タイトル(かな) | ぽけっともんすたーすかーれっとばいおれっと |
ハード | switch |
発売日 | 2022年11月18日 |
点数 | 67点(佳作) |
総評 | ・オープンワールド化は正解 ・パフォーマンス面に大きな問題 ・テンポ、遊びやすさ、世界観など多方面にやや難 |
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序文
遂に出ました、ポケモンのオープンワールド。筆者はかねてよりポケモンとオープンワールドの相性は抜群だと思っており、さっさと出さんかい!とずっと思っていた。
2022年2月に発売した「アルセウス」もややオープンワールドっぽかったものの厳密には違うこと、そもそものゲーム性が個人的には刺さらなかったこともあり(そのうちレビューを書こうと思っている)、本作こそがポケモンの新時代を切り開く傑作となることを信じ、プレイを開始した。
この記事では、「ポケットモンスター スカーレット バイオレット」のレビューを忖度なく行っていく。ネタバレは抑えているが、念のため注意されたし。
なお、筆者のプレイ環境は「スカーレット版、かつパッケージ版」である。
また、本レビューはオフラインプレイを前提としており、通信対戦やマルチプレイなどについてはレビューの対象外としている。
良い点
オープンワールド化により「新たなポケモン」を提示している
まず言及したいのは、ポケモンをオープンワールド化したこと自体の是非だ。これについては、筆者は非常に好意的に受け止めている。
かねてより筆者は、ポケモンはさっさとオープンワールド化すべきだと思っていた。ポケモンというゲームの性質は、いわゆる「宝探し」に近い。広大なフィールドを探索して、冒険の果てに秘境にたどり着き、そこでレアポケモンと邂逅する。これはまさにトレジャーハント的性質があると思うし、発見時の興奮を想像すれば、オープンワールドとの相性は抜群であることに疑いの余地はない。「アルセウス」である程度その片鱗を見せたものの、残念ながら同作は筆者の求めているものとは少々イメージが異なった。そういう意味で、純オープンワールドとなった本作のスタンスは個人的に大歓迎であり、プレイ前は期待に胸を膨らませた。
実際、蓋を開けてみれば、(当たり前だが)キッチリとオープンワールドになっている。世界はキッチリと広いし、伝説のポケモンに乗ることで滑空や崖登りなど大抵のアクションはできるので、探索時のストレスもそれほどない。
ファストトラベル機能も概ね揃っており、最低限の要件は満たしている。
フィールドをポケモンが闊歩しており、自由に戦闘を挑み、捕獲できること。野良ポケモントレーナーとのバトル。そうそうコレだよコレ。求めていたのは。ポケモン×オープンワールド、最高!!
…のはずなのに、何でこんなに微妙な出来なのだ?
3つのルートが1つのシナリオに収束
少し話を変えよう。まだ本作の不満点を語るには早い。
本ゲームのシナリオ面についても触れていきたい。本作は、大きく分けて3つのメインシナリオ…すなわち、「レジェンドルート」「チャンピオンロード」「スターダストストリート」が存在しており、それらすべてをクリアすることで、最終的に3つのルートが1つのシナリオに収束することになる。
これら3つのシナリオはどれも面白く、また各シナリオごとの個性もしっかり立っているので、遊び応えがある。ジムをクリアしチャンピオンを目指すという「いつもの」ポケモンシナリオ(本作では「チャンピオンロード」がそれに該当する)だけだとどうしても全体のボリューム不足が否めないので、この判断は英断であろう。
また、本作はいわゆるサブクエストは基本的に存在せず、基本的に上記3ストーリーの展開のみでゲームが進んでいく。
もしこれが仮に、「〇〇を〇匹捕まえてきてくれ」とか、「〇〇山にいるポケモンを討伐してきてくれ」みたいなストーリー性のないサブクエストが大量に、水増し要員として存在していたならば、一気に本作は駄作となっていたであろう。そうならなかった点は幸いである。
ポケモンあるあるの独特のセリフ回しも健在な点もポイントが高い。メインキャラや野良トレーナーのクスリとくるセリフが相変わらず面白く、しっかりポケモンできている点も高評価だ。
メインの3シナリオでの主要人物「ネモ」「ペパー」「ボタン」のほか、アカデミーの校長、ジムリーダー、スター団の面々なども魅力的な人物が多い点も良い。(ややパンチに欠ける気はするが)
悪い点
さて、オープンワールド化して新たな境地へたどり着いたポケモンであるが、そのアイデア自体には筆者も強く賛成しているし、今後もシリーズはこの路線で進化していくべきと確信している。にも関わらず、本作にあまり良い印象は抱いていない。その理由はなぜか。
答えはシンプルで、純粋にゲームとしてのクオリティが低いからである。
つまり、オープンワールドにしたことは正解だが、それだけ。ゲームとしての出来は、良作とは言い難いのだ。では、具体的に見ていこう。
あまりに酷い処理落ちとカクつき
本作はパフォーマンス面に大きな問題を抱えている。ゲーム全体を通してとにかく処理落ち、カクつきが酷い。ゲーム開始直後のOP映像から既に処理落ちしており、これからポケモンの世界に旅立つプレイヤーを絶望の底に叩き落した。
画面内に多くのキャラクターが表示されている状況でないにも関わらず、基本的に遠くの住民やポケモンの動きはコマ送りとなっているし、移動中にプチフリーズすることは日常茶飯事。決まった情報しか描画されないはずのイベントシーンですら普通にカクついており、快適なゲームプレイとは程遠い状況に陥っている。
あまりの酷さに、様々なユーザーがインターネット上で数々の「少しでも処理落ちを軽減させる方法」を共有し始め、やれダウンロード版よりパッケージ版がいいとか、SDカードじゃなくて本体メモリにダウンロードした方が良いとか、本体メモリの容量がカツカツじゃなくて十分な空きがあった方がいいとか、玉石混合の様々なアイデアが飛び交った。これらの真偽は不明であるが、少なくともパッケージ版の筆者の環境でも普通にカクついたという点は強調しておこう。
そもそもオープンワールドであろうとなかろうと、意図的にオブジェクトや敵を1画面に集めたとかでない限り、通常プレイで処理落ちが激しいというのは論外であり、完成品としてのクオリティに達しているか疑問である。プラス、オープンワールドの良さというのはすなわち、本当に自身が冒険しているかのような没入感を味わうことにあるという筆者の価値観に沿えば、一気に現実に引き戻されるこれらのパフォーマンス面の問題は、看過できるものではない。
地味にストレスが溜まるいくつかの要素
また、それ以外にもゲーム設計が悪くストレスが溜まる要素がいくつか存在した。
- 小さいポケモンのシンボルが非常に見づらく、意図しないエンカウントが発生することが多くある
- ZLボタンのロックオン機能が使いづらい。射程が短く、ポケモンに密着するほど接近しないと、そのポケモンが捕獲済みかどうかのマークが表示されない
- 野良ポケモンとの戦闘後の無敵時間がほぼ無いため、シンボルが密集している場所ではノータイムで次の戦闘が始まってしまう
- カメラ回転の速度を変更することができない
- そもそもゲーム内でヘルプを見ることができない
などといった、少しテストプレイすれば確実に気づくであろう要素がいくつもあるにも関わらず、それを放置してリリースしてしまっている点はいただけないところである。
テンポの悪すぎる戦闘
さらに、戦闘面でも大きな問題を抱えている。とにかくテンポが悪すぎるのだ。
- エフェクトや文字の処理スピードが遅く、テンポが悪い。この影響を特に受けるのが状態異常の発生時やバフデバフスキル使用時で、たとえば「まひ」を例にすると、「からだがしびれて動けない」の文字が出る→少し間を置いて麻痺のビリビリエフェクト のような出方をするためとにかくイライラする。また、「めいそう」などの複数ステータスを上げるわざの使用時も、「とくこうが上がった」→「とくぼうが上がった」のような出方をするので、非常に気になる。「とくこう と とくぼうが上がった」にしてほしい。
- 目玉システム「テラスタル」の演出がやたら長い(約20秒)上にスキップできない。これが長すぎるせいで、戦略的にはテラスタルを使いたいのに面倒なので使わないというシーンが多くあった。
- これらを緩和するための、「戦闘倍速モード」や「エフェクトカットモード」は当然のように実装されていない。エフェクトのカットモードは、初代ゲームボーイ赤緑版にすらあったのだが…?
とにかく戦闘全体を通してもっさりしておりスピード感は皆無。サクサクと相手トレーナーとバトルすることが出来ない点は非常に気になった。
全体の世界観がイマイチ
さらに言及したいのが、そもそもの世界観の構成がイマイチという点だ。
- そもそものグラフィックのクオリティ。ポケモンらしさは表現できているので悪くはないのだが、「冒険の果てにたどり着いた先の秘境で、レアポケと邂逅する」といった感動を味わうには足りない。全体的に無味乾燥な印象がぬぐえない。
- ポケモンに生活感がない。水辺には水ポケ、岩場には岩ポケが「配置されている」感が強く、その世界の生き物として存在している感が乏しい。ポケモン発見の喜びが少なく、驚きもない。
- 各タウンの施設が弱い。街の外にあるポケモンセンターとショップの他は、ジムと料理屋(同じ街に複数ある)があるくらいで、その街特有の施設は特にない。普通にプレイする限りは料理屋を使う機会も少ないので、ただジムリーダーと戦うためだけの場所と化してしまっている。
- BGMが弱い。印象に残るBGMが少なく、アツさもない。
- バトル前演出が弱い。筆者の印象では、ポケモンはバトルに突入する直前の「入り」のところで、BGM含めた演出で一気に盛り上げる印象があるのだが、本作はジムリーダーやボス戦においてその辺りの演出に欠ける印象があった。
- 某界隈への配慮か、特に野良ポケモントレーナーのビジュアルに大きな偏りが見られる。多様性を意識しすぎた結果、逆に多様性を感じないラインナップとなっているのはいかがなものか。
これら、世界観を構成する様々な部分の作りがどうにも甘く、ゲーム全体を通して平坦というか、無機質な印象が否めなかった。結果として、プレイヤーのゲームへの没入を阻害する要因となり、どうにも入り込めないと感じてしまった。
総評
オープンワールドという方向性は間違っていない。そこは声を大にして言いたい。シリーズを新たな境地へ到達させるための第一歩となる作品だろう。しかし、それだけだ。一本のゲームとして見れば、致命的なまでの処理落ち・カクツキや、(筆者は遭遇していないため上では挙げなかったが)バグの存在、戦闘時における遊び辛さなどお粗末な点が目立ち、決して良い出来とは言えない。
ハード性能のせいにしてはいけない。同ハードでよりクオリティの高い同種のゲームはいくつも存在する。また、バグについてはハード性能以前の問題だ。
ポケモンはダイパリメイクでもバグの多さが目立ったし、このまま「どうせ売れる」とブランドにあぐらをかきつづけていれば、いずれゲーマーからの信頼を失ってしまうおそれがあるだろう。
ポケモンが他のオープンワールドゲームと大きく異なるのは、対戦バランスをも考慮しなければならない点だ。対戦ゲームとしての側面と、オフラインRPGとしての側面、両方に高いクオリティが求められるため、開発側のリソースが足らないのではないかという想像はできる。しかしながら、だからといって不完全なまま発売して良い理由にはならない。
オープンワールド化の入り口として本作を位置づけ、今後より良質なものを作成いただき、神ゲーであるポケモンを、ブランドの名に恥じない名作を、作っていただきたいと熱望している。
記事拝見しました。
申しわけないですが、そもそも「ポケモンのオープンワールド」という方向性が間違ってると思います。
開発の技術力云々やスイッチハードのスペックなどの理由がありますが、そもそも立ち返ってみれば、ポケモンってそういうことを求めるゲームではないはずです。良いオープンワールドゲーを遊びたいなら、別ゲーやれば良いですし。
本作はそういったことを追い求めてとりあえず形にしたのはよいですが、結局様々な点で調整不足なゲームになってしまった点は否めません。
新しいことに挑戦するのはよいですが、質、特にゲーム中の演出などが前作と比べて劣化していたら話になりません。
そういう点では、本作は任天堂やゲームフリークなどはよい教訓になったと思います。次作はじっくり長く開発期間を設けて開発する方針で行くことを切に願います。
そういうのやめようぜ
初代ポケモン、ふたごじまでめちゃくちゃ迷った挙句最奥に
鎮座していたフリーザー
ハナダのどうくつのミュウツー、うずまきじまのルギアのように
探索と発見それこそがポケモンの醍醐味であり
プレイヤー一人一人の物語になっていると思っており
オープンワールドでもある本作はそのような要素の発展を期待していたのですが
純伝説はまさかのマップ全体に散らばったキーアイテムを収集したら開放されるという
一昔前の作業感強めの手法を用いており、せっかくの舞台を活かしきれてなかったのが個人的にがっかりしました。
次回作は節目の10世代でもあるので
今作の改善点を踏まえた素晴らしい作品になることを今から期待しています。
コメントありがとうございます。
探索と発見こそがポケモンの醍醐味、まったくもって賛成です。