タイトル(かな) | どらごんくえすと |
ハード | FC,SFC,GB,Wii,3DS,PS4,switch,スマホ |
発売日 | 1986年5月27日 |
点数 | 70点 |
総評 | ・時代を考えれば完成度は極めて高い ・1:1故に可能な絶妙なゲームバランス ・UIは不親切 |
序文
ドラゴンクエストについては今更説明の必要はないだろう。誰もが知る国民的RPGの第一作であり、主人公は勇者ロトの子孫・当代の勇者として「りゅうおう」を倒しに行くというRPGジャンルのゲームである。いわゆるJRPGの先駆けとなったゲームであり、仲間はおらず、終始勇者一人での冒険となる。
本作は元々1986年にファミリーコンピュータ用のゲームとして初リリースされ、その後スーパーファミコン、ゲームボーイ等の各任天堂ハードに移植されたほか、スマートフォン、PS4などでもグラフィック等が刷新され、遊びやすくなったたバージョンが発売されている。本レビューにおける筆者のプレイ環境はnintendo switch版で、これは2017年に発売されたグラフィック刷新バージョンに該当する。また、SFC版も過去、プレイ経験がある。
本レビューでは、筆者がどのようにドラゴンクエストを感じ、評価したかにつき余すことなく伝えていく。もちろん、ネタバレ注意だ。
なお、本作のようなレトロゲームのレビューにあたっては、ある程度、発売当時の時代背景等も加味して評価をする。現代のゲームと比較すれば、グラフィックやゲームシステムに後れをとるのは当然であるためだ。
また、本作における筆者のプレイ環境は、2019年9月に発売されたnintendo switch版である。したがって、いくつかのゲーム内容は他ハードのそれと異なる点にご留意いただきたい。
評価点
適度な難易度、絶妙なゲームバランス
本作のプレイヤーキャラクターは勇者一人のみ。敵も複数体では登場せず、基本的に1:1の戦闘となる。勇者の可能な行動は、基本的に「こうげき」「じゅもん」「どうぐ」の3つのみであり(逃げるは除く)、また、戦闘中に使用できる「じゅもん」はホイミ系、ギラ系、ラリホー、マホトーン程度であり非常にシンプルである。基本的に「殴って、回復する」という単純な戦闘システムであるにもかかわらず、適度な歯ごたえと絶妙な難易度を終始楽しむことができる、このあたりのゲームバランス設定は見事というほかない。
そもそも最初の城から一歩出たフィールドにいるモンスターですら、初期レベルの勇者では油断すれば余裕で負けるレベルであり、「一般人では魔物に太刀打ちできない」という世界観の演出にも一役買っている。
フラグを最小限に抑え、敵の強さでプレイヤーを誘導する展開が見事
昔のゲームであるが故か、本作におけるフラグ管理は割とガバガバで、おおまかには「ぎんのたてごと、あまぐものつえ、たいようのいし、ロトのしるしを入手する」程度のフラグしか存在しない。その他のイベントの大半はその後の流れを知っていれば(あるいは、知らなくても)スキップ可能で、良く言えば自由度が高く、悪く言えば案内が不足しているので、プレイヤーは最初の城を出た瞬間、行先がわからず広大なマップに取り残され、途方に暮れることとなる。
では何を頼りにゲームを進めていくかというと、「敵の強さ」である。
すなわち、フィールドマップに点在する「橋」を超えると急激に敵が強くなる制度を導入し、現在のレベルではまず勝利できない敵を出現させることで、「あなたはまだここに行くべきではありませんよ」とプレイヤーを誘導しているのである。この「橋」というアイデアが見事で、「橋」によるプレイヤーの行動管理により、技術上複雑なフラグ管理が難しかった時代であっても開発の思い通りのゲームバランスを実現させているのである。
「初代」にして、ドラクエの基礎は完成している
本作で勇者が覚える「じゅもん」は以下のとおりである。
戦闘中に使用可能…ギラ、ベギラマ、ホイミ、ベホイミ、ラリホー、マホトーン
フィールドで使用可能…レミーラ、リレミト、ルーラ、トヘロス
いずれも今日におけるドラクエでも第一線級で活躍する呪文であり(レミーラについてはやや微妙であるが、『トルネコ』シリーズなどで受け継がれている)、またそのラインナップも攻撃、回復、補助、移動系が一通りバランスよく揃っている。現役のドラクエプレイヤーであれば、初代ドラクエにおける上記ラインナップの美しさが理解できるはずだ。
また、じゅもん以外においても、各種アイテムに街やフィールドの概念、モンスターデザイン、「ぱふぱふ」や「ゆうべはおたのしみでしたね」などの(半ば様式美となった)遊び心など、洗練されたゲームデザインが見事。「今やっても面白い」こと自体が、当時としてのゲームの完成度を如実に物語っているといっていい。
問題点
ここからは筆者の感じた本ゲームの問題点を述べていく。主にシステム面が中心である。
アイテム周りは今ひとつ
本作、アイテム周りにいくつかの不満が残る。
道具屋で複数購入ができない
本作、同種の消耗品系のアイテムは原則6つまで(やくそう、かぎなど)もつことができるのだが、道具屋でアイテムを購入する際に複数購入をすることができない。たとえば、やくそうを6つまとめ買いしようとした際も、購入は1つずつすることを強いられる。
- 技術的に難しかった可能性があるFC版ならまだしも、色々な改善版がなされたswitch版でもそれは変わらない。
スタックできるアイテムとそうでないアイテムの違いがわかりにくい
たとえば、同じ消耗品アイテムでも、「やくそう」はひとつのアイテム枠で6つまでまとめてもてるが、「せいすい」は1つごとにアイテム枠を1つ消費する。この違いがよくわからず混乱する。特にフィールドでの移動が多い本ゲームにおいて、トヘロスを覚えるゲーム中盤まではせいすいの利用機会も多いため、なかなかのストレスを強いられる。
使えば無くなる「かぎ」と復活する扉
本作においては、あらゆる扉を開けるには「かぎ」が必要であり、「かぎ」は特定の町の道具屋で販売しており、1度使えば消滅する消耗品である。前述のとおり「かぎ」の最大所持数は6つまでであるため、6回扉を開けるたびに購入する必要があるのだが、一度開けた扉も、エリアチェンジを挟むとまたカギのかかった状態で復活してしまうため、カギを切らしてしまうと非常に面倒なこととなる。特に、ダンジョン内にもカギのかかった扉は容赦なく存在する点はなかなかに辛い。
また、もっともアクセスのしやすいラダトーム城のカギ屋に行くためにカギが必要という立地のため、うっかりカギの個数をゼロにしようものならリムルダールの町まで徒歩で向かわないといけない必要がある。
ルーラで移動できるのはラダトーム城のみ
本作におけるルーラ(キメラのつばさも同様)は、「一度いった町に移動できる」というおなじみのものでなく、「ラダトーム城に一瞬で帰れる」というものであるため、前述の「カギ問題」や「せいすいスタック問題」が生じている。仮にルーラがおなじみの効果のものであったならば、本作における問題点の多くはほぼ解消できるといってよい。
- おそらく、FC版においては容量または技術の関係で「一度行った町」を判定するフラグ管理ができなかったのでは、と推察されるが、不便なものは不便である。
ほぼ意味のない「そうしょくひん」
本作における装備部位は、「武器」「盾」「鎧」「装飾品」の4部位であり、うち「装飾品」は4種類の装備しかない。そしてその4種類のうち3種類は、実質的に何の意味もないもの(装備すると呪われて外せなくなる装備が2つ、町の人の会話が変わるだけで能力値に何の影響もないものが1つ)であるため、ポジティブな効果のあるものは「りゅうのうろこ」だけである。そしてその「りゅうのうろこ」も、単に守備力が5上がるというのだけのものであり、いささか味気ない。
マップの「羽根」が邪魔すぎる
地味な不満点であるが、実は一番面倒に感じたのがここである。フィールドでマップを開いた際に表示される、自分の現在地を示す「羽根」マークがやたら大きく、マップそれ自体を隠してしまいマップの肝心な部分が見えない、というシーンが多々あった。羽根は動かすことも消すこともできないので、「現在地より北東が見たいのにマップで隠れて見えない、だからマップを閉じるときに羽根が消えた一瞬を見計らって確認する」という記憶力ゲームみたいな作業をすることとなり、これが非常に面倒であった。
- ここでも、たとえばルーラで好きな町にいけるのであれば、いったんどこかの町に飛んで現在地を動かし(羽根を邪魔でない位置に動かす)た上でマップ確認、などもできたのだが。
総評
国民的RPGの初代、ということでゲタを履かせた点数に…などという忖度は一切なく、純粋に「今やっても面白いレトロゲーム」として非常に優秀である。敵との戦闘はタイマンであり、できることもシンプルゆえに戦闘にパズル的な面白さがあり(シンプル故に勝てない敵にはほぼ絶対に勝てないため、戦略に幅が生まれないともいえるが)、ほどよい難易度、ほどよい長さがプレイ意欲を掻き立ててくれる。今日においては数百円程度でプレイ可能なゲームのため、未プレイのシリーズファンはぜひ一度は手に取ってほしい。十分に楽しめるはずだ。