レビュー

ニーア レプリカント ver1.22474487139..​.【66点】レビュー・感想

タイトル(かな) にーあれぷりかんと
ハード PS4,Xbox One,PC
発売日 2021年4月22日
点数 66点
総評 ・ボーカルを導入したBGMは全ゲームの中でも屈指
・2週目からが本番
・ゲーム性は改善の余地あり



序文

元々「ニーア レプリカント」は、2010年にPS3で発売したゲームである。ジャンルはアクションRPG。「マモノ」と呼ばれる黒い化け物が徐々に侵食する世界で、魔王に攫われた妹(ヨナ)を救うために、兄(ニーア)がマモノを倒すための旅に出る…とだけ表現すれば王道なシナリオであるが、その実、非常に癖が強いストーリーが特徴だ。

本作「ver.1.22474487139…」(以下、「ver1.2」と呼ぶ)は、旧「レプリカント」にいくつかの追加要素を加え、現行ハードにて蘇らせたものである。おそらく、旧「レプリカント」の流れを汲んだ半続編である「ニーア オートマタ」の大ヒットを受けて、旧作を再度手に取ってもらいたいとの思いから製作したものであると予想される。

旧「レプリカント」は、美しいBGMと意表を突いたストーリー展開が大きな評判となった名作だったが、本作「ver1.2」はどのような進化を遂げたのだろうか。旧作「レプリカント」の評価を含めたレビューを行っていく。もちろん、ネタバレ注意だ。
なお、筆者のプレイ環境はPS4版である。旧作であるPS3版も、トロフィーコンプまでプレイ済だ。

なお、特に強調したいポイントは、「★」マークを見出しにつけている。

評価点

★一生記憶に残ると言ってよい、上質なストーリー

本作は非常に独特なストーリー構成をしている。以下、強くネタバレ注意だ。

エンディングネタバレ(クリックで展開)

本作は周回を前提としており、異なるエンディングを迎えることにより、同じ話でも、前回の周とは全く異なった「見え方」をする点に最大の特徴がある。

一周目(Aエンド)

一周目はいわゆる王道展開。主人公(ニーア)側の視点に立ち、魔王に攫われた妹ヨナを救出することを主目的としてプレイヤーは行動することになる。魔王を倒しエンディングを迎えて、一件落着。ただし一周目の時点で、不可解なカイネの言動や消化不良なエンディングなど、勘の良いプレイヤーであれば何か引っかかるものを感じるであろう。

ヨナを魔王から救えはするのだが…。
二周目(Bエンド)

一周目のデータを引き継ぐことで二周目のプレイが可能となる。二周目はいわゆるカイネルートと呼ばれ、仲間キャラクター「カイネ」側の視点が描かれる。半身にマモノを宿した「マモノ憑き」であるカイネは、実はマモノの言葉を理解していることが判明。主人公たちが一周目で倒したマモノたちにも、様々な感情や仲間意識があったことが描かれる。二周目ではマモノの言葉にも字幕がつき、プレイヤーもカイネと同様にマモノ側の言葉を理解することができるようになる。

この一周目→二周目の流れが見事で、一周目で「わずかに違和感があったけど気にするほどでもなかった」マモノの動作や、「何かゴニョゴニョ言ってるけど字幕もないし聞き取れない」マモノの発言すべてに意味があったことをプレイヤーは理解する。
例えば、二周目では以下のような要素が追加される。

  • ロボット山編では、子供の魔物であるクレオと防衛ロボットP-33の友情が描かれる。親を人間の手により亡くしたクレオが、それでも人間を憎むことなくP-33と平和に暮らしているところに、ロボット山の武器屋から討伐依頼を受けたニーア(プレイヤー自身)がやってきて…。

    一周目ではロボットであるP-33の頭部に陣取り、P-33を操っているように見えたクレオは、実は単にP-33に守ってもらっているだけであった。P-33を討伐後にクレオが襲い掛かってくるシーンは、一周目では「ロボットを倒したことにより本体が姿を現した」ようにしか見えなかったが、二周目では「友達であるP-33を守るために、非力なクレオが必死にニーアたちに戦いを挑んでいた」ことがわかるのだ。

    マモノにも感情があった。P-33とクレオの別れのシーン。
  • 同様に、仮面の街編では狼のマモノとの戦いが描かれる。これも一周目では、展開上マモノ側を憎んだプレイヤーが多かっただろうが、実は元々仮面の街周辺は緑豊かな森林であり、狼たちが住める領域が人間の手によりどんどん狭まっていたという事情が二周目で明かされる。それでも狼たちは人間との共存を望んでいたが、仮面の王の結婚式を控えた兵士たちが、万に一つもトラブルがないように狼たちを駆除していたことが二周目で判明。マモノであるボス狼は、同朋を虐殺されたことによりついに共存を諦める。多勢に無勢で勝てないとわかっていても、人間たちに最期の戦いを挑んでいたのであった。

プレイヤー(ニーア)は妹が魔王に攫われているため、すべてのマモノを皆殺しにすることが行動の基本原理であり、マモノの言葉も理解できない(もしできたとしても、耳を貸さない)から、どんなマモノであってもお構いなしに倒して先に進んでいく。

一方、プレイヤーは、これらの表現が二周目で追加されたことによって、「倒したくない、けど倒さないと話が進まない」という葛藤の中、半ば鬱になりながらゲームを進めていくことになる。そしてこれは、マモノの言葉を理解しつつも、ニーアの刃となることを決め、何も言わずにニーアの傍で剣を振るい続けるカイネ自身の心情をも表しているのだ。

仲間想いのマモノであっても、剣を振るうことをやめない。それがカイネの決意なのだ


また二周目では魔王の心情についても描かれる。ニーアに倒された後の魔王の精神的な救済が描かれることがBエンドの特徴である。

このように、マモノの裏側を理解したことで、「ああ、マモノにも事情があったんだな…悲しいけどいいゲームだったな」と感じるかもしれないが、このゲームはまだまだ終わらない。

Bエンドのエンディングで、カイネはそそくさとその場を去る。マモノ憑きである自身に宿したマモノが暴走しつつあり、もはや抑えきれなくなっているのだ。妹を取り戻せたニーア、目的は達成できなかったが精神的な救済を得た魔王とは裏腹に、ニーアの刃となり自身の役目を終えたカイネは、独り死を覚悟するという後味の悪さを残す。

三周目、四周目(Cエンド、Dエンド)

三週目以降は基本的に二周目と変わりないが、すべての武器を集めることでルート分岐し、Cエンド、Dエンドを迎えることができる。Bエンドと同様、魔王討伐後にその場を去ろうとしたカイネであるが、ニーアの目の前でマモノ化し暴走してしまう。何とかカイネの動きを止めたニーアは、カイネに憑いているマモノであるテュランの指示に従い、カイネを救うために苦渋の選択を迫られる。この選択内容によって、CエンドとDエンドが分岐する。

  • Dエンドになる選択を選んだ場合、カイネを人間に戻すことと引き換えにニーア自身が消えることになるのだが、本当に存在が消える。すなわち、セーブデータごと消える。今まで何十時間もかけて育てたデータが綺麗さっぱり消えてしまうから、この選択を選ぶ際、システムメッセージで「本当によろしいですか」という確認が4~5回入るという徹底っぷりだ。
    この展開は旧作発売当時は非常に話題となり、斬新かつ鬼畜なアイデアとして多くのプレイヤーを色々な意味で泣かせた。

    カイネをどう救うか、あまりにも慈悲のない2択。
五周目(Eエンド)

「ver1.2」で追加された新エンド。Dエンドを選択しセーブデータが消えた後、もう一度NewGameからストーリーを進めていくと見ることができる。Eエンドについては後述。

…と、本作はストーリー展開が王道と見せかけてかなり捻ったものとなっており、またその魅せ方が非常にうまく、旧作の発売から10年以上経過した今日でも、「ストーリーが良いゲーム」などの話題では必ず名前が挙がる点が大きな特徴だ。

上質なストーリーを彩る、魅力的な登場人物たち

順番が前後したが、本作は登場人物が非常に魅力的だ。上述した良質なストーリーは、これら魅力的なキャラクターあってのものである。

  • 主人公ニーアの相棒ポジションである白の書。常にニーア周辺を飛び回りながらの軽妙な会話の掛け合いが面白く、退屈しない。

    白の書(左上)。本であるがよくしゃべり、コミカル。
  • マモノ憑きの女性カイネ。本作におけるキーパーソンの一人である。独特な露出度の高いファッションをしているが、これは肌を日光に晒す面積を増やすことで、自身に憑いているマモノの活動を抑えるためという理由がある。

    ver1.2のカイネは、グラフィック向上によりさらに美人に。
  • 実験兵器7号。非常に高い戦闘能力を有した兵器であるが、心優しい。口論が絶えない白の書とカイネの間の緩衝材にもなる。

    実験兵器7号。本作のマスコットポジション。
  • 不治の病に侵された主人公の妹ヨナは、ゲーム上では庇護される存在にあたるが、前向きで、兄の役に立ちたいといつも考えている。ロード画面で表示される彼女の日記は、クスリくるもの、心温まるもの、悲しい気持ちになるものもあり、プレイヤーの心を揺さぶる。

    ロード画面に流れるヨナの日記を読むのも、楽しみのひとつだ。

上記の仲間以外にも、村の双子の姉妹「ポポル」「デボル」や、仮面の街の住人である「仮面の王」「仮面の副官」、赤いカバンの船頭など魅力的なサブキャラクターが非常に多いのが特徴。良いストーリーには良いキャラあり、である。

仮面の王と副官。人気が高い。


完全に余談であるが、村の姉妹の妹「デボル」は筆者にとっての「全ゲームの中で好きな女性キャラTOP5」にランクインするほど魅力的。(ただしゲームの評価には影響させない)

双子の姉妹の妹デボル。

グラフィックは旧作と比較し大きく進化している

旧作「レプリカント」はPS3のゲームであったが、お世辞にもグラフィックは当時の水準で見ても良いとは言えず、「PS2.5」などと揶揄されていた。しかしながら本作「ver1.2」ではグラフィックが大きく向上。現行ハードに恥じない美麗な風景、人物が描かれている。本作はいわゆる雰囲気ゲーとしての性格もあることから、グラフィックの美しさがそのまま没入感に繋がるため、この改善は見た目以上にゲームの面白さを増しているといえよう。また、旧作では頻繁に起きていた処理落ちや熱暴走も、「ver1.2」では特に起きることがなく、快適なプレイが実現されている。

ニーアの村。グラフィックは大きく向上。

キャラクターの操作感がとてもよい

キャラクターのアクションは、ダッシュ、二段ジャンプ、ローリングなど一通り揃っており、またいわゆるスタミナもなく無尽蔵に動き続けられるため、キャラクターが思うように動かない、ということはほとんどない。逆に、空中で方向転換できたり、ローリングの飛距離が人間離れしているなどおかしな点は多々あるのだが、そういうものだと割り切れば特段違和感はない。また、EASYモード限定であるがオートモードという機能があり、敵の攻撃を自動回避し、近くの敵を勝手に倒してくれる。この機能が非常に便利で、かつ、ただ敵を殴るだけでなく魔法やジャストガードなども駆使した多彩な動きをしてくれることから、見た目にも楽しませてくれる。オートモードの存在は、上述した通り周回前提の本ゲームに非常にマッチしている。

★ゲーム史上稀にみる、すばらしいBGM群

「シナリオ」と並ぶ本作の大きな評価ポイントがBGMだ。多くのBGMにボーカルが入っており独特の雰囲気を醸し出しており、非常に名曲が多い。

中でも、「イニシエノウタ」「カイネ/救済」「魔王」などは非常に人気が高く、ニーアの村や海岸の街などの透明感のある曲も良い。本作の音楽は、インターネット上で時折行われているゲームBGMの人気投票などでも上位の常連であり、シナリオと並び、一度プレイしたら一生記憶に残るタイプの良質な曲がとても多い。

総じて、「キャラ」×「シナリオ」×「BGM」の相乗効果が、本作の人気たる所以であろう。

「ver1.2」における、大きな2つの追加要素

本作「ver1.2」は、基本的に旧作「レプリカント」と大きな内容の変化はなく、リメイクというよりはリマスターに近い代物であるのだが、大きな追加要素が2点ある。その追加要素は、どちらも非常に良質なものであったので紹介したい。

追加シナリオ「人魚姫」

青年期において石板を集めるフェーズで、ポポルから話を受けて発生。海岸の街の難破船を調査することとなる。難破船にいる少女のマモノが、マモノと知らずに優しくしてくれた海岸の街の郵便配達員の男性に愛情を抱く話である。このシナリオも、先に述べた各シナリオと同様に2周目ではマモノの声も含めた「裏側」が描写されるのだが、他のシナリオと比較して、より直接的に人間とマモノとの愛が描かれるため、その結末には涙を禁じ得ない。難破船の探索にはややホラー要素もある点もゲームとして面白い。

「人魚姫」のボスでありヒロインであるルイーゼ。
Eエンド

そして、「ver1.2」を語る上で絶対に外せないのが、このEエンドである。旧作プレイヤーが本作を購入した目的は、このEエンドを見るためであるといっても過言ではない。以下、さらにネタバレ注意だ。

Eエンドネタバレ(クリックで展開)
Eエンドは、本編におけるDエンド後、世界がニーアの記憶を失った後のカイネ視点で描かれる。まず特筆すべきは、カイネが操作できるという点。本編ではニーア以外のキャラクターは操作できなかったため、カイネや7号を操作したいというニーズは絶対にあったはずであり、それに見事に答えた形となる。
そして、Eエンドの内容そのものについてはここでは多くは語らないが、「ver1.2」を購入したプレイヤーであれば、周回にめげずに絶対にプレイしてほしい。元々Eエンドは、設定資料集の小説に記載されていた内容をゲーム化したものであり、筆者もその内容は知っていたのだが、いざプレイしてみるとすばらしい出来であり鳥肌モノであった。

また…あの夢を見た。
私は……何か大切なことを忘れている気がしていた……
折れてしまった剣を見る度、魔王との壮絶な戦いを思い出す。
ヨナという少女を救ったあの日から3年……
私は…やるべきことを、成し遂げたはず。
なのに、なぜ私は泣いていたのか…
あれから3年経った今も、あの日の疑問に答えを出せずにいた。

ついにきた!待望の、カイネが操作可能。

問題点

では、ここからは筆者の感じた本ゲームの問題点を述べていこう。

★いくらなんでも周回させすぎ

すべてのエンディングを見るにあたっての周回回数が多すぎる。

①少年期と青年期をクリアしてAエンドを見る(一周目)
②少年期はスキップ可能、青年期をクリアしてBエンドを見る(二周目)
③Cエンド、Dエンドを見るため、最低もう一度青年期をクリア(三周目)
④Eエンドを見るため、少年期を後半まで進める(四周目)

二周目を除きほぼ内容が変わらないにもかかわらず、あまりにも周回が多い。大して変わり映えのない展開をこれでもかというほど繰り返すこととなり、これに苦痛を感じないプレイヤーは少ないであろう。さらに後述の通り、移動の不便さがこの辛さに拍車をかけている。

せめて、旧作を既プレイの人向けに、Eエンドのストーリーは周回せずとも別途プレイできるなどの救済が欲しかった。現に、「ゼノブレイド ディフィニティブエディション」などのゲームにおいては、そのような措置がとられている。

ごくたまに入ってくる追加要素のため、気が抜けない。

★そもそも…。ゲーム部分全般の完成度について

本作、世間一般の評価は極めて高いゲームであるのだが、筆者の正直な感想としては、上記で上げた「キャラ」「シナリオ」「BGM」の3要素意外が悉く微妙な印象が否めない。こんなことを言ってしまっては元も子もないのだが、ハッキリ言ってしまえば、「ゲーム部分」が面白くないと感じた。

  • 戦闘は単調な割に、一部の敵の火力がやたらと高く、難易度Normal以上では油断していると意外にあっさりゲームオーバーになる。また、敵が防具などを身に着ける終盤ではやたらと固く、爽快感が薄い。全体的に大味。
  • 魔法弾のグラフィックは赤い球体であり(イクラと揶揄されることが多い)、この魔法弾を敵が飛ばしてくるのだが、その飛び方がやたらと規則的でどこかの弾幕シューティングゲームをやっているようで、違和感がかなりある。また、弾幕が張られる割にはガードでほぼ完封できてしまうので、あまり意味がない。

    弾幕シューティングよろしく飛んでくる魔法弾。楽しいかというと…。
  • お使い要素が多すぎる。シナリオで、クエストで、ひたすら町と町を行ったり来たりさせられることは非常に面倒だし、後述の移動の不便さも相まってストレスがものすごい。お使い要素だけでなく、たとえば、「ヤギから毛皮を10個集めてこい」というようなクエストでは、ヤギの毛皮のドロップ率がやたらと低く、ただヤギの皮を集めるだけの単調な作業にかなりの時間(20~30分)を使わせられた。
  • 行動可能範囲が狭く、ゲーム全体の世界観が総じてこじんまりしている。本作の行動範囲は、基本的に「ニーアの村」、北平原に隣接する3エリア、仮面の街周辺、海岸の街、石の神殿 くらいしかなく、すべてのストーリーはこの中で展開されていく。したがって、クエストの数が多くプレイ時間の大半はクエストクリアに駆けまわっていることもあって、「魔王」などという壮大なワードが出る割には、ストーリー全体がニーアの身の回りの問題を解決しているだけ感が強い。(一応これもストーリー上理由があるのだが、ゲームとしての楽しみとは別だ)
  • 時折、視点が変化し上空からの俯瞰視点や、真横からの視点のアクションでの操作に切り替わるのだが、あまりプラス要素に働いていない。

    時折入る横視点でのアクション。これといって面白くはない

★旧作の問題点は、ほぼそのまま継承されてしまっている

本作は、「ver1.2」の名の通り、リメイクでもリマスターでもなく、公式では旧作のバージョンアップ版という位置づけであるのだが、旧作において改善してほしかった点が、ほぼそのまま残ってしまっている点は残念だ。以下、詳しく見ていこう。

移動全般の不便さが際立つ

まず、本作には町と町を一瞬で移動する「ファストトラベル」の類はなく、主な移動手段は徒歩、イノシシ、船だ。徒歩は言わずもがな、移動手段として設けられているイノシシや船についても問題が多い。

  • イノシシは操作が非常に難しく、少し油断すると(というか、しなくても)すぐに壁に激突してしまう。
  • 船は使えるようになるのが中盤以降であるし、船着き場へのアクセスも悪い。村の図書館から船着き場までが地味に遠いし、仮面の街の船着き場は(秘密の入り口を使っても)町までやたら遠い。北平原の船着き場も立地が非常に悪く、ロボット山へのアクセスがまったく楽にならない。
  • その他、石の神殿、砂の神殿などもアクセスが非常に悪い。
  • エリアを挟まない移動も、ロボット山のトロッコエリアや、仮面の街におけるボートなどはかなりの時間泥棒である。後者は一応スキップできるが、ボートに乗ってからスキップ可能になるまでにわずかなタイムラグがあり、結局、移動に負荷がかかることは変わりない。

    プレイヤーのニーズをわかってはいる模様。
「石の神殿」と「砂の神殿」のギミック

石の神殿の箱を動かすギミックが、面倒な割に全く面白くない。「扉が箱で塞がれているため、箱を動かして扉を開けられるようにする」というパズル要素を狙ったものであろうが、そもそも簡単すぎてパズルの体をなしていないし、また、せっかく箱を動かしても、また来た時に箱の配置が元に戻っている。「箱をつかんで動かす」というのはゲーム性皆無の苦痛な作業であり、石の神殿に訪れる回数が多いことも相まって、非常に辛かった。

石の神殿の箱ギミック。不要。

 

また、石の神殿ほど訪れる機会が多くはないが、砂の神殿のギミックはさらに辛い。「各部屋の試練をクリアすることで次のエリアに進める」というものだが、「試練」の内容が行動制限系ばかり(つまり、「走るな」とか「ジャンプするな」とか)であり、これまた面白くない。

思うに、ゲームにおけるギミックは、①面白い または、②技術の向上に役立つ どちらかを満たしてこそ有用であるというのが筆者の持論だが、本ギミックはそのどちらにも該当しない。

幸い、青年期における砂の神殿は、クエストさえ無視すれば本編クリアのために必須ではないため、回避できることが救い。

月光層栽培の仕様が鬼畜すぎる

本作、主人公ニーアの自宅の畑で栽培をすることができる。栽培は、種や苗を植えて水をあげることで、リアル時間経過と共に作物が育ち、収穫することができる。
栽培はクリアにおいて必須ではないのだが、あるクエストで、特定の色の「月光草」の花を持ってくるというものがあるため、クエストコンプリートを目指すならば、一度は栽培に触れる必要がある。しかしながら、この栽培の仕様がやたら厳しい点は問題である。

  • まず、種を植えたり、水をやったりする工程が非常に面倒。まとめて種まき、まとめて水やりなどは当然のごとくできないので、1か所ずつ順番に「肥料」→「種」→「水やり」をすることとなる。
  • 種まきの順序にもうるさい。栽培を促進するための肥料は、種を撒く前に土に与えることはできず、肥料→種→水という順番は死守せねばならない。間違えて肥料投入前に種を植えようものなら、一度植えた種を廃棄して畑をまっさらにしないと肥料を与えることができない。
  • 順当に植えたとしても、リアル時間が経過しないと作物は育たない。そしてその時間は、モノによっては30時間だったり、50時間だったりと気の遠くなるような時間をかける必要がある。さらに、もし放置して枯らしてしまおうものなら、種を回収することもできず、それまでかけた時間が全くの無駄となってしまう。
  • 旧作で可能であったPS3本体の時間を操作することはPS4版ではできないため、基本的に、正攻法で育てるしかない。

    用事がありしばらくゲームができなかったため、この有様。さすがに厳しい。
使いづらい「ワードエディット」

本作、ワードエディットというシステムがある。敵を倒すと時々「ワード」と呼ばれるアイテムのようなものが手に入る。ワードを武器や魔法、体術などにセットすることで、ステータスに様々な付加価値をつけることができる。武器や魔法などにつけられる装備品と考えればわかりやすいだろうか。

しかしこのワードシステム、

・武器(武器で一律でなく、各武器ごと)
・魔法(魔法で一律でなく、各魔法ごと)
・防御
・回避

などあらゆるものにそれぞれセットすることができるため、良く言えばカスタマイズ性が高いのだが、実際はかなり面倒であり、使いづらい。せめて「おすすめをセットする」などの機能があればよかったのだが。結局、クリアするにあたりワードエディットをしなくても何とかなってしまうことから、途中でかなり適当になってしまった。

ワードシステム。雰囲気は良いのだがもう少し使いやすくしてほしかった。

 

一部素材の入手が困難

主に武器強化やクエストに使用する一部素材の収集が非常に困難で、作業要素が強い。

中でも鷲の卵、錆びたネックレス、くすんだ腕輪、止まった時計、各種宝石類などは本当に面倒。通常のプレイであればあまり意識して入手する必要はないが、武器の強化を目指していたり、トロフィーコンプをする場合はこの面倒さを考慮しておきたい。

なお、筆者は様々なゲームでこれまでトロフィーコンプをしてきたが、本作のトロコン難易度は屈指の難しさだ。(根気が必要と言った方が正しいか)

移動により会話がスキップされてしまう

前述の通り、主人公ニーアと白の書との掛け合いをはじめ、魅力的なキャラクターたちの会話を楽しむのが本作の面白さのひとつなのだが、この会話、エリアチェンジやイベントなどを挟んだ際に強制終了してしまうのだ。したがって、会話を聞き逃さないためには、会話が入ったら念のため立ち止まって最後まで聞いたり、戦闘中で会話が始まったら攻撃を止め、敵の攻撃をかわしながら最後まで聞く などの対策が必要となる。
例えば、会話を後から聞けるようにしたりなどの救済措置が欲しかった。

頻繁に入る会話が、本作の重要な楽しみのひとつだ。

「ver1.2」追加要素に関する不満

「ver1.2」追加要素である「人魚姫」「Eエンド」については、上述の通り概ね満足であるが、一部、気になる点もあった

二周目以降「人魚姫」はスキップできるようにしたかった

本作は何度も語っているように周回前提のゲームである。そして、追加要素である「人魚姫」は必ずクリアしないといけないため、一周あたりの追加時間が30分~1時間程度増えてしまい、周回の手間が増えてしまった。

せめて、二周目三周目は任意のサブイベントという形にするか、ボス戦まではスキップできるようにしてほしかった。

Eエンドルートのボリュームが少ない

Eエンドのストーリー(カイネ操作)のボリュームはもう少し欲しかった。少なくとも、もっと移動可能エリアを増やしてほしかったし、カイネが村の中に入れたり(Eエンドルートの状況であれば入れてもおかしくないはずだ)、仮面の街や海岸の街はどうなっているのかを確認できてもよかったはずだ。Eエンドルートでは村に入れないため、本編では村を経由しなければたどり着けない仮面の街や海岸の街にも行けないわけだが、本編のカイネは村に入らずとも別ルートで合流しているので、本編のカイネがどのようなルートでそのような移動をしていたかを確認できる意図を込めて、各街に入れるようにしてほしかった。

総評

本作は非常に極端な出来である。JRPG屈指のシナリオと演出、BGM。この点については文句なしの高評価である。他方、「ゲーム」として見た場合、移動の利便性・戦闘の爽快感などの点で粗も多い。寄り道的要素であるクエストのみならず、本編でもやたらとお使い要素が目立つこと、「お使い」と「移動の不便さ」が悪い意味での相乗効果をもたらしてしまっていること、アクションRPG以外の様々な要素を取り入れるチャレンジングな姿勢を見せるも、やや唐突で作品全体としての調和を生み出せていないように思えることなどの理由から、ゲームとしての評点はさほど高くないというのが正直な感想だ。

しかし、それらをすべてひっくり忘れさせ、「プレイして良かった」と思わせるだけの感動が、「Eエンド」にはあるため、良い点、悪い点が混ざって相殺しつつ、数値としてのレビュー点数を弾き出さねばならないのが心苦しいところであるが、点数以上に、「ハマる人にはめちゃくちゃハマる」ゲームであることは間違いないだろう。筆者も、本作の点数に関わらず、続編は漏れなくプレイしたいと思っているシリーズのひとつだ。

ジュドーさん
ジュドーさん
熱狂的なファンも多いシリーズ。旧作を既にプレイした方が、Eエンドのために周回の苦行を経て本作を購入する価値はあるかは難しい。筆者としては「かけた時間を考えるともう一声ほしかった」というのが正直な感想だ!


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