タイトル(かな) | えるぴしあのまけんしょうじょ |
ハード | PS4,PS5,Xbox Series X/S,Xbox One,switch,PC,スマホ |
発売日 | 2022年1月7日 |
点数 | 50点(平凡・平均的) |
総評 | ・低価格帯ゲームとしてはよくできている ・テンポを良くする工夫が随所に散りばめられている |
序文
エルピシアの魔剣少女は、2022年1月7日にコトブキソリューション(ケムコ)より発売されたRPGゲームだ。同社は多数のRPGを短いスパンで販売することに定評があり、同社のRPGが複数収録された「ケムコRPGセレクション」という商品が既にVol.8まで販売されていることからもわかるとおり、確かな実績のある販売元だ。恥ずかしながら筆者はこれまでケムコRPGには触れてこなかったのだが、本作は新作ゲームが不作であった2022年の年始に発売されたゲームということで、これを機会に手に取ってみることにした。
特徴
本作は1000円前後という低価格帯の作品ということもあり、非常にシンプルかつ癖の少ない、王道のJRPGだ。全体的にツクール感溢れる作り(というか、ツクールで作っているのでは?と思わせるほどそれっぽい)で、SFCや初代PSのJRPGを好むプレイヤーは違和感なくプレイできるだろう。
物語もまた王道で、冷静で合理的、利益至上な主人公アルドが、10歳の少女エリスとひょんなことから行動を共にし、二人はどんどん絆を深めていくがそこに悲しい展開が…というもの。共に行動する仲間も飄々としたオッサン枠のネイト、かわいいもの好きの成人女性アリエルとこれまた王道。
また、バトルも当然、JRPGの王道コマンドバトルだ。
と、この章だけで何度「王道」というワードを使用したかわからないくらい、本作は全体的に「昔ながらのJRPG感」に溢れている。これを筆者のように王道と表現するか、「定番」あるいは「ありがち」と表現するかは人によって別れるところである。
次項以降で、筆者の感想を余すことなく伝えていこうと思う。
良い点
★徹底された遊びやすさと快適さ
本作をプレイして非常に感心したのが、極限まで快適さに気を遣ったゲーム設計がされている点だ。
スキップや倍速など、思いつく限りの快適要素をこれでもかというほどぶちこんでおり、非常にテンポよくサクサクと進んでいく。
具体的には、下記のようなシステムが盛り込まれている。
- ファストトラベル完備。いつでもどこでも好きな街・ダンジョンへワープ可能。
- ダンジョン内でのエンカウント制御が可能。エンカウント半減、無効はもちろん、逆にエンカウント率を増やすこともできるし、歩くことなくその場で敵と連戦をすることも可能。
- マップが優秀。簡素なマップであるものの、高低差などが色分けされているためかなり見やすい。加えて、マップサイズをワンボタンで切り替えることができ、局所的に表示させたり、そのフロア全体を表示させたりできる点も◎。
- ファストトラベル画面では新規クエストが発生している街が「Q」の文字で表示されるため、クエストを求めて彷徨ったりする必要がない。また、クエストクリア条件を満たした場合、「依頼人の元へ戻る」ボタンで即座に依頼人の元へワープ可能。
- ダンジョンを最初に訪れた際には通行不能な箇所が多数あり、それらは後に手に入るキーアイテムを使用して通行できる(要はドラクエなどの「とうぞくのカギ」や「まほうのカギ」と同じ)のだが、「どのダンジョンにどのキーアイテムで通行できる箇所があるか」がファストトラベル画面で確認できるため、新たなキーアイテムを入手したときにどのダンジョンを再探索すれば良いかが容易に判別可能。
- 戦闘は3倍速、オート、リピートを完備。雑魚戦のテンポの良さは類を見ない。
- 各スキルのエフェクトも長すぎず、かといって簡素すぎもせずちょうどよい。
- ボイスがないため会話のテンポも速い。
とまあ、サクサク要素全部盛りのようなゲーム性をしているため、プレイにあたってのストレスがほぼない。移動速度の速さも相まって常時早送りしているような錯覚に陥るほどで、時間のない現代人のニーズをある意味掴んでいるといえよう。
練りこまれたストーリー
低価格帯のRPGではあるものの、本作はしっかりストーリーが練りこまれている。基本的には王道(定番)な展開で進んでいくが、主人公アルドの合理的で交渉上手な性格がきちんとストーリーの舞台装置として機能しているし、ストーリーの根幹である「魔剣」の仕組みや、異なる世界の住人がそれぞれの思惑で行動することによる物語全体の深み、敵であった者との利害一致による交渉・共闘など見るべき点が多く、意外にも(というと失礼だが)感心させられるシーンも多かった。
爽快感ある戦闘&成長システム
本作の戦闘は基本的にインフレがすさまじく、敵味方共に火力が非常に高い。HPは中盤で既に1万を越えるし、レベルも2~3回の戦闘で1つ上がり、100を優に超えるためものすごいスピードでキャラクターが成長していく。こちらの与ダメージは10万を平気で超えるなど、この辺りのバランス感覚は昔のJRPGというよりはソシャゲや同人ゲームのそれに近い。装備にも強化レベルが設定されており、合成をすることで+100以上の強化レベルにすぐ達するため、しっかりと強化した上での強力な攻撃を繰り出すことで、十分な爽快感を得られるであろう。また、戦闘参加キャラクター3名(エリスは10歳の少女のため戦闘参加しない)のほかにペットを最大3体まで呼び出すことができ、ペットはj自動で行動するもののそれぞれユニークなスキルをもっているため、上手く運用することで戦闘を有利に進めることができる。
問題点
そんなこんなで値段を考えれば相応に楽しめるゲームであるが、フラットな目線で見るとやはり随所に遊び辛い点も存在した。
戦略性を損なう武具の強化システム
本作は武器/防具(武具)の強化が可能で、手持ちの不要な武具を素材にすることで、強化元の武具のレベルが上がっていく。終盤になれば武具レベル+100や+200が普通で、道中の雑魚敵を倒すことで持ちきれないほどの武具がどんどん手に入るため、とりあえず適当に強そうな武具を強化元にし、大量に手に入った武具をこれまた適当に素材としてぶち込んで強化していくだけでゲームが進んでいき非常に大味である。
かと思えば、道中の宝箱からこれまでの強化を一瞬で無にするような強力な武具が手に入り、これまで手塩にかけて育てた(というほど手塩にかけてもいない、道中で拾ったゴミを片っ端からぶち込んだだけの)武具は新たな武具の強化素材として養分となってしまう。
さらに、武器自体にスキルが付与されているため、メインで使用する武器が変わるとキャラクターの保有スキルも変わってしまう。上述の通り武具は次から次へと強いものが山ほど手に入るので、キャラクターの使用感が全く安定せず、「強くなっているのは確かなんだがよ達成感が全然ない」という不思議な感覚のままゲームクリアをしてしまった。
実はこういうシステムのゲームは同人ゲーによくみられるもので、個人的にはあまり好きではない。メーカー側の意図はさておき、バランス調整を数でごまかしているような雰囲気をどうしても感じてしまう。実際、道中の装備を適当に強化しておけば最終盤であっても雑魚敵は先制ワンパン、ボス敵はややタフであるもののやはり楽勝…と、本作のインフレ要素を担っている一端は間違いなくこの武器の成長システムだろう。
ガチャによるゲームバランス崩壊
本作はソシャゲのようなガチャシステムを採用しており、リアルマネーと引き換えにガチャを回し、強力なアイテムの取得が可能だ。このガチャが曲者で、ガチャで手に入る装備は規格外の強力なものばかりなので、一瞬でバランスが崩壊する。
所詮ガチャなのでやらなければいいだけなのだが、有償ガチャはともかく1日3回の無償ガチャは、とりあえず回すプレイヤーがほとんどだろう。無償である以上、ゲーム内で手に入る宝箱と本質的には変わることはない。そこで手に入った武器とペットがあまりにも強かったので筆者は縛ったのだが、ゲーム内で無料で手に入るものを縛るというのもどうなんだ?とややモヤモヤした。
面倒なキーアイテム切り替え
本作のダンジョンは、特定の障害(段差だったり岩だったり)を通過するための「キーアイテム」がいくつもあり、障害ごとにそのキーアイテムを切り替えながら進んでいくゲーム設計であるが、それらのキーアイテムと、移動速度を速くする「ダッシュシューズ」が同じ枠のため、平時はダッシュシューズを装備し、障害を目にする度に別のキーアイテムに切り替え、障害を乗り越えたら再度ダッシュシューズに切り替え…という切り替えの手間が何度も入る点が大変面倒であった。「良い点」で述べたようにテンポを良くすることに命をかけているようなゲーム性であるにもかかわらず、こんなにも目に見えて不便な仕様になぜしたのか…不思議で仕方がない。
また同じくキーアイテム周りで、炎を灯すことで通行可能になる障害物が、ダンジョンから一度出ると再度通行不能になる点が非常に面倒だった。とあるダンジョンでは、入口近くの障害物を通るためにダンジョン最深部のギミックに火を灯す必要があるのだが、最深部で火を灯す→ファストトラベルで入口に戻る→火が消えてしまい障害物が通れなくなっている
という状況に陥った時は辟易した。
主人公アルドとヒロインエリスの関係性
主人公アルドとエリスの関係性の描写がやや不自然…というか、ちょっとこれは…と思う点がいくつか見られた。
- エリスは10歳の少女だが、物腰や言動、頭の回転や理解力が非常に大人びており、正直いって全く10歳に見えない。ストーリーが進むにつれ、とある事情により感情を露にする機会も減り、より不自然に見える。
- 一方主人公アルド(25歳)の性格は、合理的思考と利益を優先し、感情で動くことは少ないため、冷たいイメージを与えるタイプのキャラクターだ。終盤になるとかなり柔らかくなるものの、クールな性格はそのままにエリスにはデレまくる、エリスに泣いて縋りついてヨシヨシされる、ボディタッチを試みる機会が増えるなど歳の差兄妹というよりはカップル一歩手前のように見えてしまい微妙に危うい。
- アルドとエリスが絆を深めていく描写はそれなりに丁寧であるものの、ゲーム全体のテンポの早さやボイスがないこと、キャラクターのモーションや表情差分が少ないなどの演出のドライさも関係しどうしてもアルドのデレ具合が唐突に感じてしまう。終盤の兄バカとなったアルドよりも、序盤の「冷たいけど約束は守り、まれに優しさを見せる」アルドの方が魅力的だったなあ、とどうしても思えてしまう。
総評
値段相応。その一言だ。1000円前後にしてはコスパは良くそこそこ楽しめるし、テンポも良い。ただゲーム全体を通して「どこかで見た」感を常に感じることになるので、ゲームプレイを通して何か斬新な体験をしたい場合は、他のゲームを検討すべきかもしれない。
繰り返すがこの価格帯にしてはよくできており、ユーザの快適性を第一に考えたゲーム設計は非常に好感が持てる点は重ねて主張しておく。