レビュー

【79点】【ファイナルファンタジー16】ゲーム?映像作品?「見せる」ことに特化したナンバリング最新作 評価・レビュー・感想【FF16】

タイトル(かな) ふぁいなるふぁんたじー16
ハード PS5
発売日 2023年6月22日
点数 79点(良作)
総評 ・「見せる」「魅せる」に特化した映像作品
・圧倒的な映像美
・こだわりを押し出しすぎてマイナス面も

序文

ファイナルファンタジー16(FF16)は、2016年発売の「15」以来、約7年ぶりとなるFFシリーズのナンバリングタイトル。発売前の公式の宣伝映像では「画面が暗い」といったネガティブな意見がインターネット上で散見された本作だが、蓋を開けてみれば楽しむことができた。

このあたりの「事前の評判が悪いが、いざ発売すれば面白かった」というのはFF7リメイクでも通った道なのだが、こと本作については、そもそも詳細なレビューが少ないという声もインターネット上で散見される。

そのような声が見られる理由として、「FFブランドの注目度の高さ」というのも挙げられるだろうが、個人的に感じたのは、本作は意外とレビューしにくいゲームであったということだ。作品としては凝っているが、ゲーム性はシンプルなので、感想もまたシンプルになりがちで、その結果「詳細なレビュー」が生まれにくい環境にあるのではないかと感じている。
本レビューでは、そんなファイナルファンタジー16(FF16)の面白かった点、残念だった点につき、忖度なしにレビューしていく。
なお、重大なネタバレ箇所については可能な限り非表示にしているが、記事の閲覧の際は十分に注意いただきたい。

ファイナルファンタジー16(FF16)は「映像作品」に近い

プレイした方の大半が感じたことであろうが、本作は、ゲームというよりも「観る」作品としての性格が強い。映像作品に片足を突っ込んでいると言っても良いだろう。

基本的なゲーム進行は、マーカーからファストトラベルしてイベントシーン閲覧、少し移動してイベントシーン閲覧、戦闘が入ってイベントシーン閲覧…の繰り返しである。

各フィールドそのものはそれなりの広さはあるが、オープンワールドゲームではないため、いわゆる探索要素はほとんど無い。したがって、探索をしながらマップを埋めていくといったゲーム体験はあまりない。

戦闘はアクション系であるが、難易度は低めで、サポートアイテムやシステムも充実しており、まず詰むことはない。また、ボス戦闘ではプレイヤーの操作を介さない(あるいは、ごく簡単な操作のみの)シネマティックな演出が多用されており、戦闘についても「魅せ」を重視した作りになっている。

つまり、本作は物語を楽しむことが主要なゲーム体験であり、それに付随する移動や戦闘といった諸要素はスパイスに過ぎない。
それが良いか悪いかについてはここでは一旦述べない。とにかく、そういう作りになっているゲームであるということを最初に述べておく。

シナリオを楽しむゲームだ

シナリオ:掴みは最高だが中盤以降にかけて納得感に欠ける

導入は見事の一言

シナリオは全体的に暗めかつシリアスな雰囲気で進行していく。特に再序盤(体験版の範囲)の引き込みは見事の一言で、主人公クライヴの少年時代の悲劇を追体験することで、プレイヤーを一気に物語に入り込ませてくれる。その後訪れるであろう復讐劇の予感を胸に、プレイヤーはゲームを進めていくことになる。掴みのワクワク感はバッチリで、120点の出来であったように思う。

中盤以降、徐々に様子が変わってくる

さて、そんなわけで最高の滑り出しを(体験版で)迎えた本作だが、中盤以降徐々に違和感を覚えてしまった。以下、ネタバレ要素が強いため閲覧の際は注意。

ネタバレ注意(クリックで展開)
マザークリスタルの破壊

中盤以降、クライヴは亡き「シド」の想いを受け継ぎ、マザークリスタルを破壊していくのだが、この辺りの描写が大きく不足しているように感じた。

  • マザークリスタル破壊の理由は、マザークリスタルが徐々に周囲のエーテルを吸い続けて「黒の一帯」が広がっていってしまうということを防ぐというもの。その事実はシドの長年の研究成果によるものであり、一般には知られていない。マザークリスタルはシドの活動目的であり、クライヴがそれを受け継いだ形。
  • 黒の一帯では大地のエーテルが枯渇し、草木も生えず、魔法を使うこともできない。
  • 一般人が持っている小さなクリスタルは、マザークリスタルを削りだしたもの。クリスタル無しには(ベアラー以外の)人間は魔法を扱えない。

というわけで、要はマザークリスタルの存在そのものが環境に悪いのでぶっ壊しましょうというもの。なんだかFF7でも見たような光景である。

それは良いとして、壊した後のフォローや、「壊して良かった感」が全く感じられないという点が非常に気になった。

1つ目のマザークリスタル破壊以降は、クライヴがシドから引き継いで破壊活動を行っていくのだが、破壊後の人々の生活についてクライヴ一行がケアをすることは少ない。

マザークリスタルを破壊したことにより、クリスタル無しに魔法を使うことができるベアラーがこれまで以上に酷使され、ひどい扱いを受けるようになる。マザークリスタル破壊と同じくらいベアラー差別問題に力を入れているシド一行であるが、この状況は予想できなかったのであろうか。

また、クリスタルが貴重品となったため配給量が激減し、闇取引などが行われるようになり治安が悪化。多くの血が流れることとなる。

そして、クライヴは世の中から「大罪人シド」と呼ばれ、クライヴ本人も時には茶化しながら、武勇伝かのごとくその名を受け入れている節があるのだが、(自身の行動のせいで)目の前で苦しんでいるベアラーがいても、助けられる状況にない限りは基本的にスルーしていく。

もちろん、クライヴ一行もベアラー保護活動は積極的に行ってはいる。ただしそれは、主から逃げ出したベアラーだったり、購入したベアラーだったりを「手の届く範囲」で救っているに過ぎず、描写を見る限りでは、絶対数で言えば圧倒的にクライヴらの手によって救われたベアラーよりも、不幸になったベアラーの方が多い

長い目で見て環境を守ったり、差別をなくそうという試みは理解できるのだが、そのために今生きている人(その多くは、救うべき対象であるはずのベアラー)を犠牲にしており、その辺りの葛藤や仲間からのツッコミが入ることなく、「俺たち大罪人一行だぜイェーイ」みたいに進行していく様に大きな違和感を覚えた。

ソースはシド

 

ネタバレ注意(クリックで展開)
あっさりと終わる復讐劇

さて、クライヴの旅の目的のひとつとして、「復讐」がある。

弟を殺した「火のドミナント」への復讐、国と家族を裏切った実の母親への憎しみなど色々な負の行動理念があり、そこに対してどう決着をつけていくか、という展開への期待もプレイヤーの興味のひとつであった。

しかしながら、かなり早い段階で「火のドミナント」が自分であり、長年追っていた弟の敵が自身であったことを知る。また、母アナベラの野望は、クライヴと直接的に関係のないところで大暴れしたバハムートにより挫かれ、彼女は最終的に自害をすることとなる。

そういうわけで、クライヴの復讐劇は、片や「復讐すべき相手はいませんでした」オチ、片や「蚊帳の外で天罰が下りました」オチで、どうにもスッキリしないまま終わっていく。

プレイヤーにとって一番の興味どころであり、引きこまれる要素でもあった復讐というダークな箇所は割とアッサリと消化されていく一方で、中盤以降はシドの理念を受け継いで「人が人として生きていく」差別のない幸せな世界を作っていこうというあるあるなストーリーにスライド・フォーカスされていくので、途中から期待ギャップというか、「あ、こういう展開に進んじゃうの?」という肩透かし感をくらってしまった。

最後は自ら

 

ネタバレ注意(クリックで展開)
終盤は「器」の話へ

そして終盤になると、クライヴに隠された秘密と、クライヴを自身の「器」として狙うアルテマの話がメインとなっていく。

アルテマは肉体を捨て精神体となった存在であり、黒の驚異のない「真あるべき世界」を創生することと、一族の復活を目的としている。それに耐えうる肉体を得るために人間という種を創ったのもアルテマであり、人間の中から自らの器<ミュトス>となる者が生まれるのを待っていた。その<ミュトス>がクライヴであり、クライヴにすべてのドミナントの力を吸収させることで、器として完成させた上で乗っ取ることが目的であった。

…とまあ、急になんというか「人を滅ぼしたい存在vs人」みたいなそこらで見たような話になっていくので、復讐劇の項でも述べたように、当初のダークファンタジー感がだんだんなくなっていき、王道の「世界を守る系ファンタジー」になっていく。

アルテマはクライヴ(ミュトス)を器として我が物にしようとする


シナリオ部分を総括すれば、筆者は序盤の雰囲気が大好きだったので、中盤以降は序盤ほどの盛り上がり感はなかったというのが正直な感想だ。
ただし、個々のシーンの演出面は見応えがあり心揺さぶられるものがあるので、細けえこたあいいんだよ!感で力押しに楽しむことができるため、全体で見ればかなり楽しめた。

グラフィック:圧倒的な映像美

グラフィックは本当に凄かった。これまでプレイしたJRPGの中でも一番ではなかろうか。物語への没入感を何段階も引き上げてくれる素晴らしい出来だった。

特に召喚獣バトルについてはド派手で、語彙力不足により残念ながら上手に説明できないのだが、とにかく良かった。ボス戦で挟まれるシネマティックな演出は必見である。

また、巷でよく言われるリップシンク(キャラの口パクが日本語ボイスと合っていない)問題については、正直筆者はあまり気にならなかった。割と多方面で言われているので、人によっては気になるのかもしれない。

召喚獣とのバトルはド迫力

フィールド:探索要素は少ない

各フィールドマップもかなり作りこまれており、制作陣の気合いが伺える。ただ、本作はオープンワールドゲームではないので、フィールドそのものを探索して何かを発見するという要素はかなり控えめであった。

隅々まで探索しても何かが見つかるということはほぼ無いので、基本的にフィールドは通り道である。クエストの目的地やリスキーモブの出現地点になることはあるが、探索したことにより新しい発見があることは少ない。

せっかくの国内屈指の美麗グラフィックであるにも関わらず、探索要素が少ないことによりフィールドを隅々まで巡るような動機づけがなされていない点については残念である。
ただ、本作にさらに探索要素を追加してしまうと、色々散らかりそうな気もするので、あえて無くしてストーリーに集中させる、という選択は正解なのかもしれない。

フィールドも非常に美麗

移動:ストレスが大きい

移動面についてはいくつか言及していきたい。良い点、悪い点それぞれあった。

(良い点)爆速ロード時間

ハード性能の高さか、さすがのロード時間の短さであった。ファストトラベルのあるゲームでは、ファストトラベル時のロード時間の長短がひとつの評価指標となるが、本作はごく短時間の暗転を挟むのみで、スムーズにエリアジャンプができた。

また、それ以外にも、フィールドから戦闘への入りや、ボス戦におけるシネマティックな演出への移行などがシームレスに行われたりなど、ロード面で気になる瞬間はほぼ無かった。

強いて言えば、メニュー画面でのLRによる各メニュー切り替えがややモタつくくらいか。

全体的に非常に快適であった。

(悪い点)癖のあるダッシュと街中の移動速度


移動面では、妙なところでリアル感を出そうとしている印象を感じ、それがマイナスに働いていた。
まず、ダッシュボタンが存在せず、フィールドで一定時間走っていると自動でダッシュに切り替わる方式となっている。ダッシュ始動までにやたら時間がかかるのでシンプルに面倒。その割にチョコボ騎乗時はR2ボタンですぐダッシュできるので、意図がよくわからない。

また、街の中ではダッシュをすることができず、移動速度が遅い。街中でチョコボに乗れないのはわかるが、ダッシュすらできなくなる。確かに街中で全速力で走るのは現実世界においては不自然かもしれないが、これはゲームである。本作は街や拠点が広い上に、拠点内ワープなどもないので、かなり負荷がかかる

ついでに細かいことを言うならば、チョコボ騎乗時に視界がクライヴの傾きに合わせて左右に揺れる点が気になる。このせいで、騎乗後に向いている向きがわかりにくく、微妙に混乱することが何度かあった。

拠点、広いんです…。

(悪い点)ミニマップ削除は正しかったのか?

また、本作は「あえて」ミニマップを実装していない。これは、発売前に行われた体験版フィードバック動画で名言されている。その理由は、要約すると、ミニマップを実装するとただミニマップを見ながら移動するだけのゲームとなり、没入感が落ちるからというものだ。

一理あるようにも思えるが、筆者としては以下の理由で、やはりミニマップが欲しかった。

  • ミニマップを見ない代わりに、こまめにタッチパッドによる全体マップを見る機会が増えるだけである。押すたびに画面が切り替わるので、むしろこっちの方が没入感が落ちる。
  • 拠点となるクライヴの隠れ家がやたら入り組んでおり、慣れるまでは普通に迷う。
  • ミニマップのないオープンワールドゲームは確かに多数あるが、それらのゲームは、崖や段差などに強いので、大まかな方向を全体マップで見て、そっちの方向にひたすら進む ということができるのだが、本作ではちょっとした崖を飛び降りたりすることもできないので、そういった方法が取りづらい。湿地帯など、どこを通れるかわからず、いわゆる「見えない壁」がそこら中にあるため、マップによる地形確認の手間が多く発生する。

総じて、移動面では読み込み時間の短さは特筆すべき良さがあるが、それ以外での全体設計が良くないと感じた。「リアルにしたい」「景色を見て欲しい」といった開発側のこだわりや願いが、マイナス面に働いてしまっている印象だ

バトル:オーソドックスで奥行きが少ないアクション。ただし、演出面は凝っており面白い

バトル面は、前述のシネマティックパート(バトルからシームレスに切り替わる映画のような演出)については迫力がありアガるのだが、それ以外の通常の戦闘においては特筆すべき点は少ない。だいたいどこかで見たようなシステムだ。

複数の召喚獣を切り替えるモードチェンジは、「龍が如く0」などで見られるスタイルチェンジに近しいものだし、ウィルゲージの削りによるテイクダウンシステムなども、「SEKIRO」の体幹削りをはじめ、様々なアクションゲームで類似のシステムが見られる。よく言えばとっつきやすいオーソドックスなアクションRPGだが、悪く言えば面白味のないシステムだ。

ガルーダの固有スキルによるダウン。気持ちいい。

ただし、よく叩かれがちな属性相性を無くした点については、むしろ英断だったと感じている。戦闘中に召喚獣やアビリティを付け替えできない本作では、仮に属性相性があった場合、ボス戦における「予習」が必須となり、ゲームとしての面白さを著しく損なうからだ。その経験は、FF7リメイクで味わってきた。

また、バトルシステムそのものは斬新さに欠けるとはいえ、バトル中のエフェクトの美しさやシネマティックアクションに代表される演出面の迫力、操作性の良さなどから、チープな感じはせず、爽快感もあり、かなり楽しむことができた。

ただ、全体的な難易度の低さも相まって、慣れてくると単調さは否めない。特に雑魚戦は完全に作業になりがちなので、退屈に感じることも多くあるだろう。

召喚獣操作時は、与ダメージが文字通り桁違いとなるので、異次元レベルのバトルをしている感も良かった。リスキーモブは人間状態でしか戦わないので、この手のゲームにありがちな「ラスボスよりその辺の強敵の方が強い」問題も生じないので、世界観を守れている点も◎。

総評

ファイナルファンタジー16(FF16)は、難易度やゲーム性を削り落として、詰ませることなく、プレイヤーにクリアさせてシナリオ・演出を楽しませることに極限まで集中したゲームであった。すなわち、ゲーム要素のある映像作品なのである。したがって、シナリオ部分が楽しめるかどうかが本作の評価軸なのだが、全体的にとても楽しめた一方で、やはりマザークリスタル破壊周りの描写の勿体なさや、前半と後半でがらりと変わるストーリーの雰囲気がやや気になるところであった。

あとはやはり移動面。本作の移動面の制限は、ゲームとしての楽しさを生み出しているというよりも、制作側のこだわりや見せたいところを押し付けられているように感じてしまったので、その点はややマイナス。

長短ひっくるめた全体評価としては、FFのナンバリングに相応しい大作であったと思う。未プレイの方にはお勧めできるし、プレイして損のないゲームである。
DLCにも期待したい。

ジュドーさん
ジュドーさん
久々のFFナンバリングタイトル!今後のシリーズ方向性が示された気がする1本だ!

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