タイトル(かな) | ぺるそな3りろーど |
ハード | PS5,PS4,PC,Xbox Game Pass,Xbox SeriesX|S,Xbox One |
発売日 | 2024年2月2日 |
点数 | 85点(ぜひおすすめしたい) |
総評 | ・良リメイクのお手本ともいえる設計 ・戦闘はプレスターンバトルではないが、スピード感十分 ・コミュにもう少しメリットが欲しい |
レビュー執筆時点 | 2024年3月24日 |
序文
最近触れたアトラスゲーといえば、2023年の「ペルソナ5 タクティカ」と、2022年の「ソウルハッカーズ2」が記憶に新しい。アトラス大好きっ子の筆者にとって、これらのクオリティは受け入れがたく、苦い体験であった。
そんな中発売された「ペルソナ3 リロード(P3R)」。まだまだアトラスを信じている筆者としては、上記2作のことがありつつも、購入しない選択肢はなかった。
ちなみに筆者は原作P3もP3Pも未プレイ。そのため、リメイク作品というよりも新作をプレイする心持ちで購入した。レビューもその視点であることにご注意いただきたい。
結論、とても良かった!面白かったです。
原作P3を知っている人はまた異なる意見があるのかもしれないが、かなり満足度の高い作品であった。序盤は少し物足りないかな?と思いつつ、6月頃から出来ることが増え、どんどん面白くなってくる。戦闘もプレスターンバトルではなく、何ならソウルハッカーズ2に近いゲーム性だったのでかなり不安だったが、とても楽しめた。
本記事で本作の良い点、気になった点をレビューしていく。なお、本記事ではP3RおよびP5のネタバレも一部含んでいる。特に重要なネタバレについては非表示にしているが、何をネタバレと感じるかは人それぞれなので、十分にご注意いただきたい。
プレイ感はP5に近い
近いも何もP3の方が前身の作品なので何を言っているのだという感じだが、P5をプレイした方で、P3R未プレイの方は違和感なくスッと入っていけるだろう。あるいは、シリーズ未経験の方が、本作をペルソナシリーズの入り口として入っていくことも十分可能。それだけ遊びやすいシステムだし、P5に比べて人間パラメータの種類が少なく、上げやすい点も◎。
学生生活をこなしながら周囲の人々とのコミュニティを形成する日常パートと、異世界で冒険し、シャドウを倒す異世界パートが交互にやってくるゲーム体験はP5同様。
日常パートでは効率よく人間パラメータやコミュニティレベルを上げる必要があるため、タスク管理要素があり面白い。
異世界パートについてもP5に近く、満月ごとのメインシナリオと、それと並行して行う自動生成ダンジョン「タルタロス」の攻略が主軸となる。
序盤から終盤まで面白さが安定しており、総プレイ時間90時間であったが、退屈だと感じるタイミングはほとんど無かった点は見事であった。
(なお、シナリオが重めなこともあり、万人受けしそうなのはP5かなとは感じた)
日常パート:スケジュール管理について
日常パートでは1年間の学校生活を疑似体験し、放課後や夜間の自由時間を使って学力・勇気・魅力といった人間パラメータを上げたり、色々な人と仲良くなってコミュニティレベルを上げていくことがメインの目的となる。
筆者はP5で培った経験を活かし、1周目全キャラコミュMAXまでいけた(かなりギリギリで、MAXまでたどり着いたのは最終日であった)が、考えながら効率よく進めていくタスク管理的ゲーム体験は他社のRPGではなかなか見られない要素であり、相変わらず楽しめた。
気になった点として、昼夜で出来ることのバランスが大きく異なること。日中はコミュがとても多いのだが、夜間は悪魔と塔の2コミュしかないため、ゲーム後半になってくると夜がとにかく暇になってしまう。序盤~中盤は夜に人間パラメータを上げたり、仲間とコミュニケーションをとったりすることが多いので気にならないが、人間パラメータを上げ切る頃になると夜がどんどん暇になってしまう。一応ゲームセンターでペルソナのステータスを上げたりはできるので、完全な無駄にはならないのだが。
一方、日中はかなりタイト(ただでさえコミュ数が多いことに加え、学校が休みの間は進行不能なものが多くある)で、せっかく休日にメールで遊びやデートの誘いを受けても、他キャラとのコミュを優先し断らざるを得ないことも多くあった。
ということで、昼夜のコミュのバランスはもう少し見直してもよかったのかもしれない。あるいは、11月に解放される「縁結びサイトのメモ」(任意のキャラの好感度を上げる)をもう少し早い段階で解放していただき、日中のコミュを上げやすくするというのもアリ。そうすれば、休日昼の折角のお誘いを断らずに済むので、罪悪感も薄れようものだ(6股しておいて罪悪感も何もないが…。)
日常パート:コミュにはもう少しメリットがあると良かった
各コミュについては好みが分かれるところだが、個人的にはちょっと印象に残るコミュは少なかったというか…誤解を恐れずに言えばちょっと地味かも、という感想を抱いた。
全体的にコミュをMAXまで上げてもそのキャラの抱える問題が解決しなかったりすることが多く、主人公はあまり介入せず、そっと傍にいて見守るだけのことが多い。
リアルではあるのだが、これはかなり好みが分かれるところであると感じた。(仲間関係のコミュは良かったです)
P3全体のテーマが「死生観」や「出会いと別れ」といったところに重きを置いているのだと解釈しているのだが、コミュMAXになった知人がどんどん主人公から離れていってしまい、関わりが薄くなってしまっているのも寂しいところ。
例えばP5って、コミュMAXになった相手が終盤で主人公を助けようと奔走してくれるじゃないですか。ああいうシーンで「ああ、仲間って大切なんだな」とジーンときた記憶があるのだが、本作はそういう要素が控えめで、イゴールが序盤でコミュニティの重要度を説く割には、コミュを上げても上げなくても特に展開に影響がない点は残念である。
また、シナリオ展開のみならず、ゲームシステム的にもコミュを上げるメリットがほぼ皆無であった。何度も引き合いに出して恐縮だが、P5ではコミュランクが上がるごとに戦闘に役立つ能力を習得したりなどの実益があり、そういった意味でもコミュを上げることに納得感があったのだが、本作はそういったものが皆無。対応するアルカナのペルソナの合体時に経験値ボーナスがつくことと、MAXになったときに特別なペルソナが解放されるだけなので、話の地味さと相まって、コミュを上げることの楽しみが薄い。
総じてコミュ関係については少々残念であった。あくまで原作のある作品なので大幅なテコ入れは難しいことは承知しているのだが、この辺りは何とかできたのではないだろうか。
BGM、グラフィック:飽きが来ず、見事
BGMやグラフィックなどの視覚、聴覚に対する要素についてはとても良かった。総攻撃の1枚絵は何度見ても飽きないし、メニュー画面のスタイリッシュさも◎。それでいてUIはゴチャゴチャしておらず使いやすい。
BGMも日常から戦闘まですべて場面に合っており、ゲームの没入感を高めてくれ、とても良かった。特にラスボス戦のBGMは鳥肌モノ。(余談だが、BGMこそ良かったもののラストバトル自体は冗長だった。12回形態変化は長いよ…)
欲を言えば、各女性キャラに用意されているセクシー系コスチュームを着ると、なぜか全員凹凸がなくなり、ものすごい寸胴体形に見える…のは気のせいだろうか。うーむ、大人の事情。
異世界パート:単調なのに不思議と飽きがこないタルタロス探索
異世界パートは、毎日深夜0時に訪れる「影時間」での活動が主となる。中でも自動生成ダンジョン「タルタロス」の探索が最もボリュームが大きい。
このタルタロス、250階層以上あるダンジョンを一つ一つ登っていくという、それだけ聞けば苦行としか思えない構造なのだが、ストレスを軽減するための気遣いがたくさん散りばめられており、かなり快適&飽きずに進むことができた。
- 階段や転送装置などのオブジェクトは、一度見つけさえすればそこから離れても、ワンボタンでいつでもアクセス可能
- 適度に1Fに戻る転送装置が散りばめられており、ペルソナ合体などにより帰還することが容易
- 戦闘後の「シャッフルタイム」によるボーナス要素の楽しみ
- 奇襲→戦闘→シャッフルタイム という一連の流れのスムーズさ。会話不要でペルソナを入手できるため、1戦闘にかかる時間が短い
- ボーナスエネミーなどのランダム要素
こういった要素により、基本的には単調であるにも関わらず、なるべくそれを感じさせないような設計がされている点は素晴らしい。(とはいえ限度はあるので、全く飽きなかったかといえばそうでもない。あくまで軽減されているという話である)
新規ペルソナの獲得は会話ではなくシャッフルタイムで行われるので、新規ペルソナがサクサク手に入るのも良かった。合体で気軽に消費できるため、ペルソナ全書はかなりスムーズに埋まっていった。
ただ、原作P3にはないP3Rのオリジナル要素である「モナドの扉」「モナド通路」は面倒であった。扉はランダムで発生するもので、通路は決まった階層に固定で配置されるもの。結局、通常探索の中ボス戦と似たようなことをやらされているだけなので、どうにも蛇足に感じてしまった。通路だけで良かったんじゃないかな。まあ、扉は無視しても差し支えないのであっても害は無いのだが。
戦闘:脱・プレスターンバトル。シンプルで理解しやすい作り
戦闘は、「真・女神転生」シリーズやP5などで恒例のプレスターンバトルではない。しかし、それに近しい作りとなっている。
イメージとしては、ソウルハッカーズ2とペルソナ5を足して2で割ったような形。
プレスアイコンはないものの、弱点を突いたりクリティカルを発生させることで敵がダウンし、1moreが発生。1more時には、仲間に行動を委ねることも可能(シフト)。全ての敵をダウンさせることで、強力な総攻撃が使用できる。
プレスターンバトルとの大きな違いは、敵に攻撃を回避/無効/反射されても、そのキャラの行動が終わるだけで相手にターンが渡ることがないので、全体攻撃を打ちやすくなっている点だろう。
戦闘は安定して面白かった。プレスアイコンがなくなったことにより連続攻撃の回数こそ減ったものの、1moreは健在のためある程度爽快感もあった。全体攻撃を打ちやすくなったことで初見の敵の弱点を積極的に暴きにいけた点や、テウルギアが耐性貫通な点も◎。スリルはやや控えめだが、そういったものは「女神転生」シリーズに任せる舵取りか。
各仲間、属性相性以外にユニークな特性を持っており、個性がキッチリ出ている点も良い。ただ、キャラバランスはあまり整っておらず、強キャラとそうでないキャラとの格差があるように思えた。特に、
- 回復系スキルのSP消費量が4分の1になるゆかり
- 後半、カジャブースタとマハ〇〇オートとの相性が良い真田
あたりは特に強い。他のキャラも物理アタッカーとして後半輝く順平、ランダマイザ役のコロマルなど住みわけはキッチリ出来ているのだが、強キャラであるゆかりと弱点被りが起きてしまっているアイギス等は少々使いづらい面も。(特性がバグで機能していない説も…)
シナリオ、キャラクターについて
全体的にシリアスな展開で話が進んでいくことが印象的であった。影時間に現れる「シャドウ」を根絶するためにペルソナ使いの少年少女たちが奮闘。その陰で暗躍する組織もあるというもので、シナリオそれ自体は王道的で目立ったところはないが、十分に楽しめた。
なお、これもゲーム評価とは全く関係のない感想だが、ストレガのタカヤのビジュアルは流石に違和感がありすぎて笑ってしまった。登場人物が比較的現実的な服装をしている本作において、一人だけ上半身裸+腰に銃を携帯して街を闊歩しているのには驚き。なお名前が判明する前は「少年」と記載があるが、どう見ても中年にしか見えない。
総評
良リメイク。過去の作品を現行タイトル仕様に違和感なく作り直すことで、P5で獲得したファン層をそのままペルソナ「シリーズの」ファン層として確固たるものにすることに成功している。9月には後日談「Episode Aegis」もDLC発売されることからまだまだ楽しめそうな本作。シリーズファンは勿論、これまでペルソナシリーズをプレイしてこなかった人もぜひ手にとっていただきたいと感じる作品である。
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