タイトル(かな) | らいずおぶぴー |
ハード | PS4,PS5,PC,Xbox One、Xbox Series X/S,Xbox GAME PASS |
発売日 | 2023年9月19日 |
点数 | 80点(ぜひおすすめ) |
総評 | ・ほぼ「ソウル」と遜色ない完成度 ・戦闘システムは調整の余地あり |
序文
『Lies of P』は、韓国のゲームスタジオNEOWIZが手掛ける、いわゆる「ソウルライク」3Dアクションゲームだ。世界的に有名な童話作品「ピノキオ」を題材としている。
「ソウルライク」ゲームはそこらじゅうに溢れているが、本作の面白い点は統括プロデューサー自らがソウルライクであることを否定せず、参考にしていることを明言していることだ。そのため、操作感やインターフェース、難易度の設計に至るまで、これでもかというほどソウルシリーズに酷似している点が特徴だ。
本レビューでは、『Lies of P』を2周プレイした評価・感想を、フロム作品(ソウルシリーズやSEKIRO)との比較を交えながら述べていく。
ちなみに、かなり面白かったです。
全体的に非常に「ソウル」によく似ている
序文でも述べた通り、本作は本当にソウルシリーズによく似ている。
まずはこの画面を見てほしい。
どうだろうか。フロムのソウルシリーズをプレイしたことのある諸兄ならば、「うわ、これ見たことあるやつだ!」と思うのではないだろうか。
もちろん見た目だけではない。細部に本作独自の要素はあるものの、基本的にゲーム設計の基礎となる部分はほぼすべてソウルシリーズに準拠している。以下、そのうち一部を抽出して紹介する。
- 左上に体力とスタミナゲージ、左下にアイテム画面といったインターフェース
- 左上の青いゲージは「フェーブルアーツ」と呼ばれるもので、消費することで武器事に設定された強力な技を使用することができる。「ダークソウル3」や「エルデンリング」の戦技システムに近いもの。
- エリアごとにスターゲイザーと呼ばれるチェックポイントがあり、これはソウルシリーズの篝火に相当する。初めて訪れた時に解放され、以後はスターゲイザー間を自由に行き来できる。スターゲイザーに触れると体力やパルス電池(後述)等が全回復する点も同様。
- 回復はパルス電池で行う。ソウルシリーズでいうエスト瓶等に相当する。スターゲイザー(篝火)で使用回数が回復する点も同じ。独自要素として、パルス電池使用時にステータスが強化される等の要素もある。
- 敵を倒すと「エルゴ」(画面右上)が手に入り、これが経験値兼通貨の役割を担う。つまりソウルだ。ボスを倒すとユニークなエルゴが手に入り、ユニーク武器やアミュレットと交換が出来る点も同じ。
- レベル上げ、装備の強化などもほぼ同じ。ただし、装備強化については「柄」という独自のシステムがあり、これは後述する。
- 左手には「リージョンアーム」という機械腕を装備できる。リージョンアームには複数種類あり、敵を引き寄せたり、電撃や火炎、酸で攻撃したり、盾や地雷になるものなど様々。SEKIROの義手忍具に近いシステムとなっている。
上記はごく一部であるが、とにかくあらゆる要素が全体的に「ソウルみ」があり、全く事前知識がない状態で「これフロムの新作。童話を題材にしたソウルシリーズの亜種ですよ」と言われたら疑いなく信じてしまう。権利的なアレは大丈夫?と心配したくなるほど酷似している。
それほどまでにソウルシリーズをリスペクトしているゲーム、それが『Lies of P』なのだ。
単なる猿真似ではない面白さが、確かにある
散々似てる似てると連呼しておいて何だが、誤解のないように申し上げておきたい。
本作は非常に面白いゲームだ。決して、ただガワだけソウルシリーズをなぞったスカスカなゲームではない。
先に述べたように、前情報なしでプレイしたらフロムの新作ですよと言われても信じてしまう…ということは、逆に言えばそれだけのクオリティが担保できているということだ。
失敗を積み重ねて学びと成長を得るバランス設計と、シビアさと爽快さを併せ持つ戦闘システム。これまでのソウルシリーズを学び、各作品の良さをうまく融合させようと努力した痕跡が伺える。また、童話を舞台にした独特な世界観とBGMにより演出される雰囲気は、これまでのソウルシリーズではあまり見られなかった、本作独自の要素だ。ソウルシリーズの硬派すぎる雰囲気とは違った良さを醸し出している。
以下、もう少し具体的に、要素ごとに筆者の感想を記していく。
戦闘ー無難に面白いが、ジャストガード周りは見直しが欲しい
ソウルライクである以上、戦闘に関する言及は避けて通れない。
基本的にはソウルシリーズに準拠しており、スタミナを消費して攻撃、回避、ガードなどを行うことができるが、いくつかの特徴的なシステムがある。
- スタッガー
敵の攻撃をジャストガード(後述)したり、攻撃を当てることを繰り返すことで、敵のHPバーが白くなる。この状態でタメ攻撃やフェーブルアーツ(後述)をヒットさせることで、敵が一定時間行動不能となるスタッガー状態となる。スタッガー状態の敵には一方的に攻撃できるほか、致命攻撃も可能となる。 - ジャストガード
敵の攻撃をタイミング良くガードすることでジャストガードとなる。本作の通常ガードはカット率が100%ではなく、カットできなかった分はガードリゲイン(攻撃することで回復する特殊なHPゲージ、一定時間で消滅する)となるが、ジャストガードの場合はカット率が100%となる。但し、スタミナは通常ガードと同様に減少する。また、ジャストガードに成功すると敵をスタッガー状態にしやすくなる。 - フェーブルアーツ
いわゆる戦技に近いシステム。武器ごとに設定されており、フェーブルアーツゲージ(画面左上の青いゲージ)を消費して使用する、強力な特技。フェーブルアーツは武器ごとに設定されており、ブレードで1種、柄で1種の計2種を使用できる。 - リージョンアーム
SEKIROでいう義手忍具に近いシステム。全8種類の中から選択し、主人公の左腕に装備する。L2ボタンで使用できる。敵を引き寄せたり、火炎・電撃・酸の攻撃をしたりなど様々な効果をもつ。 - フューリーアタック
敵が使用する強力な攻撃で、敵の体が赤く光り、回避およびガード不能(ただし、ジャストガードは可能)な攻撃を繰り出す。やり過ごすには、ジャストガードを狙うか、物理的に距離を離すしかない。
以上を踏まえ、本作の戦闘システムの特徴と所感を述べていく。
ジャストガードや攻撃を経て、敵をスタッガー状態にさせることを狙っていくのが基本である。ただ、ジャストガードの判定が妙にシビアなこと、敵のモーションにディレイやフェイントなどがかなり多いこと、フューリーアタックの存在などから、SEKIROの「弾き」と同じノリでジャストガードありきで動くとダメージを受けやすく、安定しづらい。
したがって、よほどジャストガードの安定する達人でない限りは、無理なく通常ガードしつつ、適度に攻撃を当ててガードリゲインを回収するという立ち回りが安定しやすい。(キャラの育成が進むにつれ、ガードリゲイン周りは強化されていくため更に安定しやすくなる)
戦闘全体から感じる所感としては、各作品から良い所どりをしているものの、それらが微妙にマッチしておらず、痒いところに手が届かないような印象を抱いた。
特に、ジャストガード狙いのリスクリターンはもう少し見直しても良いと感じた。判定を緩くするか、成功した時のリターンを増やしてもいい。うまくハマれば、連続ジャストガード→敵がスタッガー→フェーブルアーツと致命攻撃で大ダメージ とかなりの爽快感がある(それこそ、SEKIROの体幹削りのような気持ちよさがある)のだが、敵のモーションがかなり不規則でディレイも多いので、感覚的なジャストガードは難しい。こういった、プレイヤーのタイミングを露骨にズラしに行くようなディレイは「エルデンリング」でも好きではなかった要素だが、本作もそれに近いような挙動が目立つので、せっかくの爽快感を得る機会が少なくなってしまっているのは残念。うまくハマれば気持ちいいので、これを感じる機会がもっと欲しかった。
それから、リージョンアームの格差も感じた。特に「パペットストリング」「アイギス」の汎用性が高すぎるので、他の攻撃系のリージョンアームがやや使い辛くなっている。電撃や炎を放出する「フルミニス」や「フラムバージ」は、威力こそ高いものの射程の短さや、火力が出るまでの時間が長いこともあり少々使いにくい。リージョンアームは全体的にもう少しバランス調整しても良いだろう。
色々な要素を詰め込み、本作独自の要素など光る要素も多くあるものの、微妙な噛み合わなさから「惜しい」感じとなってしまっている。ソウルライクとして、無難に面白い。しかし、調整次第でもっと化けることができる戦闘システムであると感じた。
育成ークオーツを用いた「P機関」強化が面白い
育成については、通常のレベルアップのほか、「P機関」の強化が存在する。通常のレベルアップについては、特筆すべきことはないので割愛し、ここではP機関についてフォーカスしていく。
P機関には6つのフェーズがあり、各フェーズごとに様々な能力の解放が用意されている。能力を解放するためには、「クオーツ」を集めて、既定の個数セットする必要がある。能力1つを解放するために、クオーツは2~4個必要。そして、P機関の解放の過程で、クオーツを1個セットするごとにも別の能力を解放することができる。
この成長システムが秀逸で、「P機関のどの機能を解放していくか?」「クオーツのセットによりどの能力を解放するか?」の選択肢が多い点が魅力だ。解放される能力ひとつひとつも非常にユニークで、強さを実感できるものが多い。後半になればなるほど、戦闘に奥行きと爽快感が生まれるゲーム設計となっているし、周回によるキャラクターの成長がより楽しみになる。(とはいえ、2周+α程度でP機関のすべての能力が解放されるが)
装備ー武器を「ブレード」と「柄」に分解してカスタマイズ可能
装備は、上述したリージョンアームを除けば、「武器」と「防御パーツ」、「アミュレット」が存在する。このうち、特に「武器」にフォーカスして見ていく。
武器は素材を集めて強化していくオーソドックスな強化に加え、武器を「ブレード」と「柄」に分解して組み合わせる、「調合」というシステムが存在する。
武器の基礎能力はブレード側に依存するが、武器の能力補正とモーションは、柄に依存する。そのため、「この武器使いたいけどモーションやリーチが悪いな」とか、「この武器の能力補正と自分のキャラビルドが噛み合わないな」と思った際に、ブレードと柄をバラして、別の柄をつけることで武器のカスタマイズができるという点がユニーク。
たとえば、炎属性をもつ強力な武器だが、リーチが短い「サラマンダーの短剣ブレード」のブレード部分に、リーチの長い「酸性ブレードの槍」の柄を組み合わせることで、槍のリーチとモーションをもつサラマンダーの短剣ブレードを作ることができる、といった具合だ。
これはなかなか面白い発想だと感じた。付け替えはノーコストで何回もできるため、気軽に色々試せる点も大きい。さらに、フェーブルアーツを軸に考えるという手もある。上述の通り、フェーブルアーツは武器と柄ごとに決まったものがセットされているので、ブレードと柄の組み合わせにより使用可能なフェーブルアーツも変わる。
ただ、武器の種類自体はそれなりに多いものの、実際に有用となるブレードと柄の組み合わせは割と限られている。ブレードとモーションに相性の良し悪しがあるため、現実的でない組み合わせも多くあるためだ。このあたりは、今後発売される可能性のある続編でより進化してもらえることを望みたい。発想はとても良い。
また、アミュレットについても少しだけ触れておく。アミュレットはいわゆるアクセサリー枠で、様々な効果をもつ。初期状態では2つ、最大で4つまで装備できる。本作は装備の重量制限が割と厳しいので、装備可能な重量を増加する「運び屋のアミュレット」がほぼ固定で1枠埋めてしまう(ステータス「積載力」を上げまくる場合はこの限りではないが)し、ボス戦で活躍する強いアミュレットは大体決まっているので、アミュレットに実質的な自由度が少ない点はやや残念。面白い効果のアミュレットがたくさんあるだけに、もう1つ枠を増やすか、重量制限を緩和しても良いと感じた。
その他
雑多なところとして、いくつか感じたことを箇条書きする。
- BGM…非常に良かった。特に拠点となる「ホテル クラット」の曲はずっと聞いていたくなるような心地よさがあった。童話をモチーフにしているだけあり、世界観の演出にはかなり気を遣っているように感じた点は◎。
- 投てきアイテムがかなり強い点は好印象。こうしたアイテムは、序盤だけ強く、終盤は相対的に弱くなってしまうこともあるのだが、本作は弱点を突けばしっかりと最後まで強い。
- 補助アイテムである「キューブ(祈りの石)」はもう少し幅広い効果のものが欲しかった。無強化状態での発動時間が遅すぎる点も△。
- ED以外の、シナリオのルート分岐があっても良かったかも…。初見プレイでは黒兎兄弟との協力ルートがあると思ったらそんなものはなかった。
総評
正直なところ、ソウルシリーズへのリスペクトというかパク…(失礼)な雰囲気を感じるものの、全体としてはとても面白かった。一方、戦闘周りは少し粗さを感じた。ジャストガード~スタッガー周りはSEKIROから着想を得たのかもしれないが、そこに「エルデンリング」っぽいディレイ要素を詰め込んだ結果、ジャストガードのリスクが高まり、爽快感にやや欠けてしまう設計となっているのは残念。現在、DLCを鋭意開発中とのこと。楽しみに待ちたい。