タイトル(かな) | ぼくじょうものがたりおりーぶたうんときぼうのだいち |
ハード | Switch |
発売日 | 2021年2月25日 |
点数 | 29点 |
総評 | ・長すぎるロード時間 ・頻発するフリーズ ・ゲーム部分に光るものはあるも、上記2点をリカバリーできない |
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序文
牧場物語。主に任天堂ハードで発売される、プレイヤー自ら牧場主となり広大な土地を開拓し牧場を運営・拡大していくゲームだ。20年以上続くシリーズであり、30作近い関連作品が発売されているビッグタイトルである。
本作はシリーズ最新作として2020年2月に発売。「あつまれ!どうぶつの森」や「天穂のサクナヒメ」といった自然をテーマとした作品のメガヒットが近年記憶に新しく、本作へのプレイヤーの発売前の期待も自然と高くなったことは言うまでもないだろう。
公式サイトにも記載があるように、本作は「自分だけのスローライフを楽しもう」というテーマのもと作成されており、ゆるやかな画風のもと描かれるキャラクター、のどかなBGMなどプレイヤーに癒しを与える要素が満載である。筆者も、そのような癒しを求めて本作を購入した。
しかし本作のプレイを通じて筆者が得たのは、癒しではない別の「ある感情」であった。本レビューでは、そんな「牧場物語 オリーブタウンと希望の大地」の評価点や問題点を余すところなくレビューしていく。例によって、ネタバレ注意である。
評価点
ゲームコンセプトは良い
本作はプレイヤーが、昔祖父が牧場を経営していたという町に引っ越してくるところから始まる。町と牧場は隣接しており、プレイヤーは牧場(とはいっても、最初は単なる荒地)を運営しながら様々な資源を生み出すことでさびれた観光地である町にもうるおいを与え、牧場の発展を通じて町をも発展させ、町に住む人々との絆を深めることができる。
町に住む人々のほとんどには固有の名前とグラフィックが与えられ、個別に好感度が設定されている。好感度を高めたキャラクターとは親友となったり、結婚することもできる。まさにスロー「ライフ」。人生そのものを本ゲームで経験することができるのだ。
牧場を開拓していく喜び
プレイヤーには広大な土地が与えられる。
土地には草が生い茂り、木も生え、朽ちた小屋があり…と荒れ放題である。プレイヤーはこの土地にテントひとつで生活するところからゲームが始まるのだ。
斧で木を伐採し、材木を作る。作った材木で朽ちた小屋を直す。草を刈り、クワで土地を耕し、種を撒いて作物を作る。作物を作ったお金で牧場を開拓することもできるし、斧やクワといった道具をアップグレードすることもできる。
もちろん、牧場だからといって作物を作ることにこだわらなくてもよい。釣りに生きても良いし、手なずけた鶏や牛などの動物の世話をして酪農をしてもよい。鉱山から宝石を採掘し一攫千金を狙ってもよし、粘土からレンガを作ってもよし…と自由度満載だ。
プレイヤーには一日に活動できるスタミナ(体力)が設定されており、行動できる回数に限界がある。したがって、どこにスタミナを割くか、自分の作りたい牧場の姿をイメージしながら取捨選択していく必要があり、そこにゲーム性がありなかなかに面白い。
そう、いいところもあるのだ、いいところも。しかし…。
問題点
ここからは筆者の感じた本ゲームの問題点を述べていく。
開始数秒、筆者を襲った「嫌な予感」
開始直後、オープニング~チュートリアルで、早くも筆者は嫌な予感に襲われた。
- オープニングのテンポが悪い。説明文は決定ボタンを押してもスキップができないし、最初の「ただバイクで走る時間」がやたら長い。
- 最初の主人公の情報の入力があまりにも不自然。町長が現れ「君の名前は何かな?」まではまだいい。唐突に「君の誕生日はもしかしてアレ!アレじゃないかな、アレ!」と言い出し誕生日を入力させられる。そしてその後、主人公本人を目の前に「男の子…あれ、女の子?」といい、こちらに性別を入力させるなど強引すぎる展開。これなら、普通に最初から入力させる方式でよかった。
- キャラクタークリエイトでは顔パーツを変えるたびに読み込みのため一瞬顔が消えるので、どこがどう変わったのかがわからない ↓参考動画
- やたら不親切なチュートリアル。「クワで地面が耕せるぞ!」→クワの場所がわからず、筆者はゲーム内時間で数日、わからないまま過ごした。実際は最初から入手しており、持ち物とは別の「道具袋」に入っていた。
下記はキャラクターセレクト画面を撮ったもの。顔の変化が分かりづらい。
開始数秒で処理落ち
オープニングが終わり、自由に行動できるようになった直後、画面がガックガック揺れる。ただ歩くだけで完全に処理落ちしており、令和の最新作でありながらロースペックのパソコンでゲームを無理やりプレイしているかのようなコマ送りに遭遇することとなった。フィールドには春の季節を表す桜の花びらが舞っており、それも処理落ちの原因となっているようである。長くプレイするゲームにおいてこの処理落ちの不快感は致命的であり、画面がカクカクする度にプレイヤーのテンションをガタ落ちさせてくれる。
店の定休日はいらない
牧場に隣接する町には、道具屋、雑貨屋、大工、食材屋、レストランなど様々な施設があるが、各施設に営業時間と定休日が設けられている。この定休日システムが非常に面倒でストレスフルである。こんなところはリアルに寄せる必要はない。年中無休にするか、またはすべての店を日曜定休にするなど統一させるべきであったと思う。そうすれば、プレイヤーも「日曜は鉱山に行く日にする」などあらかじめ決めることができ、店の定休日に振り回されることもなくなる。
住民に魅力が薄い
住民はフルボイスでなく、パートボイス(話しかけた時に「やぁ!」とか「oh!」など一言だけしゃべる)しかついておらず、キャラクターデザインも相まってイマイチ魅力に欠ける。結婚システムなどがあるものの正直結婚したいと思えるような人もおらず、そもそも後述するロード時間のせいで会いに行くモチベーションが湧かないため接点を持ちづらい。
致命的な問題点 異常なロード時間の長さ
これまで述べたすべての問題点とは比較にならないほど、断トツでこの点が不満である。本作は異常なほどロードの頻度が高く、またひとつひとつのロード時間も非常に長い。ある一部分を切り抜けば、誇張抜きでプレイ時間よりロード時間の方が長い。具体的には…
- タイトル画面からゲームを開始するときに30秒ほどのロードが入る
- ゲーム中、暗転の発生する移動(牧場と町の行き来、建物に入るなど)は基本的にすべてロードが挟まれる。そしてそのロード時間も非常に長い
特に1日1度だけ我慢すればよい前者とは異なり、後者の「移動の度にロード時間が挟まれる」というのはプレイ中常についてまわる問題である。本作は、町と牧場の往復や、町に着いた後も道具屋や雑貨屋など多くの建物へ出入りする(というか、好感度上げのために毎日すべての建物に出入りする)ゲームデザインのため、このロード時間の長さは本当に致命的なのだ。
以下の動画は、自宅から雑貨屋にいって、買い物をし、帰るという一連の流れを動画に収めたものである。いかにロード時間が長いか、理解してもらえるはずだ。
更に、ロードが長い割にやたらとエリアジャンプを必要とするゲーム設計をしており、イライラの増幅に一役買っている。
- 例えば市役所。市役所には掲示板があり、住民からの納品依頼が掲示されている。依頼内容はゲーム内時間で1日1回更新されるため、いわゆる日課クエストのような位置づけであるのだが…。市役所の中に入らないと「今日の依頼」が確認できないため、牧場→町→市役所(依頼確認)→町→牧場(アイテムボックスからアイテム確保)→町→市役所でアイテム納品というルートをとることとなり、その度に長時間のロードが挟まれる。まさに地獄。
- 住民には1日1回、会話とプレゼントで好感度上げをすることができる。したがって、すべての建物を巡り、すべての住民と会話をしたくなるが、前述のロード時間のせいでその作業が非常に苦行。
ロード時間が長いならば、せめてメニュー画面から直接依頼を確認したり、町から牧場にショートカットで戻れたりするなどしてプレイヤーのストレスを減らす工夫はできたはずだ。しかしそのような便利機能は一切なく、むしろストレスを増やす要素ばかりが積み重なっている。
そもそも、2021年発売のゲームで、エリアジャンプをするだけでこれほどのロード時間を要するなど正直考えられないレベルである。
そしてこれらの結果何が起きるかというと、長いロード時間を回避するために、プレイヤーはなるべく町での行動は最小限に抑える。モノをまとめ買いし、住民とのコミュニケーションを拒否し、自分の家(=牧場)に引きこもって農作業に没頭する。プレイヤーが世捨て人となってしまった結果、「町を発展させる」というゲームコンセプトの崩壊がそこにあるのだ。
ロード画面がシンプルすぎる
そのようなわけで、プレイヤーはプレイ時間の大半をロード画面を眺めて過ごすわけであるが、そのロード画面も異様に簡素であり、無地のベージュ柄に右下に鶏と「LOADING…」の文字があり、中央に他のユーザーが撮影したであろう写真がランダムで表示されるのみ。素朴を通り越して手抜きでは?と疑わざるを得ないほどシンプルである。
しかも、表示される他のユーザーが撮影した写真も、やたらと同じ写真ばかり表示されるためロード中の暇つぶしにもならない。また、けっこうな頻度でネタで撮影したであろうキャラクターの顔や尻のアップなど不快な写真も散見され、そのような写真が連続で表示されると目も当てられない。(ネット機能をOFFにすれば一応回避はできるが)
ちなみにネット機能をOFFにすると、より一層シンプルなロード画面になる。
頻発するフリーズ
極めつけは頻発するフリーズである。本作はロード中にフリーズし、ゲームが進行不能になることが頻発する。数時間セーブしないでフリーズした時の失望たるやとんでもなく、プレイヤーはフリーズの恐怖におびえながらこまめにセーブし、あとはひたすら祈ることとなる。そもそものロード時間の長さも相まってフリーズしたことにしばらく気づかないことも多く、筆者も「ロード長いなあと思ってたらフリーズしていた」ということが数度あった。ロード時間の長さは仕様と押し切ることができなくもないが、もはやフリーズ頻発ともなると商品としてどうなの?というレベルであり、未完成のまま見切り発車でリリースしたのでは?という疑念すらもたれる。
その他、細かな不満点
- マップ画面が見辛すぎる。マップに相当するものかと思いきや、自分の現在地もわからない。そのくせ住民の現在地は見られるが、ただそれだけ。その住民の現在地も、顔アイコンしかわからないので慣れるまでは誰が誰だかよくわからない。またマップ上ではどの建物が何屋かも表示されていないので、建物の外観から判断するほかないが、覚えるまで無理である。
- アイテムを拾ったり、草を刈ったりといった作業の判定がシビアすぎてストレスが溜まる。しっかりと対象物の方向を向いているつもりでも拾うコマンドが出てこない。
雑記
そもそも現代人は忙しい
なぜ昨今、スローライフを謳うゲームがヒットしているのかを考えてみる。そもそも現代人は仕事に学業にと非常に多忙である。また、プライベートでもネット社会の発展により常に人との繋がりが密となり、「のんびりと自分の時間を過ごす」ということが少なくなっていることから、気の休まる時間が少ない。したがって、のんびりと作業に没頭し、ゆるやかに他人との繋がりを維持しつつも自分の時間を過ごす「スローライフ」を疑似体験できるゲームがヒットしているのだと筆者は考える。
したがって、ユーザーは「多忙の中、少ない時間を縫って」ゲームをしているわけであるから、ロード時間の長さや、不必要な不便さ(世界観を演出するための必要な不便さもあるが、本作の場合はそれに該当しない)はなるべくカットし、牧場物語という世界への没入感を演出すべきであるのだが、本作はそれができていない。プレイヤーはロードの度に時計を見てしまい、忙しい現実に引き戻され、フリーズで脱力してしまう。本作のパブリッシャーは、プレイするユーザーの姿をもっと明確にイメージするべきだ。
ユーザーの求めるスローライフはそうじゃない
結局、筆者はこのゲームをクリアすることはできなかった。レビュアーたるものしっかりとクリアするまでプレイしたうえでレビューをすべき、というのも正しい意見であろう。しかし、「プレイが苦痛でクリアするに至らない」というのもまた正直ないちレビュアーとしての感想であり、度重なるフリーズ、過剰なロード時間ですっかり心が折れてしまったのだ。「最後までプレイすれば面白い」ゲームだとしても、最後までプレイしようと思わせなければ意味がない。筆者が経験したかったのはゲームを通じて得られるスローライフ体験であり、ロード時間にマンガを読むことにより得られるスローライフではないのだ。
総評
惜しいかな、ゲーム部分に光るものはあるものの、ロード時間やフリーズ、UIなどゲームの本筋以外の箇所において大幅な減点となってしまった。オリーブタウンと希望の大地が筆者に与えたのは、超長時間のロードとフリーズによる絶望であった。今後アップデートなどで改善されることが強く望まれる。
【楽天ブックス限定特典】牧場物語 オリーブタウンと希望の大地(【メール配信】フェリシアのエプロンドレス(『牧場物語 はじまりの大地』より)ダウンロード番号 オリジナルトートバッグ) 価格:3,630円 |