タイトル(かな) | ばいおはざーどあーるいー3 |
ハード | PS4 |
発売日 | 2020年4月3日 |
点数 | 62点 |
総評 | ・最低限の要求は満たした。シリーズファンならプレイはして損はない ・カット要素多数によるボリューム不足 ・ニコライの性格に違和感 |
カプコン CAPCOM BIOHAZARD RE:3 Z Version[バイオハザード プレステ4]【PS4】 【代金引換配送不可】 価格:4,480円 |
序文
名作と名高いバイオハザード2及びそのリメイクであるRe:2。Re:2は非常に出来が良く、目の肥えたバイオハザードファンに対し、久々にゾンビへの恐怖を思い起こさせた。バイオハザード3は2と同様に序盤は警察署を舞台としているため、グラフィック等が使い回せるのでは、という期待からRe:3を待ち望んだユーザーは多く、そしてカプコンは期待通りにRe:3を発売した。本レビューでは、BIOHAZARD Re:3(以下、バイオRe:3と表記)について、筆者が感じた評価点及び問題点、プレイした感想などを余すことなく伝えようと思う。なお、このレビューで紹介するのはあくまでバイオRe:3についてのみであり、同梱されている「BIOHAZARD RESISTANCE」についてはレビューの対象外である。
う~~ん…結論からいうと、面白いがちょっと今ひとつ、という印象を抱いた。筆者は旧作の「3」発売当時は小学生で、その頃はお金がなかったので、同じゲームを何度もやり込んだものだ。そして「3」は「2」以上にドハマりしたゲームで、何度も何度もプレイし、非常に思い入れがある。もちろん当時と今ではゲームに向き合う姿勢が異なるので同じ物差しでは測れないのだが、旧作の良かった点を色々とカットしてしまったように思う。本レビューでは筆者がどのようにバイオハザードRe:3を感じ、評価したかにつき余すことなく伝えていく。
評価点
Re:2と概ね雰囲気は似ており、旧作の雰囲気を残したままゾンビの恐怖を再現しているのは見事。そして随所に旧作からアレンジが施されており、それが良くも悪くもスパイスとなっている。
Re:2から引き続き、強くて怖い「ゾンビ」
バイオハザードシリーズの代表的な敵であるゾンビ。しかしシリーズが進むにつれプレイヤーキャラクターのアクションが強化されてゾンビの対処が容易になり、ゾンビは敵というより単なる障害物のような扱いになっていった。
しかしRe:3のゾンビは、Re:2と同様に凶悪。動きは遅いのだがタフで、攻撃力が高い。フラフラと不規則に動くため頭を狙うことが難しく、じりじりとにじり寄ってくる。一体を対処中に死角から二体目に襲われる展開はザラであり、我々に忘れていたゾンビへの恐怖を思い出させてくれる。
アレンジされたカルロスとタイレル
- ジルのパートナーであるカルロス。カルロスは旧作のまだ若さが残る優男風から、頼れる一人前の傭兵というキャラクターにアレンジされている。このアレンジがかなりハマっており、正義感と実力が同居し、背中を安心して預けられるパートナーとしてのカルロスは、ジルのピンチ時に颯爽と現れるヒーローとして好意的に受け止めることができた。
- 同様にタイレルについてもかなりのキャラクター変更が行われている。旧作のタイレルは金にがめつい小悪党であり、アンブレラのスパイ「監視員」の一員であるものの出番がさほど多くなかった。Re:3ではそのような設定がなくなり、カルロスやジルと行動を共にし、最期まで頼れる第三のパートナーとして活躍した。これにより、やや複雑であった旧作のストーリー構成がシンプルとなると共に、空気に近かったタイレルというキャラクターの掘り下げが行われた点は好意的に受け止めることができた。
ストーリーアレンジは意表をつく形で〇
旧作3と比べてストーリーの大筋は変わっていないものの、一部に構成変化がある。最も印象的なのは3の序盤にあった警察署ステージが、Re:3では後半のカルロスパートに変更されている。元々旧作で警察署に寄る目的はキーピックの入手だけであったので、Re:3でカルロスパートに変更されたとしても違和感なく受け入れられると共に、この先どうなるんだろうというワクワク感を感じさせてくれる。またカルロスパートでの病院ステージでは、「アウトブレイク2」の死守を彷彿とさせる籠城戦があり、倒れているジルを守るためという無理ない展開を維持しつつ、ゲーム性を高める工夫がされている。
緊急回避システムをうまく落とし込んでいる
Re:2にはなかった新システムが、緊急回避である。緊急回避は旧作3でもあった要素であり、R1ボタンをタイミングよく敵の攻撃に合わせることで無敵時間が発生し、敵の攻撃を回避し、攻撃のチャンスを生み出すことができる。旧作3でも存在したこのシステムをどのように組み込むかが発売前の注目ポイントであったが、その点、実にうまく組み込んでいると思う。Re:2では、敵が迫っていても「銃を構えたまま狙い続けるo構えを解いて走って逃げる」という極端に選択肢の限られる行動しかできなかったが、それに加えてステップやローリング、パンチなどの人間らしいモーションが追加されたことで、よりゲーム性とリアリティが生まれることとなった。かといって、緊急回避を成立させることのできるタイミングは割とシビアで、慣れが必要であるからやり過ぎというほど強くはない。緊急回避を極めればバランスブレイカーとなりうるが、そこに達するまではかなりの練習が必要であり、一般的なプレイヤーにとっては「ちょうどよい」程度の難易度となるだろう。
ネメシスの出てくる場所が固定
う~ん、これは良い点とも悪い点とも言えるのだが。プレイヤーを追いまわす追跡者たる「ネメシス」が、Re:3では出現ポイントが固定となった。これにより探索に集中できるようになり、ゲームテンポとメリハリがつくようになったと思う。元々、Re:2のタイラントが旧作におけるネメシスのようにランダムなタイミングで登場し、こちらをいつまでもつけまわす存在であった。そしてその時、恐怖よりも面倒くさいイメージの方が勝っていたように思う。ネメシスはタイラントより動きが機敏であるため、タイラントくらいの頻度で、ネメシスのスピードで追いかけまわされたらキツそうだな、と思ったのでこの改変は良かったと思う。ただし、賛否両論ある点であると思う。決まったポイントでしか出てこないというのはスリルを損なうし、バイオ3=ネメシスというイメージが強いため、「らしさ」を損なう要因にもなっているからだ。
問題点
ボリューム不足感は否めない
元々旧作3が短めのストーリーだったのだが、Re:3では下記の要素により、更に拍車をかけてボリュームが控えめとなっているように思う。
カットされたステージとボス
時計塔や電車のパーツ集めなどの要素がカット。時計塔はバイオ3における印象的なステージであったため、カットされたことが悔やまれる。その割に序盤の市街地がやたらと長く、同じマップを何度も何度も製作者の都合で周回させられている感が否めない。製作のリソース不足であろうか?市街地をもう少し控えめにしつつ、時計塔などのマップを追加して欲しかった。また、旧作3で二度に渡って戦うボス「グレイブティガー」も削除されている。非常に印象的なボスであったためここも残念であった。
ライブセレクションの廃止
旧作3で印象的だったライブセレクションシステムがまるっと削除されている。ライブセレクションシステムは、緊急時に選択肢が出現し(ex:「追跡者を突き落とす」「自分が飛び降りる」など)、その選択結果に応じてストーリー展開が分岐するというものである。このシステムそのものはさほど重要ではないのでカット自体は良いのだが、旧作バイオ3におけるボリューム不足をカバーする要素として機能していた。そのため周回のモチベーションが下がり、ストーリーの短さと相まって全体が非常に短く感じてしまった。
ミニゲーム「マーセナリーズ」の削除
旧作3のミニゲーム「マーセナリーズ」が削除されている。マーセナリーズは、ミハイル、ニコライ、カルロスの3キャラを用いてスタートからゴールまでの獲得ポイントを稼ぐミニゲームであり、非常に良くできており本編以上のプレイ時間を捧げたプレイヤーも多いはずだ。このマーセナリーズの削除を惜しむ声は大きい。代わりに「レジスタンス」が追加されてはいるが、対戦型オンラインであるためプレイしない人も多いし、何よりゲーム性が違い過ぎる。ここは大きなマイナスポイントであった。
ネメシスの撃破報酬が大幅劣化&強化弾の削除
ここも非常に大きなマイナスポイントであった。旧作3では、ネメシスを倒すことで新たな武器が手に入り、その武器も個性的で非常に面白いものだった。
- 強化型ハンドガンであるEAGLE6.0は、ハンドガンらしからぬテンポの良い連射と1/16で発生するクリティカルヒットが気持ちよく、ネメシス戦でも癖なく使える強力な武器であった。
- 小型ショットガンであるウエスタンカスタムは、連射速度が速く集弾率が良い。そして撃った反動でくるっと銃を回転させる独特の機動がユニークであった。
Re:3でもネメシスの討伐報酬としてサプライケースというものを落とすが、その中身は弾薬であったり単なる銃のカスタムパーツであったり、苦労に見合った報酬であるとは言い難い。したがってネメシスを倒す動機が薄れ、ゲーム性を損なう要因の一つとなっている。
またハンドガンとショットガンに存在した強化弾、グレネードの冷凍弾が削除されている。
- 強化弾は、ガンパウダーから一定回数の弾薬を作ることで作成できるようになる。強化弾を用いるとハンドガンやショットガンの火力が目に見えて上がり、終盤でもハンドガン等が腐らず主力の装備として使い続ける要素となっていた。
- 冷凍弾は、追跡者に特攻のある弾薬。ガンパウダーから作成するハードルが高いが、非常に強力な弾薬であった。
ニコライのキャラクター変更
上述したカルロスとタイレルのキャラクターアレンジのほか、ニコライについても同様に性格の変更等が行われているが、それがプレイヤーのもつニコライの印象にマッチしていない。ニコライといえば、ハンクと同格の凄腕の兵士であり、同時に任務と金のためには仲間をも手にかける極めて冷酷かつ容赦のない人物である。旧作では彼の「凄腕の悪いヤツ」感がよく描写されており、どちらかというと寡黙で底の知れない人物という印象であったが、Re:3では性格に大幅な変更がなされている。実力がズバ抜けているというよりは、頭を使って狡猾に立ち回るハイエナのような悪役という感じの描写がされており、また声質もやたらと高音で、どうにも小悪党感が否めない。カルロスやタイレルのアレンジは好意的に受け止められたが、ニコライのアレンジはマイナスポイントであった。
ジルはロバート・ケンドを救出できた
一部ストーリー展開に違和感がある。市街地にて馴染みのガンショップ店長である「ロバート・ケンド」に会うことができた際の会話に違和感がある。
(赤字:ジル 青字:ケンド)
「地下鉄で脱出しようと思ってるの。一緒に来る?」
(中略)
「ああ…ああいや俺は大丈夫だ 他の手を打つから」
「平気よね 最高のガンスミスだもの」
明らかにおかしいシーンである。このような緊急事態に友人と一緒に脱出しないという状況は異常であり、友人であるケンドがなぜ来ないのかについて何の疑問をぶつけることもなくあっさりと了承、別行動をとるシナリオ展開は不自然であるとしかいえない。
この時ケンドはゾンビ化しかけた娘と共に過ごす選択をしており、上記会話時点ではジルはそのことを知らない(後に扉に近づいた時に漏れ聞こえる声で何となく察することができる)。通常であれば、なぜ来ないのかを問い、娘のことを聞いたうえでケンドに娘はもう助からないと説得するというのが自然な流れであるはずだ。レオンやエイダでは無理でも、ジルならばケンドを説得できたかもしれない。
後にRe:2でレオン達に会った時に死亡するためのストーリー展開と整合を持たせるため、やや強引にジルと引きはがした印象が拭えず、プレイヤーとしては納得いかない展開となった。
その他雑記
ブラッドの性格変更
上記以外にもアレンジ要素が多いのがRe:3の特徴だ。ブラッドの性格変更については特に賛否がありそうだ。いいやつ化している割には大した活躍をしてないので結局死に際はほぼ同じ。それに「1」で仲間を置いてヘリで逃げたのは確定しているわけで、そこから「Re:3」での心変わりの過程が全く描写されていない。何よりSTRASメンバーの中で珍しく臆病で逃げ腰なブラッドというのはキャラが立っており、十分魅力的だった。ここを変える必要があったのか、というのは微妙なところである。
総評
バイオハザードRe:3は、面白いゲームであるものの、全体的なボリューム不足が嘆かれ、カットされた要素のうちいくつかは非常に残念なものであった。また多く散りばめられたアレンジ要素は好意的なものも非好意的なものもあるが、一部アレンジ要素は旧作プレイヤーにとって受け入れがたいものとなった。またロバート・ケンドや話の展開のために都合よく死ぬタイレルなど一部ストーリー展開がやや不自然であり、プレイヤーの没入感を損なわれる要因となった。結果として、シリーズファンの最低限の要求は満たしたが、Re:2のような評価を受けることはできない佳作であるといえよう。
カプコン CAPCOM BIOHAZARD RE:3 Z Version[バイオハザード プレステ4]【PS4】 【代金引換配送不可】 価格:4,480円 |