タイトル(かな) | しーおぶすたーず |
ハード | PS4,PS5,Xbox Series X|S,Xbox One, PC,switch |
発売日 | 2023年8月29日 |
点数 | 74点(良作) |
総評 | ・レトロ風味な良作インディーゲーム ・JRPGへのリスペクト&進化を感じる ・面白すぎるミニゲーム「ホイールズ」 ・移動面の利便性に大きな難あり |
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序文
Sea of Starsは、カナダのインディースタジオSabotage Studio制作のRPG。ユーザーからの高評価を得て、発売初日で販売10万本、初週で25万本(これはPS+などのサブスクでのDL数は含まない数字である)を達成するヒットを記録している。
開発元としても、25万本という数字は1年間の予定販売本数であり、それをわずか1週間で達成できたことに驚きと喜びの意を表明している。
その内容は、「クロノ・トリガー」や「マリオRPG」といった名作の影響を感じる、レトロ2D・JRPGライク。そこかしこにそれらへのリスペクトを感じつつも、しっかりとオリジナリティを出した上で、単なるレトロRPGの再現に留まらない進化を見せてくれる、かなり面白い作品であった。
一方で、「そこ、そういう仕様にする?」といった粗さ・遊びづらさも散見され、その辺りは手放しで賞賛できるものではなく、課題も多く感じるゲームであった。
本レビューにて、Sea of Starsの良かった点、悪かった点を紹介していく。なお、重要なネタバレ箇所は非表示にしていますが、何をネタバレと感じるかは個人の主観にもよるため、閲覧の際は自己責任でお願いします。
良い点
昔なつかしのJRPGを感じる抜群の雰囲気感
いきなりふわっとした表現で申し訳ないが、グラフィック、BGM、台詞回しなどから構成される全体的な雰囲気がとても良く、プレイしていて居心地の良さを感じるゲームであった。
- 2Dのドット系グラフィックで、クロノ・トリガーによく似ている。かといって古臭いわけではなく、自然が美しく明るいエリア、暗く不気味なエリアなど色彩が豊かで良く表現されている。
- キャラクターの動きがとても良い。登る、つたう、飛び降りる、ジャンプといった個々のモーションがキャラごとに作りこまれており、キビキビと動く感じが気持ち良く、愛着が湧く。
- BGMがすばらしい。インディーゲームのレベルを遥かに超えており、「クロノ・トリガー」の音楽を手掛けた光田康典氏も楽曲提供をしているとのこと。
- ローカライズのレベルが高く、違和感が少ない。キャラクターの「それって〇〇だし!」といった表現は翻訳ゆえのものかもしれないが、妙に合っていてかわいい。
SFC時代のRPGへのリスペクトを感じる作りによって、昔懐かしの雰囲気を味わえる一方で、グラフィック、モーション、BGMひとつひとつの細かな作りこみのレベルが高く、古臭さを全く感じず、令和の現代においても違和感なく楽しめた。
ちなみにボリュームも十分。筆者は完全クリアまで45時間程度だったが、本作は昨今のゲームに多いようなお使いサブクエストで水増しする要素がほぼない(収集要素はあるが)ため、値段も考えると十分なボリュームと感じた。
謎解き要素のあるダンジョンギミック
ゲームを進めることで、ブロックを吹き飛ばす「風圧」や、鉤つきのロープを引っかけて別の場所へ飛び移る「グラップル」といったアクションが解禁されていく。これらの能力を用いてダンジョン攻略を行っていく、ちょっとしたアドベンチャー要素が採用されている。
このダンジョンギミック、なかなか良く出来ており、感心させるような作りのものが多くとても楽しめた。ダンジョン攻略は、一つ間違えれば退屈で苦痛なものとなりがちだが、本作はその点に対してもしっかりとケアしてくれているように思う。
ただし、これらギミックについてはちょっとやり過ぎな面も目立った。その点については後述する「問題点」の項で述べる。
頭を使う、戦略性の高い戦闘
本作の戦闘は、基本的にはよくあるターン制コマンドバトルだ。
一方、独自システムとして、「オクトパストラベラー」の「ブレイク」に近い、敵の行動を妨害する要素がある。
敵が強力なスキルを詠唱し始めたとき、敵の頭上に表示されるアイコンと同じ属性の技を既定の回数当てることで、そのスキルを妨害することができる。プレイヤーサイドはキャラによって使用できる属性が異なるので、仲間の入れ替えを駆使しながら、戦略的に敵に攻撃を当てる必要がある。あるいは、敵の詠唱に備えて、あえて生マナやコンボ技を使わずに温存しておいたり、入れ替えだけでなく仲間の行動順にも細心の注意を払う必要があるなど、なかなかに戦略性の強いバトルシステムとなっている。
しかし、戦闘についても一部気になる点があった。こちらも後述する「問題点」の項で述べる。
面白すぎるミニゲーム「ホイールズ」
本作において特筆したいのが、ミニゲーム「ホイールズ」の存在だ。
ルーレットを回してユニットを行動させ、相手のライフをゼロにするボードゲームなのだが、これが非常に面白い。
ルーレットの出目はランダムのため運要素が強いゲームではあるのだが、「どのユニットに行動させるか」「ルーレットのどの出目を固定させるか」といった若干の技術介入度があるので妙に中毒性が高く、新たな街へ到着するやまず宿屋へ足を運びホイールズの対戦相手を探す、というくらい楽しませてもらった。ぜひDLCでもっと対戦相手を増やして欲しい。
欲を言えば、
- ゲーム内のルール説明が非常にわかりづらく必要な情報が不足していること
- ユニット格差がすさまじいこと
- 敵と自分の所持ホイールが違うため不公平感を感じること
- 対戦相手が少なすぎること
といった不満も出てくるのだが、それはこのホイールズが面白すぎるが故に出てくるものだという事を主張したい。もっと作りこんで色々な要素を増やせば、ホイールズ単体でこのゲームの評価をもっと押し上げられるくらい、ポテンシャルを秘めたミニゲームだ。
問題点
さて、RPG好きが久しく忘れかけていた素晴らしい体験を提供してくれるSea of Stars。作り手の細やかな気遣いとケアを感じる本作であるが、意外にも「え、そこそういう仕様なの?」と言いたくなる点がいくつか散見され、それが大きなストレスであった。
移動面のストレス①-ルーラ・リレミトなし
本作はエリア間の移動が非常に大変だ。特に感じるのは、いわゆる「ルーラ系」「リレミト系」に相当する移動手段が全く存在しない点だ。本作は終盤のストーリー展開に収集要素が密接に関係しているゲームで、その収集要素をコンプリートするために、一度訪れたエリアを再訪するという機会が多くある。
しかし、一部のエリアについては、そもそも到達するために別のダンジョンや街の中を抜けないと辿り着けない場所が多くあり、ルーラ要素のないこのゲームでは徒歩で到達するしかない。そして、お目当てのエリアにたどり着いてアイテムを回収し、いざ帰ろうと思った時もリレミト・ルーラがないので歩いてダンジョンから出て、また来た道を歩いて帰って…とものすごく硬派な移動を強いられる。これが非常に耐えがたい。
さらに、各ダンジョンは多様なギミックによりかなり作りこまれている、エリアマップがない、入口・出口が画面下にあるとは限らないといった理由などによりそもそも迷って帰れないということもしばしばある。特に「歌キノコの沼」などはかなり迷いやすい。
一応、ルーラについては最終盤になると船以外の移動手段が開放され、直接各エリアに行けるようになるので、だいぶ緩和される。しかし本当に最終盤(ゲームクリア手前)の話だし、初見ではそんな機能が開放されるなど知る由もないので、多くのプレイヤーがこの点に悩まされたであろう。船着き場が各大陸1つしかない点もいただけない。
移動面のストレス②-個々のダンジョンが長いのに、ワープがない
また、ダンジョンが長い割にワープ要素がない点もなかなか困る要素だ。リレミトがないならば、せめて入口と出口を繋ぐワープくらいは…と思うが、本作はそういった類のものはほとんどない。一応、ダンジョンの出口側から入り口側へ戻る際は、高所から飛び降りるなどといった一方通行的なショートカットがあるダンジョンもあるが、それも全てではない。
あえて歩かせることで世界に没入してほしい、といった作り手の想いもあるだろうが、各所のたき火やセーブポイント間でワープ可能になるなど移動面の緩和は欲しかった。これがあるだけで、圧倒的にゲーム体験が良いものとなるはずだ。
過剰なダンジョンギミック
本作のダンジョンはかなり作りこまれており、「風圧でブロックを押す」「グラップル(かぎ縄)で引っかけて足場へ跳び移る」「昼と夜を切り替えて謎解きをする」といったアクション要素を用いたギミックがてんこ盛りとなっている。
これらギミック、序盤~中盤くらいまではかなり作りこみに感心して楽しいのだが、さすがに多すぎ&長すぎ&単調すぎて食傷気味となってくる。
あれこれと工夫をしているが、結局やることは単純なので飽きが出てくるし、何より本作の重要な要素であるアイテム収集との相性があまり良くない。先へ進む正規ルート、隠された宝箱を空けるための寄り道ルートなどギミックに複数通りの答えが用意されていることが多いので、冗長さにより拍車がかかってしまう印象を受けた。
戦闘における「目押し」の面倒さとテンポの悪さ
本作の戦闘には、ボタンアクション(目押し)要素が採用されている。
- 敵への攻撃時にタイミングよくボタンを押すことで、威力が上がるほか、敵の詠唱を妨害するための弱点をひとつ余計に破壊する(強ヒット)
- 敵からの攻撃を受けた際にタイミングよくボタンを押すことで、ダメージを軽減する(強ブロック)
- 特定のスキルでは、タイミングよくボタンを押し続けることで攻撃回数が増加する(ムーメランなど)
これらの要素は、古くは「マリオRPG」に見られるタイプで、戦闘にほどよいゲーム性と緊張感を与える役割に一役買っている…のだが、個人的にはネガティブな印象の方を強く感じた。
- ボタンアクションの存在ゆえにバトルスピードの早送りやスキップ機能が実装できないため、テンポが非常に悪い
- 強ヒット、強ブロックはともかく、ヴァレアの「ムーメラン」やセライの「毒の疾風」は、タイミングよくボタンを押し続けるミニゲームが始まるため、1回の使用につき10秒程度の時間を要し非常にテンポが悪い。楽しいのは初回だけで、すぐに飽きてくる
また、雑魚敵から逃げられないのもいただけない。
ゲーム側で戦闘回数をある程度コントロールし、ゲームバランスを保つという狙いがあるのだろうが、アイテム収集のために一度訪れたダンジョンを再訪する際などに、遥か格下の雑魚敵を避けられない&逃げられないのはかなり辛い。ワンパンで倒せる敵ならともかく、中途半端に敵にターンを回してしまうと、(ボタンアクション故にやたらアニメーションの長い)敵の攻撃が挟まれるので大きなストレス。
総じて戦闘は、ボス戦は楽しめるが、雑魚戦はプレイヤーの精神への負荷が高め。サクサク感をもう少し上げるか、あるいは、レベルがこちらより大きく低い敵からは逃げたり、エンカウント制御したりできるシステムが欲しかった。
ストーリーは面白いが盛り上がりに欠ける面も
この辺りは大きく好みが分かれると思うので、採点には影響させないが、メモとして個人的意見を。
総評
2023年8月はRPGが不作だと思っていたところに彗星のごとく現れたSea of Stars。終わってみれば期待を越える非常に面白いゲームでした。インディーゲームということを考えれば傑作に近い出来でしたが、それを考慮に入れずフラットな目で見れば、「見せたい箇所」の主張を強くするあまりユーザーフレンドリーさを一部損なってしまい、雰囲気は良いものの遊びにくさを感じさせる部分も目立つゲームでした。
とはいえ、全体的には良作で、現在開発中のDLCも間違いなく買うでしょう。そう思わせてくれるだけのゲームと出会わせていただいたこと、Sabotage Studioには感謝するばかりです。
こんにちは!
自分もプレイし、予想以上の良作だったなーと思いました(ストーリーと真ボス戦の某要素は除く…)。
記載されているご意見、概ね同意でしたが、
雑魚の硬さなどバトルバランスについては、秘宝について言及がないのがあれ?っと思いました。
そのあたりのご意見を楽しみにしていたので…。
個人的には、本作の売りの1つなので、プラス・マイナスどちらにせよ点数にはねるのではと。
緩和系秘宝盛りverと縛り系秘宝盛りverを試すとちょっと印象変わる気がしています。
コメントありがとうございます!!
戦闘緩和(縛り)系の秘宝については、私としては「OFF」の状態がデフォルトで、難しい(簡単)と感じた人は「ON」にする、いわゆるNORMALモードとEASY(HARD)モードの切り替えを要素ごとにできるシステムだと認識しています。
それで、本ブログの指針としては、原則として標準難易度(いわゆるNORMAL)の状態でのレビューを行っているので、そこは意図的にレビュー対象にしませんでした。(本ブログ「採点基準」の項参照)
ただ、このゲームの場合は、もしレビュー対象にしていたとしても、点数に反映はされなかったと思っています。
戦闘緩和系の秘宝は、ほとんどは操作難度を緩和するためのものですが、そこについては大きな文句はないことと、
操作難度が緩和されたとしても、本レビューで挙げた「問題点」が解決するわけではないためですm(__)m
お忙しい中ご返信ありがとうございます!
あー、解釈スタンスの違いなんですねぇ。
自分は、初期設定は”わざわざインディーゲームをやるような層”を想定した「ちょっと歯ごたえ有レベル」と解釈していました。
(10段階難易度で言うところの7ぐらい)
アイテム枠を増やす秘宝をONにして、MP回復をマメにすると「サクサク感をもう少し上げる」ことが実現できたりするので、それもう対応されてるのにな~と思ったりしました。
秘宝をONにしたらイージーモードで負けみたいな気がする人向けに、いくつかの緩和系秘宝をデフォルトでONにしておいた方が、幅広く受け入れられやすかったのかもしれませんね。
こんにちわ。
自分もプレイして、かなりいい作品だったと思いました。
雑魚戦に関しては確かにちょっと重たい部分はありましたね。強打撃・強ブロック放棄を代償とした高速モード用の秘宝があってもいいなと思ったのと、レベル差のある敵は追ってこない仕様はあってもいいのかな、とは思いました。
雑魚戦の仕様や、レベルアップ回数が少ない(1レベルの意味が大きい)仕様、経験値仕様とかからすると、レベルデザインの主導権について、秘宝以外の方法ではプレイヤー側に絶対に明け渡さない(極端な低レベルプレイも、レベルを上げまくった無双プレイも許さない)発想なのかなと。
まあ、そうやって設定されたバランス自体は非常に良く出来ていたので(秘宝なしだと結構カツカツだし、秘宝全開放でも一部のボスはかなり厳しい)、それはそれでありなのかもしれませんが・・・。
話自体はよく読めばよく出来ているのですが、インディーズの限界か日本語としての違和感が相当強いので、そこはある程度覚悟かなと。
他の方のコメントにもありますが、真ラスボス戦のアレはなしだと思います。
1980年代のPCゲーや一時期のFCゲーではそういう手法も確かに横行してはいましたが、なんというか、そういうことをやりたくてこのゲーム買ったわけではないのよ、というところは開発にも分かってほしい。
コメントありがとうございます。
そのような要素があれば雑魚戦が幾分スッキリできそうですね。
おっしゃる通り、雑魚戦を半ば強制させることでゲームバランスを保っているという面はありそうですね。
ローカライズは少々怪しいですね。頑張っていたとは思いますが、その辺りはご愛嬌でしょうか。