タイトル(かな) | ばいおはざーど7 |
ハード | PS4,Xbox One,PC |
発売日 | 2017年1月26日 |
点数 | 82点 |
総評 | ・バイオシリーズの新たな可能性 ・半端ない怖さの主観プレイ ・ベイカー家の掘り下げがすばらしい |
序文
長い長い歴史を紡いできたバイオハザードシリーズ。初代バイオハザードがPlayStationで発売された1996年から、既に25年が経過しているとは驚きだ。その歴史の中では、名作と呼ばれる作品がある一方で、駄作と呼ばれる作品もあった。しかしながらナンバリングタイトルにおいては、賛否両論こそあれど一定の評価を得てきていたのも事実。そう、6までは…。
本作の前作にあたるバイオハザード6は、筆者にとっては「駄作」であった。生粋のバイオファンであった筆者にとって、バイオ6の出来はシリーズへの信頼感を失うに十分なものであり、それゆえ、その次回作である本作バイオ7の購入をこれまで見送っていた。しかし、バイオハザード7の主人公イーサンが、2021年に発売される最新作「バイオハザード ヴィレッジ」の主人公も続投することがわかり、筆者も重い腰を上げてついにバイオハザード7をプレイすることにしたのである。本レビューでは、筆者がどのようにバイオハザード7を感じ、評価したかにつき余すことなく伝えていく。もちろん、ネタバレ注意だ。
評価点
怖い、怖い、怖い
ハッキリ言おう。このゲーム、怖い。
- 主観視点が怖い。本作はナンバリングとしては初となる主観視点でのゲームで、キャラクターの視界が狭い。死角から敵が飛び出したり、登場人物が驚かしてきたりなどの演出が豊富で、「ただ歩く」だけで怖い。ひとつの角を曲がるだけで慎重になり、ゆっくり、ゆっくりと進んでいく姿はまるで現実に自分がそこにいるかのよう。また、敵に襲われダウンした際などは、起き上がるまで床や天井に視点が向いており、敵がどのように追い打ちしようとしてきているかが見えず、これまた怖い。「リアルな恐怖演出」にとことんこだわっている点に好感が持てる。
- 登場人物が怖い。よくパニックホラー系の映画などで、「本当に怖いのは怪物じゃない。人間なんだ」といった話の流れになるのを見るが、本作は脳をカビに侵された人間(ベイカー家)が主な敵であり、彼らは知能を持ち、人語も喋る。「怪物の怖さ」と「人間の怖さ」が同居し狡猾にイーサン(=プレイヤー)を追い詰めていく姿は恐怖そのもの。
この2要素&不気味なクリーチャーとの戦闘が複雑に絡み合い、筆者のプレイしたこれまでのバイオハザードシリーズの中では間違いなくトップの怖さであった。
ストーリー性
バイオハザードシリーズといえば、シリーズ全体としての大筋のストーリー(製薬会社アンブレラやその残党を倒す)が存在し、また、各作品ごとにその作品で個別に完結するストーリーが存在する。本作も例外ではない。そして本作のストーリーは、非常に出来が良いと感じた。
本作は、主人公イーサンが行方不明となった妻ミアを探すためにルイジアナ州ベイカー農場の跡地に行くところからゲームが始まる。廃墟となったベイカー邸でベイカー家の面々に襲われながら、また狂ったミアにも攻撃をされながら、脱出とミア救出両方を図ることになるのだが…。
ゲームボリュームは十分
本作、従来のナンバリングタイトルと比較してもなかなかのボリュームがあったように思う。厳密には、「長く感じる」であろうか。初見プレイでは慎重に、慎重に進んでいくことを余儀なくされるため自然とゲーム進行も遅くなり、また所々でイーサン以外のキャラクターを操作するシーンも挿入される(ビデオテープを再生した時に、クランシーやミアを操作するシーンがある)ため十分なボリューム感がある。(逆にいえば、それらをスキップした場合はその限りではないのだが)筆者の初見のクリア時間は、概ね9時間ほどであった。
敵のバリエーションは少ないが、十分歯ごたえのある戦闘
本作の主要な敵は「モールデッド」とその派生が主であり、敵のバリエーションは少ない。また武器の種類もさほど多くなく、戦闘自体も「頭が弱点」というわかりやすいものであり、その構造は比較的シンプルである。もっと戦闘に奥深さを求めるプレイヤーもいるかと思うが、筆者はかえって、このシンプルな戦闘システムが恐怖を倍増させていると感じた。戦闘それ自体に頭のリソースを割きすぎてしまうと、ホラー要素への没入感を損なうと感じているからだ。
充実のクリア後エキストラコンテンツ
本作、本編をクリアした後のエキストラコンテンツも遊びごたえ十分である。
- 本編終盤に登場するクリスサイドの物語を描いた「Not A Hero」では本編終盤で姿を消したルーカスのその後が描かれる。また、「End of ZOE」では、ミアルートを選択した場合のゾイのその後が描かれる。前述した「Daughters」ではベイカー家がどのようにエヴリンに浸食されていったかが描かれる。この3点は、本編のサイドストーリー的な位置づけであり、本編で残された謎や伏線が回収される形となる。
- 「Not A Hero」で操作するクリスは、本編の主人公イーサンと比較し運動能力がけた違いで、歴戦の英雄の力をまざまざと見せつけてくれる。また、「End of ZOE」で操作するジョーは、人間でありながら素手でモールデッドを殴り殺すことのできるスーパーおじいちゃんであり、これもまた本編とは違った楽しみ方をすることができる。
- 純粋なミニゲーム的コンテンツとしては、本編のビデオ内でルーカスに捕らえられた「クランシー」を操作した脱出ゲームやブラックジャック、襲い来る敵を全滅させ時間内まで生き延びるものなどが存在し、これらもミニゲームとしては十分な出来栄え。
問題点
ここからは筆者の感じた本ゲームの問題点を述べていく。
やや理不尽なストーリー上の分岐
ストーリー終盤、エヴリンに侵された身体を治すための「血清」が1つしかない状況で、プレイヤーは自分の妻ミアと、これまでの道中で助けてくれたゾイのどちらに血清を使用するかを選ばなければならない状況に陥る。ここでの選択がその後の展開やエンディングに直結するのだが、ここでの後味と初見殺し感がやや問題である。
鍵を使用する手順が面倒
続く作品「バイオハザードRe:2」や「Re:3」では、鍵のかかった扉を開錠する際、対応する鍵を持っていれば即座に扉を開けられたが、今作では対応する鍵をアイテム欄から選択し、使用しないと開錠できない。敵から逃げているときなど、急いでいる場合にこの手間は致命的で、かつ、リアリティがあるとはいえない。この点はマイナスであるといえよう。
現実では、あらかじめ鍵を持っていて即座に開けるでしょう?
総評
バイオハザードは「1~3」「4~6」で大幅なモデルチェンジがされ、今作「7」もRe:エンジンを搭載したモデルチェンジ第一作目であった。これまでのナンバリングタイトルの中でも1,2を争うほどの傑作であり、バイオハザードの新たな可能性を示した意欲作である。これまでなかった独特の恐怖の演出、「ゾンビ」が出現しないながらもバイオらしさの表現はしっかりとなされている。「6」で落胆したプレイヤーもぜひプレイしてほしい。