レビュー

【82点】【ファイアーエムブレム エンゲージ】戦闘の面白さはシリーズ最高クラス!育成面に難点あるも良作! 評価・レビュー・感想

タイトル(かな) ふぁいあーえむぶれむえんげーじ
ハード Switch
発売日 2022年1月20日
点数 82点(ぜひおすすめしたい)
総評 ・戦闘はシリーズ随一
・育成要素とUIがマイナスポイント

序文

シミュレーションRPGの金字塔であるFEシリーズ。筆者が前作「風花雪月」をプレイしたのが割と最近だったため、その記憶も強く保持したまま本作をプレイすることができた。いやはや本作、非常に面白かった。不満点もあれど、戦闘の面白さはシリーズ随一ではないだろうか。
本レビューで、しっかりとその良かった点、悪かった点を紹介していく。なお重要なネタバレ箇所は非表示にしているが、十分注意されたし。

戦闘

(良い点)戦闘の面白さはシリーズ最上級

戦闘の面白さは、個人的には「風花」を大きく上回り、シリーズ随一であると感じた。

新システム「紋章士」とのエンゲージシステムは非常に良く出来ている。紋章士との組み合わせにより各ユニットの性能が大きく変わるので、組み合わせを見つける楽しさがある点が良かった。また、雑に指輪を装備させるだけでなく、常時発動する「シンクロ」と、任意で数ターン発動できる「エンゲージ」と2段階設けられている点も良い。エンゲージをどのタイミングで行うかで戦略性が生まれるからだ。

エムブレムエンゲージ!

また、戦闘スタイルという区分も良かった。スタイルの差により兵種の色が濃くなるし、スタイルによって紋章士のスキルにボーナスがつく点もユニーク。特にスタイル「連携」のチェインアタックは良い要素で、防御の高いユニットや回避の高いユニットに対しても一定の命中率で半固定ダメージを与えることから、防御や回避を盛った1ユニットで無双をするという従来の強力な選択肢に一石を投じている。

全体の難易度としてはやや高めで、しっかりと歯ごたえのある戦闘を楽しめた。筆者は1周目ハード→2周目以降ルナという流れでプレイをしたが、初見のハードもそこそこの難易度があり、特に終盤では敵の命中や回避が上がってくることもありなかなかの苦戦を強いられた。「ファイアーエムブレム 手ごわいシミュレーション」の面目をしっかり保っている。時間を忘れること請け合いだ。

戦闘は戦略性が高く、過去作と比較しても面白い。

(良い点)戦闘テンポ&戦闘アニメ

それから、戦闘時に流れるアニメーション。これは非常に見応えがあって楽しめた。
今回は紋章士の存在があることもあり、戦闘アニメーションにはかなり力が入っている。必殺発生時のド派手な表現は必見。しかもそこそこテンポも良いので、ONのままでも十分なスピード感だ。

戦闘アニメーションはド派手。見ごたえ十分


とはいっても長くプレイしているとアニメーションをOFFにしたくなってくるのだが、ここで特筆したいのが本作の戦闘テンポにかける情熱のすさまじさだ。

アニメーションOFFは当然として、ワンボタンで敵ターンのスキップ、格闘などの長めの攻撃モーションのスキップ、エンゲージシーンのスキップ、果てはボタンを押すことすらせずにAI行動のオートスキップまで用意されており、ストレスフリーな戦闘に対する並々ならぬこだわりを見せている。これは他社の作品ではなかなか見られないこだわりであり、非常に嬉しいものである。

おかげで戦闘のやめ時が見つからず、ひたすらゲームプレイを続けてしまう中毒性を生み出している。

(悪い点)やや大味な難易度調整

少々気になったのが、高難易度(特にルナ)における難易度調整の仕方だ。
増援という形で後出しで飛行ユニットをモリモリ出して、物量で攻めるという難易度調整の方法は個人的にあまり好きではなく、この点はマイナスであった。

物量を増やせば、そりゃ確かに難しくはなるのだが…。シミュレーションRPGという「枠」で見れば、与えられた条件の下で駒を動かして勝利する、いわば詰将棋のようなゲーム性こそがその醍醐味である。前置き無しの増援はその前提をぶち壊してくるので、ゲームを面白くしているとは言い難い。

出撃ユニットや紋章士を選ぶところからプレイヤーにとっての「戦闘」は始まっているのに、変な増援の出し方によってそこでかけた時間が無駄になってしまうというやり方はよくない。結局リセットしたりして、増援ありきの編成で組みなおしたりして…結局こういうのは「知ってる」か「知っていない」かで変わってしまうので、それって健全な難易度調整と言えるのか?と疑問を抱く。

その意味では、難易度ルナでは敵のAIが変わったというのは良かった。難易度による変化は、そういう路線で行われるならば望ましい。敵のAIが変わるとか、敵の保有スキルや武器が強くなるとか、初期配置されている敵の数が多いとか。事前のブリーフィングで対応可能な方法で難易度を上げる方面ならば、より満足度が高かった。

総じて戦闘については、悪い点を差し引いても十分におつりが来る面白さといえる。「トライアングル ストラテジー」も面白かったが、それに勝るとも劣らない、素晴らしい出来栄えであった。

育成

本作は育成面も「風花」から大きく変更されている。これも良い点悪い点どちらもあるが、筆者のポジションは、トータルで見ればやや批判的だ。順に見ていこう。

(良い点)兵種変更が容易

兵種の変更は、同ランク(基本→基本 or 上級→上級)への変更はチェンジプルフ、基本から上級への変更はLv10+マスタープルフが各1つあれば足りるため簡単な点が良かった。

特に、上級から別の上級へのクラスチェンジは、対応する基本兵種を上げ直さなくても容易に変更できるため、「このキャラをこの上級兵種にしよう」と思った際、まずは適当な上級兵種に上げて、そこからチェンジプルフで横スライドできる。この辺りのハードルの低さは好印象であった。

兵種変更のハードルが低い点は◎

(良い点)紋章士からのスキル継承

上述の通り、本作は紋章士の指輪を装備することで彼らの力を借り、様々な強力なスキルを使用することができる。そして、SPと呼ばれるポイントを使うことで紋章士からスキルを継承することができ、継承したスキルは紋章士の指輪を装備せずとも使用することができる。このスキル継承に類似したシステムは他作でもあったが、紋章士からの継承スキルは過去作のそれと比べてもかなりユニークなものが多いので組み合わせを考えることが楽しく、考える楽しみをプレイヤーに提供してくれている。
ただしこの点は問題もある。それについては後述する。

(良い点)固定成長システム

本作は「固定成長」「ランダム成長」の2つの成長方式が存在する。
(1周目はルナ以外はランダム成長、ルナは固定成長がそれぞれ強制。2周目以降は選択可能となる)

ランダム成長は恒例の成長方式で、レベルアップの際に各パラメータが上昇する確率が定められており、その確率により能力が上昇していく。
一方、固定成長は、同様の確率が成長値として内部的にストックされており、その成長値が100を超えたときにそのパラメータが1上昇する。

ランダム成長は、極端な話「リセマラ」すれば能力の厳選が可能で、本来そのユニットが想定される性能を逸脱した育成が可能であった反面、運が悪ければレベルアップしてもほとんどステータスが上がらないキャラクターが生まれる(いわゆるへたれ)可能性もあるという難点もあった。

固定成長はこうしたランダム要素を排除しているので、開発が想定したそのキャラのユニット性能に沿った成長を見せ、キャラクターの個性を十分に堪能することができる。

筆者としては、育成の自由度よりもユニットがもつ個性を重視したSRPGの方が好きなので、この固定成長方式の採用は歓迎すべきものであった。
今後もぜひこの固定成長方式は採用し続けてほしい。何ならノーマル・ハードでも1周目から選ばせてほしいと思っている。

(悪い点)ユニットバランスが悪く、性能格差が大きい

不満点の筆頭に感じたのがこのポイントだ。本作、DLCキャラ含め40ユニットもいるのは素晴らしいのだが…強ユニットと弱ユニットとの性能格差が大きすぎる、またはほぼ上位互換のキャラクターがいるなどしており、個性を確立しきれていない。

  • 初期兵種がマージかつ、初期能力値が明らかに魔法使い寄りなのに、その後魔力がまったく伸びず前衛寄りの成長を見せるユニット
  • 恵まれた初期値とトップクラスの成長率により他の歩兵ユニットをほぼ食ってしまうほどの強さを持ったユニット
  • 個人スキルや専用兵種の固有スキルの性能と、パラメータが噛み合っておらず性能を活かしきれないユニット

他にも色々あるが、総じて強ユニットと弱ユニットがハッキリ明暗分かれており、のみならず個性も埋没してしまっているユニットが多くいるので、「みんな違ってみんないい」感を出せていない点が残念なところだ。

多くの歩兵ユニットが彼の陰に隠れてしまう

「〇〇には××といった使い道がある」「〇〇は強い」など人の数だけ意見もあろうが、もっと個人スキルや専用兵種スキルを尖らせ、いわゆる「死にスキル」がないようにし、ユニットごとの個性を際立たせてほしかったというのが筆者の正直な感想だ。キャラデザが良いだけ余計に。

さらに、本作は傾向として、初期の仲間キャラよりも途中加入のキャラクターの方が強い傾向にあり、この点もバランスが悪いと感じている。
この辺りは正直難しい問題で、育成の自由度が高いゲームでは初期加入キャラの方が強くなりやすく、途中加入キャラは(加入後の自由な育成幅が相対的に狭いため)出番が少ないというのはSRPGの問題点あるあるだが、本作はそれへの対応策のつもりか、中盤~終盤加入のキャラクターの一部が非常に高い初期値を持っている。また、SPもまとまった数を最初から持っている。中盤~終盤加入のキャラも使って欲しいという粋な計らいであろうが、いささかその辺りのバランスのとり方が雑で、逆に初期加入キャラを食いすぎてしまっている点がいただけない。

(悪い点)育成資源の少なさが際立つ

また、本作はキャラクター育成に要する種々の資源(お金、経験値、SP)がかなり入手し辛い傾向にあり、前述のユニット格差を広げてしまう要因となっている。

  • 難易度ルナでは遭遇戦の発生が極端に少なく、経験値が入手し辛いので、たくさんのユニットを育てて色々試すということが難しい。
  • 入手できるSPとスキルの継承に要するSPとのバランスがとれていない。普通に育成をすると、よく使うキャラクターでもSPの入手量は(きちんと測定していないが)4000~5000程度。その一方で、習得に5000ポイント以上のSPを要するスキルなどもザラにあり、「色々試して最適解を見つける」ということのハードルが高い。無料DLCの「井戸」で多少改善はされたものの、井戸で入手できるアイテムは運要素が大きく、歪なバランスとなっている。
  • SPは振り直しできず、一度スキルを習得したら消費されてしまうことも、「色々試す」ことの難しさに拍車をかけている。せめて振り直しが可能なシステムであればここまでの状況にはならなかった。
  • お金の入手手段に乏しい。各国への投資などにお金を使ってしまおうものなら、すぐに底を尽きてしまい武器の強化などができなくなる。初見プレイではそこに気づかず罠にかかりがち。

以上の要因により、特にハード~ルナでは、「使うキャラと使わないキャラを明確に決めて、使うキャラの育成方針をあらかじめ決めて、資源を集中的に与える」ことをせざるを得ない。そうすると、キャラの育成格差がどんどん広がっていってしまって、一度戦線から置いて行かれたキャラが活躍の機会を得ることが難しくなってしまう。折角のキャラ数にも関わらず、ここは非常に残念。

もちろん経験値等の資源が無限に得られてしまってはゲームバランスが崩壊してしまうが、そもそも戦闘に出撃できるキャラ数の上限が決まっているわけなので、別に全キャラ育てさせてくれてもいいじゃん、と思ってしまう。例えば進行状況ごとにキャラクターのLv上限を決めておくとか、そういう形のバランスのとり方をとれば、色々なキャラ・色々な戦術を使って存分に本作を堪能できるのに、現状それをしたければNew Gameでゲームをやり直さないといけない。余りにも勿体ない。

BGM、シナリオ

BGMは耳に残るものが多く、好印象。ソラネルのBGMは癒されるし、戦闘BGMも熱くて盛り上がる。

シナリオについては、そもそもFEシリーズにそんなに精緻で重厚なシナリオを求めているわけではないので、大きな驚きもなくいつも通りだ。ただし、シリーズ伝統の「戦争の無常さ」の表現はかなり控えめ。テンポ良くポンポンと進んでいくのだが、軽さが目立ってしまう点は少々気になった。

以前別のゲームのレビューでも話したが、SRPGは各戦闘の導入部分が気分を盛り上げる重要な要素だと思っているので、シナリオが軽いとその点が弱くなる。

あとは、相変わらずだが主要人物(王家の人々)以外の仲間はストーリーから完全に置いてけぼりでイベントシーンにも出てこないので、その辺りをどう考えるかはプレイヤー次第である。個人的には壮大な物語の割にショボくみえてしまうので、あまり好きではないのだが。

自由行動

ソラネルでの自由な散策および、戦闘終了後の散策が用意されている。散策は前作「風花」より大幅に簡略化されており、それが良い方向に働いている。

「風花」の散策は同じ作業の反復要素が強く、しかしやらざるを得ないということでプレイヤーに大きな負荷がかかっていた。本作もその要素は引き続きあるのだが、ソラネル散策でどうしてもやりたいのは動物からのアイテム回収と井戸くらいで、残りの要素はある程度割り切って無視してしまってもゲーム進行には大きく影響しないので、負荷は少なめ。ただし筋肉体操だけは許されない。あれだけは本当に面倒臭い。
戦闘後散策は、仲間全員に話さなくても絆のかけらの回収は自動で行ってくれる点が◎。

それから細かいところでは、鍛錬の間での最初の名乗りをスキップできないことや、紋章士の間での「指輪磨き」がやや気持ち悪いことあたりは気になったところである。

面倒な筋肉体操。しかし効果は高い。

UI

UIはイケてない。FEシリーズはUIがイケてないことが多い

  • 最も気になったのは紋章刻印で、最初に紋章を刻印したい武器を選んで、その後対応する紋章を選んで…という流れになるのだが、これがわかりづらい。
    まず最初の画面で紋章と刻印効果、現在刻印されている武器の一覧を出して、その後どの武器に刻印するか、を選ばせた方が感覚的。
    プレイヤー側としては刻印効果なんていちいち覚えていないので、最初に「どの武器に刻印するか」を聞かれても困る。
  • 紋章刻印が現在どの武器についているのかが分かりづらい。
  • 身支度で装備の重さを把握するときに、ワンボタンを経ないといけないため、わかりにくい。重さは重要なステータスなので、最初から見られるようにしてほしい。
  • 「身支度」で紋章士の指輪を付け替えできない。身支度の中ですべて完結するようにしてほしかった。
  • スキル継承の画面で自キャラのステータスを確認できない。どのステータスを強化するかの参考にしたい。

UIは明確に本作の良くないポイント。大幅に改善の余地がある。

紋章刻印の使い辛さは異常

総評

戦闘は面白いの一言。それだけで全ての不満要素にお釣りが来る良いゲームだ。FEシリーズのどこに重きを置くかは人によって異なるが、個人的には「風花」より評価が高い。その一方で不満だったのが育成環境の不自由さで、引継ぎなしのゲーム設計にも関わらず「やり直し」や「色々試す」ことができない点はマイナス。またUIもマイナスであった。この辺りをしっかりと整備することで傑作となり得た良作。そんな印象のゲームだった。

ジュドーさん
ジュドーさん
バトルはFE屈指の名作!シリーズファンならマストバイの1本だ!

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