効率よくフィールドコマンドを行うことを考えるとある程度パーティの面々がテンプレ化してしまうこともあり、その点も悪い影響を及ぼしている。

フィールドコマンドとメンバー入れ替え周りは本当にメスを入れてほしい箇所で、昼夜の概念の実装によりNPCへ可能なアプローチの方法が増えたというメリットもあったものの、6:4くらいで面倒さの方が勝っているかなという印象だ。昼夜の発想自体は良いので、パーティメンバーをいつでも入れ替えられるようにできるだけでもだいぶ違ったのかなと思う。パーティ外のメンバーとの装備のやり取りも酒場を介す必要があり、面倒さを感じている。

総評

正直なところ、初代の半アンチのような立場であった筆者がここまでハマるとは思えなかった。ボリュームも十分で、とても楽しめる良いゲームだ。令和5年発売のRPGの中では、今のところ暫定1位である。
一方、問題点の項で述べた点も改善すべきところだ。これらに対して明確にアンサーできるかどうかで、シリーズ次回作以降の評価も大きく変わってくるだろう。

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ジュドーさん
ジュドーさん
初代が苦手な人もやるべき!初代との繋がりも無いので、2からやっても問題ないぞ!

POSTED COMMENT

  1. 名無し より:

    1の些細なことでストレス感じすぎなのでは?

    • ジュドー(管理人) より:

      ストレスを感じたということは、些細とは思わなかったということです。

  2. 匿名 より:

    私も1であらすじを8人分もみせられるのに結構苦痛を感じてましたね。他の仲間と絡みも少ないからパーティメンバー間の関係性も薄くてパーティへの愛着みたいなものが最後までなかったです。これなら1人の主人公と7人の仲間にしたほうが絶対面白いのにと思ってました。

    • ジュドー(管理人) より:

      コメントありがとうございます。あらすじはまあまあ導入なので…という感じで個人的には良いのですが、むしろ加入後がかなり気になりましたね。
      パーティメンバー間の関係性が薄いのは本当におっしゃる通りで、2で若干良くなりましたが、まだまだ違和感バリバリです。

  3. たけうち より:

    ちなみに初代は何点ですか?
    初代が4時間くらいで面倒くさくなってやめたんで…
    特にストーリー部分が長いのが嫌でした
    「もっと早くキャラ動かして探索して戦って成長させたい!」とモヤモヤしてました…

    • ジュドー(管理人) より:

      コメントありがとうございます!
      初代についてはいつかちゃんとレビューしたいのですが、「2」と比較して大きく下がるだろうとは思っています。
      おそらく世間の評価とは乖離した点数になってしまうんじゃないかなと思っています。

  4. いかくん より:

    オクトパストラベラー1は『宝箱問題』で、途中で萎えました。
    管理人さんのレビューに背中を押され購入を決意しました。ありがとうございます。
    最後の悩みがSwitchにするかPS5にするか、、、
    寝転がったり、出先で時間つぶしにSwitch最高なんですが、ロード時間等を考慮すると断然PS5なんですよね。
    嬉しい悩みを楽しみます。
    長文失礼しました。

    • いかくん より:

      追記
      迷った挙げ句ps5版を購入しました。
      SwitchとPS両方の体験版をプレイして、ロード画面だけでなく、映像美の違いに感動してPS版を選んで、後悔無く楽しんでます。
      改めてレビューありがとうございました。

      • ジュドー(管理人) より:

        コメントありがとうございます。遅くなりましたが、私も買うならば断然PS5をお勧めします!
        (個人的にあまり外でゲームをしないというのが理由ですが笑)

        楽しんでおられるようで、何よりです!
        レビューに関する温かいメッセージもありがとうございます。

  5. ファンファン より:

    買おうかどうか迷っているので大変参考になりました!前作は面白いなと感じつつも、ストーリーや設定、キャラクターの動機あたりに強い矛盾を感じて冷めてしまい途中で止めてしまったのですが、そのあたりいかがでしょうか。

    • ジュドー(管理人) より:

      コメントありがとうございます。

      ストーリー、設定あたりは、個々の物語で見れば致命的な違和感はないものの、やはり8人の中に相反する要素をもつ(盗賊と商人など)点は相変わらずですので、全体で見た時にそのあたりを許せるかどうか、というところは個人差がありますね。
      私はどちらかというと「ナシ」派ですが、それを差し引いても面白い!といえるだけの出来であったと思います。参考になれば幸いです。

  6. 独り言 より:

    初代がクソゲーだったのとマルチにしたせいで前作プレイヤーに手抜きを疑われて更に売上落としてるっぽいんだよね
    ニンテンドーダイレクトで優遇してもらえるようにswitch版を先行発売して後からこっそりsteam PS5で発売すべきだったな

  7. もりもり より:

    3やりたい

  8. より:

    1のフィールドスキルが面倒すぎて積んでたけど、2がセール中でどうしても気になってたので見に来ました
    面倒とした上での良さ悪さも書いてあり、とても参考になりました

    • ジュドー(管理人) より:

      ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです!

  9. 匿名 より:

    >フィールドコマンドに盗みや強奪があることを否定はしない。ただ、それであるならば、仲間一行は全員「闇」側の人間であるべきで、それらの行為を咎めそうな人間(特にヒカリ、アグネア、パルテティオあたり)を一行に入れるべきではない。
    そこが気になるのならプレイヤー側がロールプレイとして制限するべきなのでは
    不自然だからとゲーム側が制限して遊びの幅を減らすより選択肢は多いほうが良いと思います

    • ジュドー(管理人) より:

      例えばドラクエのような無言型主人公や、自身でキャラクリするタイプのゲームであればロールプレイも良いかと思いますが、ゲーム側で「この主人公はこういうキャラクター」という人間性が提示されており、固有ストーリーで性格も十分に掘り下げられているため、そこを歪めてロールプレイとして制限するべきというのは少し違和感がありますね。ゲーム側で提示している各主人公の性格と、仲間の行う犯罪系のフィールドスキルを見てみぬふりするという行動との間に整合性のある答えを用意できておらず、没入感を損なうという趣旨です。ゲーム設計としても、8人全員で冒険することがデフォルトとして作られていると思うので。

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