タイトル(かな) | ゆにこーんおーばーろーど |
ハード | PS5,PS4,switch,Xbox Series X|S |
発売日 | 2024年3月8日 |
点数 | 89点(ぜひおすすめしたい) |
総評 | ・部隊制の採用による戦略性の高さ ・それをスムーズに実行できるUI ・難点もあれど、作りこまれたバランス |
レビュー執筆時点 | 2024年4月25日 (Ver.1.04) |
序文
貴重なシミュレーションRPGの新規IPとして発売された本作。アトラス×ヴァニラウェアという「十三機兵防衛圏」コンビが開発を担った作品ということで、発売前からかなりの注目を集めていた。
シミュレーションRPGに目がない筆者としても非常に楽しみにしていた作品であるが、実際にプレイしたところ、期待を上回る面白さで、かなり満足度の高い作品であった。
これはぜひ続編を作っていただきたい!
なお、筆者のプレイ環境は「PS5版・初見難易度EXPART・2周目難易度ZENOIRA」である。
本作の素晴らしい点、不満点につき、本記事でしっかりとレビューしていく。重要なネタバレ箇所は非表示にしているが、十分ご注意の上見ていただければ幸いです。
どのようなゲームなのか
王道気味なシミュレーションRPGでした。導入はこのような感じ。
物語の舞台である「フェブリス大陸」は、かつて「コルニア王国」「ドラケンガルド王国」
「エルヘイム」「バストリアス」「アルビオン教国」の5つの国家で形成されていた。
だが、ガレリウス率いる「新生ゼノイラ帝国」によりその全土が支配されることとなる。
(公式サイトより引用)
https://unicorn-overlord.com/world/
戦争モノで、ゼノイラ軍の支配から脱却するために、主人公率いる弱小解放軍に同志を集めていく。支配された地域を徐々に解放していく全体の構成は、驚きこそ少ないものの安心感がある。
特筆すべきは戦闘システム。「ファイアーエムブレム」や「トライアングルストラテジー」などでよく見られる、1キャラvs1キャラによる戦闘ではなく、最大5人からなるチーム(ゲーム内では「ユニット」と呼ぶ)単位で戦闘を行うことが特徴だ。
ユニット内の各キャラクターがどのような優先順位で行動を行うかはあらかじめ設定可能で、この設定次第で戦闘の結果が大きく変わるため、非常にカスタマイズ性が高い。
・どんなキャラクターの組み合わせでユニットを組むか
・各キャラの配置はどうするか(前列か後列か、誰の後ろに誰を置くかなど)
・各キャラの行動をどのように設定するか
がカスタマイズ要素の大枠で、これに敵の設定が加わるため、ある自ユニットでは歯が立たない敵ユニットも、別の自ユニットで挑めば楽に勝てたり(あるいは、その逆も)する。あるいは、同じユニット間の戦闘でも行動順を変えることで戦闘結果が180度変わったりもし、とても面白い。
ユニット性能のベースとなる「クラス」(職業的なもの)も、カウント方法によるが40~50種類程度あるので、プレイヤーの数だけ組み合わせがあると言っても過言ではなく、個性が出やすい。カードゲームでデッキを作成している感覚に近い楽しみ方がある点が大きな特徴だ。戦術を考えることが好きなSRPGのプレイヤー層とマッチしたゲーム性といえる。
作りこまれた「圧倒的快適度」
また、上述の通り戦闘周りにおいて複雑な設定が必要になる本作だが、それをほとんど苦にさせない設計も紹介したい。
(アクセサリーの付け替えについては要改善項目であったが、Ver1.04アップデートで一定の改善がなされた。)
編成画面で個々のキャラのスキル確認・装備の付け替え・行動の優先順の設定ができるのだが、このメニューがとにかく使いやすい。
特に行動の優先順については、下記画像の通り非常に細かい条件設定ができるため、大抵の行動は思い通りに設定できる。
また、スキル付き装備について、スティック操作でそのスキルの内容が瞬時に見られる点もいい。この辺りの操作が感覚的で、違和感なくスッと入っていける点がかなり作りこまれたUIだと感じる。
本作は戦闘前の準備がすべてであり、もしここが使い辛かったらゲーム体験も辛いものになっていたであろう。そうならないために細心の注意を払って製作されたのだろうという制作陣の心意気を感じる点は、非常に好印象であった。
編成画面以外でも、戦闘前にダメージ予測がわかるお馴染みの機能に加え、ダメージ予測を見てからスキルの順序や装備、ユニット内の前後列の入れ替えなどもできるので、よほどユニット相性が悪くなければ何とか勝ち筋を見いだせることが多い点も便利。
(逆に言えば、編成を凝らなくても雑に何とかなってしまうということなので、賛否両論ある点かもしれないが)
キャラデザイン・キャラゲー要素も〇
また、ネームドキャラ、モブキャラ含めて全体的にキャラデザイン・ボイスがとても良く、動かしていて楽しい点も◎。この辺りはかなりヴァニラウェアみがあり、「十三機兵防衛圏」を思い出す。女性キャラが色々と揺れすぎな点だけはちょっと狙いすぎな感じもあるが、これはこれで(自粛)
プレイアブルのネームドキャラだけでも60人以上おり、特定のキャラ間の親密度を深めることで親密度会話を見ることができるほか、主人公アレインと各キャラの間で事実上の結婚システムのようなものもあり、キャラゲーの基礎もしっかり押さえてくれている。
フィールド探索は控えめだが、丁度よい
戦闘パートの合間にある探索パートでは、部隊編成をしたり、フィールド探索をしてアイテムを入手したり、戦争によって破壊された街の復興をしたりする。
ある程度気をつけて歩いていればアイテムやクエストの取りこぼしなども発生せず、探索パートはサクサク進んでいくので、かなり控えめ。とはいえそれが悪いというわけではなく、個人的にはこのくらいで丁度よく感じた。
SRPGにとって、戦いと戦いの合間のインターバルをどのように潰すかというのは重要な課題である。ここを疎かにすると、ひたすら戦闘の連続となってしまうので、SRPG部分をよほど上手に作りこまないと味気なくなってしまう。
この課題に対し、例えば最近の「ファイアーエムブレム」シリーズなどは、教師としての活動(風花雪月)や拠点周り(エンゲージ)により仲間と積極的にコミュニケーションをとることで、キャラゲー要素と育成要素を同時に提供することで対応している。
この方針は確かに「ファイアーエムブレム」とマッチしているし、同シリーズの人気を支える要因であるが、SRPGとしての純度が下がってしまうと感じる瞬間もある。
一方、本作はオマケとしてのキャラゲー要素はあるものの、必要以上にそこにフォーカスしていない。結果、戦闘の合間のゲーム体験として提供されるフィールド探索要素はかなり控えめだ。でもそれで良いのだ。なぜなら、上述の通り1ユニットに最大5キャラを編成する本作では、ユニット編成を考える時間こそがメインコンテンツともいえるからである。
仲間が一人加入するだけで、あるいは部隊の枠がひとつ増えるだけで、考える楽しみがどんどん膨らんでいく。「ユニット編成」という戦闘に直接関わる要素を戦闘のインターバルとして時間を割かせる。これによって、SRPGとしての純度を大きく高めることに成功しているのである。
戦闘バランスについて
さて、最も重要であるSRPGとしての戦闘バランスに目を向けていこう。
最大5人編成なので役割分担がしっかりある
上述の通り、本作の戦闘は最大5人からなるユニット単位で戦闘が行われるので、単体ではキャラパワーが低いキャラ(クラス)であっても、組み合わせ次第でキッチリと活躍させることができる点が良い。したがって、使い道が全くないというキャラ(クラス)は存在しない。もちろん強弱はあるし、一部キャラはちょっと活躍が難しそうだなというのも現状あるが、それらも研究が進んでいけば評価が変わる可能性がある。そういったポテンシャルを秘めている。
たくさん仲間になるし、たくさん参加させられる
また、1度の戦闘につき最大10ユニットまで参戦させられるので、5人×10ユニットで50人まで同時に使用機会がある。「仲間人数は多いのに戦闘参加人数が少ないので結局あまり意味がない」というのは、SRPGに限らずゲームあるあるだと思うのだが、本作は部隊制をとることでその問題を解決できている。(まあ、10ユニットすべてを使う機会のある戦闘はそれほど多くはないのだが)
RTS要素のある戦闘システムが面白い
本作の戦闘はターン制ではなく、最近増えがちな敵味方入り混じって行動順序が変わる類(トライアングルストラテジーやバルダーズゲート3など)でもなく、リアルタイムに敵味方が行動をするRTS要素のあるシステムである。「十三機兵防衛圏」の「崩壊編」に似ている。とはいえ慌てる必要はなく、時間を止めることもできるので、じっくりと戦略を練ることができる。こういったリアルタイム性があることで、1ターン1行動に縛られない濃淡ある行動ができる面白さがある。
リーダー効果&ブレイブスキル
また、ユニット内でリーダーとして選択したキャラのクラスに応じた特殊効果がユニットに自動付与される(リーダー効果)。一例を挙げると、
- 移動速度アップ(騎馬タイプ、獣タイプ)
- 敵からのアシスト攻撃ダメージ軽減(ファイター、ホプリタイなど)
- ギミックを無視した移動が可能(飛行タイプ)
など。いずれも常時発動の強力なものばかりで、リーダーを誰にするか、という視点でユニットを組むことも重要。
さらに、画面上部に表示される「ブレイブゲージ」を使用することで、ユニット内メンバーのクラスに応じた「ブレイブスキル」を使用することもできる。こちらも強力な効果が多い。戦闘外で直接的にダメージを与えるものもあれば、バフやスタミナ回復、移動速度アップなどの効果を付与するものもある。リーダースキルとは異なり、ブレイブゲージを消費する使い切りであることが特徴だ。
戦闘スキル以外の、こうした要素も考慮の上でユニットを組む必要があるので、繰り返しになるが編成作業がとても楽しい。
クラスのバランスはもう一声
さて、そんなわけで戦闘システムの基礎設計はとても素晴らしく、弱キャラ(クラス)にも十分に活躍の機会があるのは上述の通り。
しかし、それでもクラス格差がないとは言えず、活躍しやすいクラス、そうでないクラスの評価が分かれてしまっている。
- 一般的にはヴァンガード、ソードマスター(Ver1.04より前)、フェザーソード、グラディエーター、ワーベアあたりが(特に高難易度において)純戦闘では活躍しづらかったり、役割にオンリーワン性が薄いと言われている。
- ブレイカー、グレートナイト、グリフォンルーラー、ドルイドなどは使い勝手が良く、特に後半において主力となりやすい。
- ハイロード、ヴァルキュリアといった固有クラスは強力なものが多い。
- ブレイブスキルにはそれ以上に格差がある。特に移動速度を上げる「ファストエール」や広範囲のギミック破壊ができる「ヘヴィスイング」などは強力で、汎用性も高い。
Ver1.04で複数武器や盾を装備した際のステータスに補正がかかるアップデートがあり、ソードマスター(とヴァルキュリア)が強化されたが、今後もバランス調整があるかは不明。オンライン要素も薄めなので、積極的なアップデートは期待できないかもしれない。ファイターは重装扱いにしなくてもよかったかも…。
ところどころ見られる「惜しい」点
全体的な難易度が低め
主観的な意見であるが、とれる戦略の広さと比較して難易度が低めであり、1周目の最高難易度EXPART、2周目以降に追加されるZENOIRA共にゴリ押しで何とかなってしまう。
もちろん自主的に縛りを入れたりすればこの限りではないのだが、もう更に1段階上の難易度があっても良いと思った。高難易度ミッションや闘技場など、やり込み要素の追加でも良い。
キャラアイコンが地味&分かりにくい
フィールドや編成画面で表示されるデフォルメキャラアイコンが、全キャラ青を基調とした血色のない人形っぽいデザインであり、キャラの見分けがつきづらい。また、暗めで見栄えもあまり良くない。地味だが、次回作があればぜひ改善して欲しい箇所。
親密度会話にボイスが欲しい
数多くある親密度会話にボイスがない点は残念であった。キャラゲーとして重きを置いていないため致し方ない部分はあるが、魅力的なキャラクターが多いだけに残念。
総評
完全新規IPながらSRPGの今後に期待を持たせてくれる良作。このまま単発作品として終わらせるには勿体なく、ぜひシリーズ化して欲しい。