レビュー

【79点】【スーパーマリオブラザーズ ワンダー】万人向けの良作、制作陣のアイデア力に脱帽も…達成感に欠け、課題もある作品 評価・レビュー・感想

タイトル(かな) すーぱまりおぶらざーずわんだー
ハード switch
発売日 2023年10月20日
点数 79点(良作)
総評 ・アイデア満載のステージ群
・「ワンダー」な演出が面白い
・良くも悪くもライト向け
レビュー執筆時点 2023年10月25日
(Ver1.0.0)



序文

『スーパーマリオワンダー』は、2023年10月に発売されたスーパーマリオシリーズの最新作である。2Dマリオでは、WiiUで発売された「New スーパーマリオブラザーズ U」以来、実に11年ぶりの作品となる。筆者にとっても、本当に久しぶりの2Dマリオ体験であった。

実は当初は購入予定がなかったのだが、「メタスコアで93点、各メディアも絶賛」というYahooニュースの記事を見て、そこまで評判が良いのならば、と手を伸ばしてみることとした。

令和のこの時代に横スクロールの2Dアクションなど、もうアイデアが出尽くしているものだと思っていたが…いやはやなるほど、ゲームクリアまでを通して感心しっぱなしのアイデア溢れる作品だった。

久々の2Dマリオの出来はどうだったのか。本作の感想を主観モリモリでじっくりと述べていく。なお、筆者はオンラインプレイをしていない。本レビューは、ソロプレイによるものであることを述べておく。(書いていて寂しくなってきました)

ゲームの特徴:「ワンダー」な世界観

本作の舞台は「フラワー王国」。例によって、マリオ一行が楽しく過ごしているところにクッパがやってきて…といつも通りの展開でゲームが始まる。ただし今回はピーチ姫は攫われない。ピーチ姫も、マリオやルイージと並びプレイアブルキャラクターの一人である。

ピーチ。戦えるならもう攫われないでくれ

基本的には、ステージをクリアして次のステージへ進む、ステージ制の2Dアクションゲーム。ところどころ隠しステージや隠しゴールがあったり、ボーナスステージ的なものがあったりというのもお約束通りだ。

本作の大きな特徴は、その「ワンダー」な世界観にある。その最たるものとして、ワンダーフラワーによるステージ変化が挙げられる。ステージ内に隠されているワンダーフラワーに触れることで、ステージの構造が一変。テンポの良いBGMと共に、そのステージ固有の「ワンダー」な世界に招待される。それまで普通にプレイしていたのに、突如敵が歌い出したり、プレイヤーキャラクターが浮き上がって宇宙遊泳したり、スカイダイビングが始まったり、スライムになって壁や天井に張り付いたり…。プレイヤーを驚きと笑顔へ誘ってくれる。

すなわち、本作では、同一ステージが、いわゆる「通常」の状態と、ワンダーフラワーによる「ワンダー」なステージ変化という二つの顔をもつこととなる。これにより、単調になりがちな2Dスクロールアクションのステージに変化を加え、「このステージではどんなワンダーな体験が待っているのだろう」というワクワク感をプレイヤーに与えてくれる。それこそが本作の魅力のコアである。

ワンダーフラワーに触れ、突如現れた龍の背に。多彩な変化が見所

多彩なワンダー、多彩なギミック。驚くべきアイデア力

そして、本作のゲーム体験を通じて最も印象的だったのは、多彩なステージギミックの根幹を成す、制作陣のアイデア力だ。前述したワンダーフラワーによるステージ変化はもちろんのこと、通常時のステージギミックもバリエーションに富んでおり非常に豊か。既に2D横スクロールアクションのアイデアなど出尽くしたものだと思っていたが、人間の発想力は無限大であることに驚きを隠せない。

赤と青のスイッチを切り替え、動く床で進んでいくステージ


また、個々のステージ構成だけでなく、マップ全体の構成も良く練り込まれていると感じた。長めのステージをいくつかクリアしたところで、箸休めとして現れる「ちょっと一息」や「バッジチャレンジ」といった短めのステージも◎。
疲れたな、やめようかな…と思ったタイミングでちょうどよく出てくるので、よし、もうちょっとやるか!というポジティブな気分にさせてくれる。

とにかく、マンネリ感の打破と飽きさせないことに焦点を置いて、プレイヤーをとことん楽しませようという工夫が見られるゲーム設計に感心しっ放しであった。
(ただし…実際に「とことん楽しめたか」はまた別の話だ。ここでは工夫やアイデアそのものに純粋に感心をした、というポジティブ要素に過ぎないという点は強調したい。この点は後述する)

「おしゃべりフラワー」が面白すぎる

また、非常に面白かったのが、ステージに出てくる「花」の存在だ。これは前述したワンダーフラワーでなく、NPCとしての花、「おしゃべりフラワー」のことを指す。

おしゃべりフラワーは各ステージに点在しており、黄色っぽい花に目と口がついた外観で、プレイヤーが近くを通るとおもむろに喋り出す。そして、そのセリフや挙動のひとつひとつが、とにかく面白い。

基本的にはその場、その状況に合ったセリフを話すのだが、たまにメタ発言をしたり、やたらと悲惨な目にあったりと、プレイの最中にクスリとさせてくれる。
一例は以下のとおり。

  • 発見が難しいルートにいて、「こんなところによく来たね」と褒めてくれる
  • プレイヤーと共にスカイダイビングをするが、おしゃべりフラワーだけ着地できず落下していく
  • リフトに乗れず、足場へ置いてけぼりとなり「詰み」状態となったプレイヤーに「あれ?こんなところにいていいの?」と煽る
  • ワンダーフラワーによって大量出現した敵に踏みつぶされ絶叫する
  • 土管の上に咲いており、プレイヤーが乗ると「定員オーバーだよ」→土管が下に沈み落下し「だから言ったのに」と恨み言を吐く
  • マグマへ落下する

こうしたお遊び要素が、ソロで孤独にステージクリアをしているという感覚が薄れてゲーム全体が和やかになり、一種の清涼剤としての役割をこなしてくれる。

おしゃべりフラワーの存在が、本作をより面白くしている

新たな変身とバッジシステム

マリオ恒例の変身要素も見逃せない。
スターとキノコを除けば、今作は「ゾウ変身」「アワ変身」「ドリル変身」「ファイア変身」の4種類が存在する。

うち前3つは(おそらく)今作が初出であるが、どれも強力かつユニークで面白い。
特にアワ変身は、バッジと組み合わせることで無限ジャンプができたり、ステージによってはギミックを完全に無視したりなど仕様の裏を突いた遊び方もできる。

ゾウマリオ。鼻による攻撃と、水を蓄えステージギミックに作用させることができる


また、プレイヤーキャラクターの能力を強化する「バッジ」を1つ選択して装備することができる。2段ジャンプやフワッとジャンプのようなアクションを強化するものもあれば、落下の際に1度だけジャンプで復帰できるなどの生存力を上げるものもある。自分のプレイスタイルに合わせたバッジを装備することで、攻略に役立てることができる。

また、達人バッジと呼ばれるものもあり、ノンストップで自動ダッシュをする代わりに空中でジャンプができたり、透明になり敵に気づかれないが、プレイヤーも自キャラが見えなくなるといったピーキーなものも存在する。通常プレイでは使いにくいこともあるが、遊びの幅を広げてくれる面白い要素だ。

バッジにはたくさんの種類が。多様な遊び方が可能

全体的な難易度は緩め、ライトゲーマー向けな面が目立つ

さて、肝心のアクションゲームとしての遊びごたえだが、個人的な感覚としては、全体的に難易度は緩めだな、と感じた。

ステージの難易度を★の数で表す「むずかしさ」という指標があるのだが、★5でようやく遊びごたえがあるな、という印象だ。

しかし、繰り返しになるがこの辺りは個人的な感覚によるところが大きい。
X(旧Twitter)などで購入者の意見を見てみると、難しいと嘆く声も多くみられる。また、筆者にとってはただでさえ簡単に思える本作も、キャラクター選択でヨッシーやトッテン(ダメージを受けず、ノックバックもしない)を選択することで、更に難易度を下げることができる。

そもそもゲームデザインがいわゆるコアゲーマー向けのものではないと考えられるため、個人的に難易度が物足りないからといって、それが直ちに評価を下げる要因となるわけではない。

  • アクションゲームは苦手だが、マリオで遊びたい人
  • 普段ゲームをあまりしないが、久しぶりに遊ぶ人
  • 子どもを含む、家族でゲームを楽しみたい人

などにとっては程よい難易度で、楽しめるであろう。

ただし、ステージごとの難易度バランスや難易度の幅は全体的にもう少し見直してもよかった。ステージ1~ステージ6とゲームが進んでいくにつれての難易度変化が小さいことに加え、「むずかしさ」の★1~★4までの難易度変化もゆるやかで、ゲームが進んでいる感に乏しい。
ステージ構成やワンダーフラワーなどにより、難易度以外の面で飽きがこないような工夫がとられているのは非常に伝わるのだが、やはりゲームには達成感も必要。
そういった達成感を味わう体験が、本作はやや薄いと感じた。

ちなみに、腕試しステージと称されている「スペシャルワールド」が全7ステージ+αあるが、それはどれも程よい難しさで楽しめた。もう少しスペシャルワールド相当の難易度のステージがあると良かったと思う。DLCに期待したい。

…で、結局面白かったの?

面白かったです。それは間違いない。

ただ、面白さよりも「感心」の方が強かった。「よく考えられてるなあ」「工夫されているなあ」というのが第一にきて、面白さはステージによりマチマチ。ただこれは、前述の通りどれくらいの難易度を適正と感じるか、個人の好みによる部分が大きい。本作の用意されている難易度が丁度よいと感じるプレイヤーにとっては、良い評価となるだろう。

しかしながら、そうした個人の主観・好みを可能な限り排除して、客観的に考えたとしても、冒頭で述べたような「各メディア絶賛!満点評価!」と呼ばれるほど頭ひとつ抜けた傑作かといわれると、少々疑問符がつく。

やはり気になるのは、アクションゲームに不可欠である達成感に乏しいということ。それは、先ほど述べた難易度の幅が緩やかであることにも起因するが、他にも個々のステージ内で隠し通路などを見つけた際のご褒美がせいぜいコインと紫コイン(プラス、おしゃべりフラワーの褒め言葉)くらいで、発見の喜びに乏しい点も気になる。

同社の過去の2D横スクロールアクションと比較すると、SFCの「スーパードンキーコング」シリーズなどは、適度な難易度と発見の喜びを兼ね備えた、まさに傑作と呼ぶにふさわしい作品であった(開発はレア社であり任天堂ではないが)。

1994年の「スーパードンキーコング」、1995年の「スーパードンキーコング2」から実に30年近い月日が経過していることを考えれば、本作が見せた2D横スクロールアクションとしての進化は緩やかと言わざるを得ない。
アイデア面の感動は「すごい!さすが任天堂だ!」と感心させてくれるものの、ゲームとしての面白さについては、どうしてもあと一歩欲しいと思ってしまった。メディアのレビューとは少々意見が異なるが、これが筆者の正直な感想である。

総評

既に述べたように、とにかくアイデア力と工夫に感動する作品である。ワンダーな世界観は不思議さと派手さを兼ね備えており、プレイヤーに驚きや、今までのマリオになかった体験を与えてくれる。難易度バランスも、ターゲット層を考えれば納得できる範囲であろう。

一方で、プレイヤーに達成感や発見の喜びを与える要素はやや乏しい点は少々気になった。
隠し小部屋や天井裏、隠しゴールなどといった発見要素の数自体は多い。が、別ステージへと進める隠しゴールはさておき、隠し小部屋などはご褒美がささやかで、「せっかく見つけたのに」という気分になってしまう。
とはいえ、ご褒美がささやかなことは、逆に言えば見つけることの義務感から解放されるということでもある。このあたりは一長一短で、何を重視するかによるであろう。
多くの人が良いゲームだと判定するが、「傑作」判定するかは人によってかなり大きく分かれる。そんなゲームである。

ジュドーさん
ジュドーさん
良くできたゲームで、面白いです。それは間違いない!


COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です