タイトル(かな) | しんめがみてんせい5 |
ハード | switch |
発売日 | 2021年11月11日 |
点数 | 90点(傑作) |
総評 | ・真3の正統進化。まさに「こういうのでいいんだよ」 ・ハードスペックの問題か、テンポと処理落ちがとても気になる |
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序文
ペルソナシリーズと並ぶ、アトラス社のRPG2枚看板のひとつ、真・女神転生シリーズ。
2021年11月11日は、待望のメガテン新作の発売であった。思い返せば、「真4」は携帯機での発売だったこともあり、携帯機が苦手な筆者はプレイしていなかったため、本当に久しぶりのメガテンシリーズだ。発売ハードがswitchのみということに一抹の不安も感じつつも、約束された神ゲーの発売を期待に胸を膨らませて待つこととなった。
その結果筆者を待ち受けていたのは、「期待通りの傑作」の姿と、「期待外れのテンポの悪さ」の両方であった…。
良い点
★待っていました!まさに「真・女神転生」!
本作、特に「真3」ファンにとっては、まさに「こういうのでいいんだよ!」感に溢れた愛あるゲームとなっている。「真3」の高難易度、やりごたえ十分のゲームバランスといった種々の魅力をしっかりと踏襲しつつ、遊びづらかった点の改善や新たな遊び方の提示がなされ、過去作の良さを引き継ぎつつも、しっかりと正統進化させている。
ダンジョンの攻略が主体であった過去作「真3」や「DDSアバチュ」などとは異なり、本作は荒廃した東京の街そのものを探索する作業がメインとなる。
見る影もないほど荒れ、終末感を漂わせる中に大量の悪魔が闊歩する地獄のような光景の東京。まさに真・女神転生の世界観そのもの。プレイヤーの心をゲームの世界にグッと引き込んでくれる。
また、メガテンシリーズの象徴といえば、仲間でもあり、敵でもある魅力的な悪魔たちだ。本作ではこれら悪魔たちの描写や動きもしっかりと進化している。悪魔ひとりひとりにボイスやモーションなどが複数用意されているし、専用スキルには特別な演出がされ、目を楽しませてくれる。悪魔のデザイン自体は「真3」から大きく変わっていないが、それだけ過去作時点でのデザインが秀逸であることの裏返しであり、シリーズが進むごとにどんどん各悪魔に個性の色付けがされていっている点がとても良い。
シリーズ恒例の会話や悪魔合体なども当然用意。悪魔合体については新システムにより、お目当ての悪魔を作ることがかなり容易になっている(後述)。
★過去作から見事に進化。抜群に遊びやすくなっている
その独特の世界観や高い難易度から、国内人気が極めて高い「真・女神転生」シリーズであるが、見方によっては「硬派すぎる」あるいは「理不尽要素が強い」とされ、人を選ぶという側面があったことも事実である。しかし本作は、同シリーズの魅力はしっかりと残しつつも、遊び辛かった点を調整。結果、遊びごたえと遊びやすさ双方を残した見事な完成度となっている。この点につき、具体的に見ていこう。
より使いやすくなった悪魔合体
- 邪教の世界では、「逆引き悪魔合体」により、従来の「素材A+素材B=合体後悪魔」という合体ではなく、「合体後悪魔=素材A+素材B」と、完成品ベースで検索ができるので、手持ちの悪魔から未入手の悪魔を作ることが容易となっている。さらに、「逆引き全書合体」では、手持ちの悪魔だけでなく悪魔全書からも逆引き合体ができるようになっている。
- 悪魔合体の際、「真3」では、素材悪魔から合体後悪魔に引き継がれるスキルはランダムで選ばれていたため、お目当てのスキルの組み合わせの悪魔が生まれるまでひたすら素材選択→キャンセルを繰り返す必要があった。しかし本作では、素材悪魔から引き継ぐスキルを自由に選択することができるようになった。
さらに後述する「写せ身」により、素材悪魔が保有していないスキルも自由につけられるようになったため、「理想の悪魔」を作るためのコストが大幅に下がった。
- さらに育成面では、真4に引き続き「スキル適性」というシステムを採用。これは簡単に説明すると、同じスキルでもスキル適性の有無によってその威力が変わるというものである。例えば氷系の悪魔であれば、氷属性のスキル適性が高く、火炎属性のスキル適性が低いといった具合だ。このシステムが、悪魔の個性を際立たせる役割に一役買っている。
以上の要素により、お気に入りの悪魔を探し、育てるモチベーションが大幅に増加。育成そのものを非常に楽しく遊ぶことができる。
新要素「写せ身」
本作には「写せ身」というアイテムが存在する。写せ身には各悪魔の名前が付されており、使用することでその悪魔が保有するスキルを手持ちの悪魔に継承させることができる。これは「ペルソナ5」におけるスキルカードを、より高性能にしたものであるといえる。
この写せ身は、宝箱からの入手のほか、収集要素「ミマン」の発見報酬、仲魔からのレベルアップ時のプレゼントなど様々な入手手段があるため、割と気軽に使用することができるため、やはりここでも、お気に入りの悪魔のスキルを合体以外の事後的にカスタマイズする要素として、大きく役立っている。
また写せ身は、主人公ナホビノに限り、スキルのみならずその悪魔の耐性を継承することもできるため、ボス戦などでナホビノの耐性をカスタマイズする役割もある。
ファストトラベルが実装。フィールドでのMP管理が容易に
本作は前述の通り、いわゆる「ダンジョン」はゲームを通して2つ程度しかなく、ゲームの大部分は広大なトウキョウの地を探索する作業がメインである。探索作業は、オープンワールドではないもののそれに類似したプレイ感であり、オープンワールドにありがちな「ファストトラベル」要素が存在する。
ファストトラベルは各龍脈間を自由に行き来できるものであり、戦闘中以外なら「どこでも、いつでも」利用することができる。そのため、過去作にあったダンジョンでの厳しいMP管理がほぼ必要なく、探索中にMP切れに陥りジリ貧になって全滅する、というパターンはほとんどみられなくなっている。
この点、「そのようなMP管理も含めてメガテンだ」という考え方もあるのだが、本作の広大なフィールド探索でそれをやってしまうと、あまりに探索や移動が煩雑であるため、この判断は英断であるといえる。一方、戦闘中のMP管理はなかなか厳しくなっており、MP管理の楽しさ・重要性自体は健在であるためうまくバランスがとれている。
シンボルエンカウントとスキル「エストマ」によるエンカウント調整
本作のエンカウントは、ランダムエンカウントであった「真3」「DDSアバタールチューナー」とは異なり、現在のJRPGの主流であるシンボルエンカウントを採用している。これにより、敵とのエンカウントの有無はプレイヤー自身がある程度調整可能となっている。(なおこれは、本作からではなく、「真4」からの続投要素である)
さらに、従来は格下の敵を出現させなくするスキルであった「エストマ」が、格上も含めたあらゆる敵とのエンカウントを回避する仕様に変更。これにより、一部の長いダンジョン探索や、フィールド探索全般は格段に楽になっている。
前述したファストトラベルシステムと、これらエンカウントの調整が容易な仕様により、探索に集中したい場合にそれが可能となっているゲーム作りになっている点は見事であるといえよう。
完成度の高い戦闘システム
本作の戦闘システムは、過去作と同様に「プレスターンバトル」を採用。敵の弱点をつくことでこちらの行動回数が増え、逆に敵が耐性をもっている攻撃をしてしまうと行動回数が減る、という有利不利がハッキリした、メリハリのある戦闘システムとなっている。
戦闘システムは過去作「真3」から大きな変化はない。これは「真3」の時点でプレスターンバトルが極めて完成度の高いものとなっていることの証明であるが、いくつかの細かな変更点/追加要素について下記に言及する。
- 新要素「マガツヒスキル」の実装。これは、一定行動をすることによりたまる「マガツヒゲージ」が最大になると、それを消費して使用可能になるスキルである。マガツヒスキルには非常に強力なものが多く、戦闘の展開が一気に変わるものである。
- 「真3」にはなかったコマンド「防御」は、1ターンの間敵の攻撃を軽減するものであり、防御中は弱点属性やクリティカルの影響を受けない。これにより、従来と比べ、敵との属性相性が悪かった場合でもある程度自らの身を守れるようになっている。また、敵の強力な攻撃前には「防御」をしておくことにより、次ターンへの備えをする機会も多い。
- 1ターンに1度だけ、特定属性のバリアを張る「〇〇ブロック」系特技の実装。これは「DDSアバタールチューナー」で存在した「〇〇ブレイク」と同様のものであり、戦略に深みをもたらしている。しかし、MP消費量がDDSアバタールチューナーとは比較にならないほど多いため、気軽に使うことができない点はややシビアである。
プレスターンバトル最大の特徴は、こちらが弱点をつけば一気に敵を倒すことができる爽快感と、敵に弱点を突かれれば一瞬で全滅に追い込まれてしまうという緊張感、この2つが見事なバランスで同居していることである。本作もこの戦闘システムの良さは健在で、しっかりとした遊びごたえをプレイヤーに提供してくれている。
ただし、上述した「マガツヒスキル」「防御」などをはじめ、いくつかの要素については少々思う所があり、その点については後述する。
このような、悪魔合体~育成~パーティ構築~戦闘 までの一連の要素が見事に繋がり、戦闘準備そのものが楽しいというのが本作の最大の魅力であり、ゲーム全体を通して退屈する瞬間がなくプレイができるのである。
遊びやすくなったシステムを駆使して思い通りのパーティを作りしっかりと準備したうえで、高難易度の戦闘をクリアーしていく。この過程と達成感こそが真・女神転生シリーズの醍醐味であり、極めて高い評価であった「真3」に勝るとも劣らない十分な遊びごたえを、本作は提供してくれている。
問題点
さて、そんなこんなでゲーム内容は求めていたものをほぼ100点に近い形で出してくれた本作であるが、致命的な問題点があると筆者は感じた。それは、おそらくswitchというハード由来と思われる処理落ち、カクツキなどの動作面の不安定さ、戦闘のテンポの悪さである。
その他の細かな内容面の不満点も含め、詳しく言及していこう。
★フィールドでの処理落ちが目立つ
本作、特にトウキョウのフィールド探索において、かなりの処理落ちが目立つ。
- 遠くの敵シンボルやNPC悪魔の動きがかなりカクカクしており、違和感がある
- 移動中やメニュー画面の開閉の際、処理が追い付かず一瞬止まるプチフリーズが頻発する。これは特に龍脈近辺で発生しやすい。
- 邪教の世界での悪魔の画像読み込みが追い付いていない。一瞬、輪郭だけがボヤッと映り、少し遅れてディティールが表示されるような描写となっている
- そもそもフィールドでのグラフィック全般があまり良いとはいえない
これらが、「我慢できないほどではないが、微妙に邪魔」といった何とも言えない不快感をプレイヤーに与え続け、いまいちゲーム世界に入り込みきれないという問題点を抱えている。
★戦闘のテンポが悪い
また戦闘においても同様で、どうにもテンポの悪さが目立つ。行動と行動の間にある微妙な「間」の存在や、動作の全体的なモッサリ感により、真・女神転生シリーズ特有のテンポの良いサクサクした戦闘とは程遠い作りになっている。
ただゲーム側もこれに対して一定の回答は用意しており、オプションで「スキル演出の省略」が可能である。これをONにすることで、戦闘のテンポ自体はある程度改善される。(ちなみに、「Aボタンを押すと省略」というメニューもあるが、あまりに使いづらいので説明を割愛する)
しかし、ここで解消されるのはスキル使用時の演出のみであり、上述した行動間の「間」は依然としてそのままであるため、省略してもなおテンポの悪さが拭えない点に問題がある。
また、演出を省略しても、一部のスキルやアイテム使用モーションなどはなぜか省略できず、比較的アイテムの出番が多い本作においては、なかなかのストレスである。
シリーズ恒例のオート戦闘も搭載されているが、従来可能であった「敵ターン中のオート戦闘の切り替え」が、本作ではなぜかON→OFFへの切り替えしかできないという欠点を抱えており、地味にストレスが溜まる。
さらに、スキル演出を省略すると、せっかく作りこんでいる仲魔のモーションやボイスまでもが省略されてしまうため、個性と愛着のある仲魔の動きが全く楽しめなくなってしまうというアンバランスさを抱えている。
以上の事から、スキル演出の省略以前に、そもそも戦闘におけるゲームスピードが遅すぎる点こそが問題であり、デフォルトのゲームスピードは現状のままで良いとしても、せめて「Aボタンを押している間だけ倍速になる」といった早送り機能の実装が求められるというのが筆者の見解である。そうすれば、お気に入りの仲魔のスキル使用時には等速で見たり、敵のターン時は倍速にしたり、など自由なテンポでプレイヤーが遊ぶことができるはずだ。
シリーズの核となる戦闘のサクサクしたテンポが損なわれている点は本当に残念で、アップデートによる改善または他ハードでの発売を筆者は切に待っている。
シナリオの一部不可解な演出について
シナリオについて。まず述べておきたいのは、筆者は、巷で言われている「ストーリーが淡白すぎる」「キャラクターの掘り下げが少ない」といった点について、問題点であるとは全く考えていない。理由は、ひとことで言えば「女神転生はそういうゲームデザインだから」だ。
本作は、「真3」と同様に、そもそも登場人物の掘り下げや、感動的なストーリー展開によりプレイヤーの心を揺さぶる設計のゲームではない。主人公の思想=プレイヤー自身の思想であり、プレイヤーの思想により選んだ行動がシナリオ展開に影響を及ぼすため、主人公はあえて没個性・淡白で流されるまま というデザインとなっている。
各登場人物についても、重要なのはその登場人物個人ではなく、彼らは各「思想」を描写する偶像であるに過ぎず、主人公=プレイヤーが、より自分に近い思想を選択するために存在する舞台装置でしかない。「真・女神転生」シリーズは、ストーリー・キャラクター性に大きく重点を置いている同社の「ペルソナ」シリーズとは棲み分けがされているのだ。
とはいえ、シナリオに全く不満がなかったわけではない。筆者が不満に思った点は、もう少しミクロな部分である。具体的に述べていこう。
- ある登場人物の存在意義について。
- あるルートでプレイヤーに護衛として渡される悪魔が、加入時点で全く役に立たないほど弱い。プレイヤーのレベルがその時点では70を優に超えているのに対し、その悪魔はレベル40。護衛の役割を全く果たせていない。オマケ要素的なものではあるのだが、やはりどうしても不自然さを覚える。
- ある登場人物とある悪魔の関係について。
戦闘システムの一部気になった点(マガツヒスキル・防御)
戦闘のテンポに関して問題があることは上に述べた通りであるが、それ以外に、いくつかの要素が戦闘の面白さを損なっているように感じる。
- 新要素「マガツヒスキル」は、面白い試みではあるものの、全体的に大味である。特に最初期から使える「会心」は、ターン中すべての攻撃をクリティカルにするというものであり、絶大な火力を1ターンに出すことができるため、難易度Normalではかなりバランスブレイカーとなっている。
- また同様に、敵がマガツヒスキル「会心」を使う際は、前兆として前ターンに「マガツヒを溜める」という動作が入る。これを放置すると全滅必至のため、その動作が見えたら眠らせるなどして無力化するか、「防御」などの各防御行動で凌ぐかの選択が余儀なくされる。ここで、もっとも確実な回避行動である「防御」を選択するケースが(特にボス戦で)多々あるのだが、数ターンに1度、全キャラが「防御」して1ターン余計な時間を過ごすというのが戦闘テンポを悪くしており、その割にあまり戦闘を面白くしているとはいえない。せめて「次に回す」のように1ボタンで防御を選択できたりすればまだよかったかもしれない。
個人的にはマガツヒスキル「会心」を初期から&敵のデフォルトスキルとして用意したのはやりすぎで、別の効果にするか、いっそマガツヒスキル自体なくてもよかったかも…と思ってしまう。防御についても同様で、「敵の強い攻撃の前兆をとらえて防御しよう」というのは昨今のJRPGのトレンドではあるのだが、本作にはややなじんでいないような気がしている。あってもいいんだけど、それならもう少し良いデザインを…というのが本音である。
DLCコンテンツに関する所感
「テイルズオブアライズ」でもあった有料DLC。このDLC群を購入すべきかどうか、悩まれた方も多いだろう。
個人的には、クエスト関係のDLCはかなりよかったため、ぜひ購入をおススメしたい。DLC悪魔はデザインも性能も良いし、DLCの最強ボス「人修羅」はとんでもない高難易度バトルコンテンツでやりごたえが十分ある。
一方、各御魂のDLCについては注意が必要で、いわゆる「メタルキング狩り放題」のようなものであるから、安易に導入してしまうと著しくゲームバランスを崩してしまうためだ。幸い、ゲーム中いつでもON・OFFの切り替えができるため、自制心をもった導入をすることを強くお勧めする。
総評
ゲームそのものの出来はほぼ文句なしの傑作だ。一部シナリオ面の不満は、そもそもシナリオ重視のゲームでないため十分許容範囲だし、むしろ「真3」と比べてとっつきやすく、色々なユーザーに対してリーチしようという努力が感じられた。個人的に最も嬉しかったのは悪魔のモーションや演出のバリエーションが大きく増えた点で、ここは「真3」でリリムに萌えていた少年時代を過ごした身としては非常に嬉しい進化点だった。
ただ、それだけに戦闘時に演出省略するとこれらのモーションやボイスを聞けない点が本当に残念で、かといって省略するととても耐えられるテンポではないし…と、フィールドでの処理落ちも相まって全体的なテンポの悪さとストレスに苦しめられることとなってしまった。
傑作であるだけに、このあたりの改善または他ハードでの発売を強く願いつつ、本作のレビューを終えようと思う。
体験談として、カクつきや処理落ち、プチフリーズは、SDカードのせいなのでは?という気がしました。
当時使っていたSDの調子が悪く、その後壊れたのですが、SDカード交換後はサクサク。
おそらく、要求スペックが高く安価で読み書きが遅いものや壊れかけ(読み書きエラーレートがゼロでない)のものだと発生しているのではと。