タイトル(かな) | ぺるそな5ざ・ろいやる |
ハード | PS4 |
発売日 | 2019年10月31日 |
点数 | 88点 |
総評 | ・こんな学生生活送りたかったと妄想させる楽しさ ・魅力的なキャラクター ・ロイヤルのエンディングさえよければ… |
価格:8,228円 |
序文
本作を大まかに言うと、ふとしたことから「怪盗」の力を手にした少年少女が怪盗団を結成し、巨悪と戦うストーリーである。主人公は学生としての生活と怪盗としての生活、二足のわらじを履き、両方の生活が相互に影響し合い成長していく。
この作品は間違いなく面白いのだが、その評価は非常に難しい。というのも、ペルソナ5(以下、無印という)の発売後、いわゆる完全版である「ペルソナ5ザ・ロイヤル」(以下、ロイヤルと表記)が発売されており、無印をプレイ済のプレイヤーがロイヤルをプレイした場合と、完全初見のプレイヤーがロイヤルをプレイした場合とでは大きく評価が異なる可能性があるからである。筆者は前者、すなわち無印プレイ済である。本レビューは、無印でのレビューをベースとした後に、ロイヤルに関する所感を述べる。
評価点
満たされる中二心と蘇る青春の日々
本作は原則として、朝~夕方は日常パートとして学園生活をし、放課後に異世界での怪盗生活という1日の繰り返しにより構成されている。序盤の主人公は前科持ちのヤバい奴として学園中から爪はじきされており、基本的に「ぼっち」として描かれるため、「学校/職場ではパっとしない俺が実はすごい能力を持っていて異世界無双」という多くの人が一度は夢見る妄想を叶えてくれると同時に、友人と出かけたり恋人を作ったりといった学園生活を堪能することができ、青春の追体験をすることができる。そして主人公のジョーカーのルックスが秀逸。モサモサ髪で眼鏡をかけており、野暮ったく見えるが、整った顔立ちでもあるという絶妙なラインを突き、「なりたいなあ、頑張れば俺でもなれるかな」と何となく自分に重ねたくなる…そんなビジュアルをしている。
日常パートもただゆるく過ごしていくわけではなく、活動を通じて協力者たちの信頼度を上げ、コープのランクを上げたり、人間パラメータ(器用さ、魅力など)を上げたりとやること満載で、効率よく進めるにはそれなりに頭を使う点も〇。そしてそれらの行動がすべて怪盗生活での能力に関わってくるという構成は見事といえる。
伝統的、されど新しい戦闘システム
アトラスのRPGに伝統的な「真・女神転生3」のプレスターンバトルにアレンジを加えたワンモアプレスバトルを採用している。敵の弱点を突くと敵がダウンし、「1more」が発生。追加でもう1度行動できる。全ての敵をダウンさせると「HOLD UP」状態になり、敵を脅したり、話をしてみたり、総攻撃を仕掛けたりすることができる。全体的にプレスターンバトルより難易度を抑えライトユーザー向けにしつつも、総攻撃の演出などで独自性をうまく出しており、世界観の演出に一役買っている。
スタイリッシュ、かつ簡単操作の怪盗アクション
怪盗として行動しているときは身体能力が上がり、壁などに張り付いて身を隠すカバーアクション、敵に飛びついての奇襲、ワイヤーを使って移動するワイヤーアクション(ロイヤル)などの各種行動ができる。これらの行動がいちいちスタイリッシュでかっこよく、怪盗として行動する際のテンションが爆上がりする。
魅力的なコープキャラクターたち
戦闘に参加するキャラクターはもちろん、戦闘に参加しない協力キャラクターも個性的で魅力的なキャラクターばかり。特に主人公が居候する喫茶ルブランのマスターである「佐倉惣治郎」、バンギャのようなダウナー系医師「武見妙」、女流棋士「東郷一二三」などは非常に人気が高い。協力者たちは基本的に怪盗としての主人公の存在は知らず、学生としての主人公と接することで絆を深めていく。異性のコープキャラクターとは絆を深めることにより最終的に恋人関係になることも可能で、最大10股も可能。10股した際のバレンタイン修羅場イベントは必見。
考えさせられるストーリー構成
このゲームの基本的なストーリー構成は、社会などから虐げられた「反逆」の意思をもつ少年少女(ex:権力者に無実の罪を着せられた、育ての親からの虐待された等)が「ペルソナ使い」として覚醒。怪盗団を結成し、悪人の心の中の異世界にあるオタカラを盗むことで現実世界で改心させるという形で罪を裁く…ということを繰り返していくものである。改心の対象となる悪人は程度の差はあれど、生徒に虐待をする教師や弟子に絵を描かせ自分の名前で公表する画家、悪徳政治家など酷い人間、かつ権力者ばかり。表の方法で裁くことが難しい権力者を裏の方法で裁く、という物語は痛快。
また大衆の描き方が非常にリアルで、最初は純粋に怪盗団の行う「改心」を賞賛しているが、段々とそれに慣れを感じるようになり、中盤以降は悪人が出るたびに「怪盗団さっさと裁けやオラ、何やってんだ」という発言が飛び交い、裁かれない悪がいる=怪盗団の怠慢である という他責志向の論調となっていく。また怪盗団自体を単なる面白いコンテンツとして捉えるようになっていく傾向がどんどん高まり、怪盗団が敵の罠に嵌められた際は一瞬で手のひらを返し叩き始める、という心の動きは非常にリアルであり、「あるあるwww」という気持ちにさせられた。
そして怪盗団の面々も、最初は純粋に正義の心から起こしていた行動が、世間にチヤホヤされるにつれて行動の動機に下心が芽生えるようになり(特に竜司に顕著であった)、曇った目で行動した結果あっさりと敵の罠に嵌められてしまう。こうした非現実的でありながらもリアリティのある人々の心の動きや、「正義とは何か」「目先の利に囚われると視野を狭める」といったテーマは非常に心を動かされるものがあり、それ故に最後の怪盗団復活のシーンのカタルシスはすさまじい。
問題点
さてさて、素晴らしく完成度の高いペルソナ5であるが、いくつかプレイしていて気になる点もあった。
カバーアクションのカメラアングル
怪盗行動時は物陰や壁などに身を隠すカバーアクションができ、カバーアクションで身を隠す→近づいてきた敵に奇襲 という流れが主となるのだが、このカバーアクション時のカメラアングルが非常に見づらい場合があり、せっかくカバーアクションをしても敵が視認できずどうにもならないというシーンが時折あった。カバーアクション中の視界については改善の余地があったように思う。
コープ次第でキャラエンドがあってよかった
無印のGoodエンディングは1種類であり、メインキャラクターである怪盗団の面々が出演するものとなる。しかし本ゲームはキャラゲー要素が非常に強く、自分としてはコープで恋人と決めたキャラクターとの結末がどうなるのか?という点も観たかった。ED前に特定の1キャラを選んでキャラEDを観るという選択肢があってもよかったと思う。
一部ダンジョンが長すぎてダレる
特に最初のダンジョンであるカモシダ・パレスなどは本当に長く、序盤ながらなかなかのダレを感じさせた。ダンジョンの長さはパレスごとにかなりの差があるが、もう少しコンパクトに見せても良かったかもしれない。なおこの点はロイヤルである程度改善されている。
一部コープの内容について
コープの内容はそのキャラクターの内面に深く踏み込むものであるが、一部キャラクターのコープの内容が薄く、いやいやもうちょっとあるでしょ、と思わせるものがあった。
その他雑記
良い点悪い点色々書いたものの、間違いなく現時点におけるJRPG最高峰の一角であり、プレイして損はない面白いソフトである。現に私も友人に勧めたりした。しかし…
完全版「ペルソナ5ザ・ロイヤル」
満を持して登場したペルソナ5の完全版たるザ・ロイヤル。新たなコープキャラ2名の追加、無印でスキップされた三学期、発売前スクショで発覚した明智吾郎に関する新要素などプレイヤーの期待を大きく煽った。無印で不評であったダンジョンの長さ、竜司のスキル「瞬殺」、平日夜のモルガナ「もう寝ようぜ」問題など様々な点がプレイしやすいように改善された。新キャラクター芳澤かすみ、丸喜拓人はいずれも非常に良いキャラクターで、特に芳澤かすみについては無印の魅力的な女性キャラクター陣をバッタバッタとなぎ倒す勢いでファンを増やし、現に武見さん一筋であった筆者の心をも揺れ動かした。様々な面で無印の上位互換といって良い素晴らしいゲームに仕上がっているのだが…序文で述べた通り、非常に評価が難しい。ロイヤルについては、良い点悪い点いくつかあるものの、筆者が感じる最も重要なポイント2つに絞って書こうと思う。
無印プレイヤーの期待のハードルを越えることができなかった
不可解なエンディング。終わりよければ…?
いわゆる真エンディングで不可解な点がいくつか存在する。
総評
今からプレイするのであればロイヤル一択。そしてロイヤルは、設定とキャラクター、システムが作りこまれた素晴らしい作品で、JRPGが好きなプレイヤーには自信をもってお勧めしたい。無印未プレイヤーであれば、無印プレイヤーが感じた諸々の期待ギャップに悩まされることはないはずだ。しかしエンディングについては今一つで、「ここまできて最後にコレしちゃう?」という印象を抱かされた。そのためエンディングで大幅に減点された。エンディング及びロイヤルの追加要素がもう少し良ければ、間違いなく90点台であっただろう。
価格:8,228円 |