タイトル(かな) | ろすとじゃっじめんとさばかれざるきおく |
ハード | PS4,PS5,Xbox Series X|S,Xbox One, PC |
発売日 | 2021年9月24日 |
点数 | 68点(佳作) |
総評 | ・システム面は正統進化し大幅に遊びやすく ・絶対に許されない暴走族ユースドラマ ・メインシナリオは前作越えならず |
序文
『LOST JUDGEMENT:裁かれざる記憶』(以下、「ロストジャッジメント」)は、前作『JUDGE EYES:死神の遺言』(以下、「ジャッジアイズ」)に続く、いわゆる「キムタクが如く」第2作目である。
名作と名高い本作だが、筆者はこれまでプレイしたことがなかった。しかし、2023年8月15日からPS+(エクストラおよびプレミアムに限る)にて配信されるということとなったため、これを機会に遊んでみることとした。
本レビューでは、ロストジャッジメントの良かった点、悪かった点について感想・評価を述べていく。なお、本作および前作「ジャッジアイズ」のネタバレを含んでいるので、閲覧の際は注意いただきたい。(特に重要なネタバレ箇所は非表示としている)
また、本レビューはゲーム本編を評価対象としており、DLC「海藤正治の事件簿」は対象としていない点、ご留意いただきたい。
概要:リーガルサスペンス第2作目。テーマは「いじめ」
本作の舞台は横浜・伊勢佐木異人町。同時期に発売された「龍が如く7」の舞台と同様だ。神室町もサブとして出てくるが、基本的には異人町がメイン。木村拓哉さん演じる探偵・八神隆之が、異人町の誠稜高校に外部指導員として潜りこみ、いじめ事件の調査をするところから物語は始まる。
その後物語は大きく動いていくが、主要なテーマは一環して「いじめ」。いじめの惨さと社会の無関心さ、果ては法の在り方にまでメスを入れる、メッセージ性の高いゲームとなっている。
そのため、純粋なリーガル・サスペンスものとしてみられた前作と比較して、立場と意見を異にする登場人物の言葉を通じて「あなた(プレイヤー)はどう思いますか?」と問いかけてくるような作品であり、ゲームというよりは映画を見ているような気分になる作品であった。
良かった点
大幅なシステム改善により遊びやすくなった
前作「ジャッジアイズ」の数々の不満点が解消され、テンポ良く遊びやすいシステムとなっている。
- 移動手段「スケボー」の実装により、街中の移動がかなり楽になった。
- タクシー乗り場に行かずとも、配車アプリでどこでも呼べるようになった。また、タクシー乗り場自体も増えたため、目的地への移動が全体的に楽になった。
- 前作の大きな不満要素「尾行」の回数がかなり減った。尾行距離自体も減少、また、尾行途中で対象が走り出したりするなど、尾行1回あたりの時間が短くなった点も◎。代わりにチェイスがやたら増えた。
- 前作の不満要素「サムターン回し」が撤廃された。サムターン回しは同種の開錠ミニゲーム「ピッキング」と比較してやたら難易度が高く、繊細な操作を求められる割に失敗時に最初からやり直しになるなどイライラ要素が大きかった。
- 前作では半必須だったドローンレース(と、それに伴うパーツ集め)が、本作では任意のミニゲームとなった。
- 前作の2Dコード探しに近い要素である「リスの絵探し」において、調査済みのリスの絵は地図上にマッピングされるようになった。
- SPが手に入りやすくなった。その分スキル入手に必要なSPも増加気味だが、トータルで見ればかなりスキル入手が楽になった。
- キムさんの「京浜同盟が街を荒らしている」イベントがなくなった。
前作の不満点を汲み上げ、続編らしくしっかりと遊びやすくしてくれた点が非常に良かった。
一部キャラクターの描写がとても良かった
今作でかなり出番を増やした源田法律事務所のさおり、もうすっかり仲間になった元・松金組の東、晴れてメインキャラクターへ昇格した九十九など、前作のキャラクターをしっかりと丁寧に描いてくれている点について、満足度が高かった。
また、
問題点
一部の「ユースドラマ」が退屈すぎる
本作は主人公・八神が誠稜高校に潜入するための手段として、ミステリー研究会(ミス研)の外部指導員という肩書を得る。その流れでミス研の活動にも協力することになり、異人町の闇に潜む謎の人物「プロフェッサー」を追うこととなる。
このプロフェッサー関係の一連の物語がユースドラマである。ユースドラマは必ずしもプレイする必要はないが、ボリューム・内容ともに本編と並行する『第二の本編』 のような立ち位置である。八神=プレイヤーが、ダンス部やロボット部、暴走族など様々な団体に潜入して謎を追っていくものであり、団体ごとに「ダンス部編」「ロボット部編」など章が分かれており、並行して進めていくことができる。
そして、このユースドラマ、上述のように『第二の本編』と呼べるような代物であるにもかかわらず、章ごとにクオリティが歪で、かなり怪しいものとなっている。
- 「ダンス部」「ロボット部」「暴走族」「ボクシング」など、ボリュームが非常に大きいものもある一方で、「写真部」「eスポーツ部」「カジノ」といった数合わせのやっつけではないか?と言いたくなるほど短く雑に終わるものもあり、クオリティが平準化されていない。
- 「暴走族」シナリオが冗長すぎる。暴走族のヘッドをレースゲームで負かすことが目的なのだが、ヘッドと戦うためには3人の幹部をまず倒す必要があるのは良いとして、各幹部に挑むためにはそれぞれが率いるチームの精鋭3人を倒す必要があり、ヘッド前にもおかわりで雑魚戦3回…計16回のレース。アホか!しかも、各レースの合間合間に尾行だとか戦闘だとかのいつもの要素が加わるので、とにかく長い、長すぎる。幹部3人+ヘッドだけで良かったでしょう。何だよ幹部の率いるチームの精鋭って!
そもそもレースゲーム自体も面白くなく、作りもお粗末。途中でどれだけ差をつけても敵のブーストで追い抜かれるため、ゴール手前まで引きつけ、最後にブーストして追い抜いてゴール という単純な戦法で最後までクリア可能でゲーム性が皆無だ。面白いかどうかは個人の好み…という一般論すら一蹴したくなるほどクオリティが低く擁護不能である。同じミニゲームでもロボット部のものは戦略性があり楽しかったし、あるいは格闘ゲームをプレイさせられるeスポーツ部は、単調だが3戦ほどでクリア可能なので短くまとまっていたのでよかったのだが…。 - ダンス部も、暴走族程ではないが似たような単調さがあった。音ゲー自体は(よくあるものだが)悪くないし、ダンス部のメンバー達のダンスも見応えがあってよかったのだが、同じ曲を「練習で3回+大会本番で1回」の4回、それを何度も曲を変えてプレイさせられるのはなかなか苦痛であった。
- 同じ理由でガールズバーも…。店員たちと好感度が上がるのが遅く、酔い度の縛りがある上に、テンポが悪い。
- それだけ時間をかけさせられた割に、プロフェッサーの正体は特に驚きもなく「ああ、そう…」と言いたくなるようなもので、クリア後は達成感よりもやっと終わった安堵感と虚無感が強かった。
もちろん、面白いシナリオもあった。個人的にはロボット部などはかなり楽しめた。
しかし全体的には、そのロボット部もそうだが、ダンス部、暴走族など本作オリジナルのゲームを採用しているシナリオがやたら長い傾向にあり、「せっかく作ったものを遊ばせるために長くしたろ!」というような意思が働いているのではないかと邪推してしまうほどシナリオ間のバランスが歪だった。
やっぱりつまらない尾行
良い点の項目で述べたように、尾行が前作と比較し大幅に減った点はとても良かった。
しかしあえて言いたい、もういいでしょう。尾行はいっそ全部無くしましょ。
結局、尾行は根本的につまらないのだ。回数を減らすとか、時間を短くするとか、そうした「臭いものにふた」的な対策をして、つまらなさを許容範囲の内側におさめ切ったとしても、つまらないものはつまらないのだ。
確かに尾行は探偵っぽいアクションなので入れたくなるのはわかるが、どうしても入れたいのであれば現在の「だるまさんがころんだ」システムではなく、根本から見直してゲーム性のあるものにして欲しいと願う。
前作と比べてクオリティが低下したメインシナリオ
キャラクター描写がとても良かった旨は上述の通りだが、シナリオ全体を総合的に見ると、非常に完成度の高かった前作よりもクオリティが低下してしまったように感じた。
序文で述べたようにシナリオは「いじめ」メイン。ある学校でのいじめ事件を発端とし、最終的には法の在り方を問うようなメッセージ性のあるものだった。
ありがちな正義vs悪の構図ではなく、正義vs正義ともいえるようなぶつかり合いが印象的で、実際にリアルの世界でもアンケートをとればどちらの正義が正しいか、票が割れそうなテーマで良かった。しかし、…
ガールフレンド(彼女)が減少
ガールフレンドの数が前作よりも減少している点は純粋に残念だった。DLCなしでは1人しかおらず、前作の4人と比較すると3人も減少している。(DLCを購入することで3人追加され4人となる)
ヒロインたちが「彼女」となる過程も前作より大幅に劣化している。前作ではメッセージのやり取りを重ねて少しずつ仲良くなっていくことが実感できる感じがとてもよかったのだが、今作は直接会いにいって、遊んだり、プレゼントを渡すことで好感度のゲージが増えていき、ゲージが一定値を越えたところでイベントが発生する仕様となっている。
この仕様が本当に雑で、プレゼントは同じものを何度も連続で渡すことができる上に、プレゼントごとの好感度の上昇量が変わらないので、安いプレゼントを大量に購入しひたすら渡し続けるのが最適解となる。コンビニや商店で栄養ドリンクや安物イヤリングを大量に購入し1つずつ渡していく光景は「これいつのゲームだ?」と言いたくなるほど滑稽で、見ていられない。なぜこんな仕様に…。
そして前作に引き続きであるが、相変わらず彼女と付き合った後はイベントも特別な会話も全くなく、「釣った魚には餌をあげない」状態となっている。
このあたりは龍が如くシリーズ伝統ではあるのだが、せっかく彼女にしたのだからもう少し何か欲しいな、と感じる。
総評
ゲームとしての遊びやすさは続編らしく正統進化しておりその辺りは◎。しかし、冗長すぎる一部ユースドラマや、八神が部外者となったことにより没入感を損なってしまったメインストーリーなど残念な点も目立ち、総合的に見れば「ジャッジアイズ越え」は達成できなかったという印象だ。邪推かもしれないが、「せっかく作ったミニゲームをたくさんプレイさせたろ!」「いじめ問題をプレイヤーに考えさせたろ!」といった、ゲームの向こう側、制作陣の思想が見え隠れしてしまい、ゲームの中に入り込みきれなかった点が残念。
PS+でプレイ可能なので、時間のある方は手に取ってみると良いかもしれない。
ゲームのボリュームとしては『如く』のルーツをくむタイトル。
ただストーリーに関しては、1作目は『起こるべくして起きた事件』と考えられる部分はあったが、今回のロストは、見方を変えれば『八神が澤先生を追い詰過ぎた』のが、更なる悲劇の原因になった気がするのよなぁ。
執拗なまでの八神の追及を、敢えて深く問わない作り方をしてるが、最初のインパクトが澤先生の敵視に八神が過剰に反応してたりするから、澤先生の死は八神が追い詰め過ぎた結果の必然とも取れる。
正直、澤先生の亡骸を発見した時『嘘だろ…』って後に『やっぱり、こうなるわな』と正直思ったのが個人意見。
胸糞の悪さで言えば、ロストの方が強く感じ気がするな。
しかも、犯人に対してと言うより、もう少し『やり様がなかったのか?』って言う無情すら感じたのが強く印象に残った。
その意味で言うなら、アイズは、繰り返しプレイしても楽しめるタイトルだったが、ロストは途中で一気にやる気が失せた感じがした。
逆に、もっと殺しても良いだろって思う、どうし様もない奴が、今回は沢山居過ぎたからな。
その悲劇の引き金を弾くトリガーになった八神の追い立てが、澤先生の悲劇の末路に感じられて仕方ない。
まぁ、ドラマ性としては『アリ』なんだろうけどね。
正直、胸糞が悪過ぎるんだよなぁ。