レビュー

バイオハザード ヴィレッジ【70点】レビュー・感想

タイトル(かな) ばいおはざーどヴぃれっじ
ハード PS4,Xbox One,Xbox series X,PC
発売日 2021年5月8日
点数 70点
総評 ・バイオシリーズ随一のストーリー性
・まるで映画のような臨場感
・怖さは控えめ


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序文

ナンバリング初の主観視点&VR対応でプレイヤーに衝撃を与えた前作「7」から4年。「バイオハザード ヴィレッジ」は、直接的なナンバリングはついていないものの、「VILLAGE」というタイトルのうち「VIII」部分が着色されている、れっきとしたナンバリング作だ。主人公は「7」のイーサンが続投。未解決の謎が多かったイーサンの物語が完結するという触れ込みで、多くのファンの注目を集めた。

本レビューでは、筆者がどのようにバイオハザード ヴィレッジを感じ、評価したかにつき余すことなく伝えていく。もちろん、ネタバレ注意だ。

評価点

歴代バイオ最高ともいえるストーリー

皆さんはバイオハザードシリーズにおける「ストーリー」にどういう印象をもっているだろうか。ホラーゲームの印象が強いバイオハザードであるが、初代から同シリーズを追いかけてきたシリーズファンにとっては、魅力的な登場人物と設定が織りなすシリーズ全体のストーリーがどのように展開・着地していくかもまた注目要素であることは言うまでもない。

物語は「7」から数年後、幸せに暮らすイーサンとミア、娘ローズの家庭から始まる。

しかし近年、特に4以降のバイオハザードは基本的にその作品ごとの単発ストーリーで完結するものが多く、シリーズ全体の話の展開に乏しかった。また過去作との繋がりを描写する要素も多くはなく、単に「怖いところから脱出できてよかった、あー安心」感が出てしまうのは、悪く言えば「萎え」の印象をプレイヤーに与えており、この点が大いに不満であった。

この点、本作はストーリーにおいても「7」の正当な続編であり、物語性が非常に強い。さながら映画を見ているような臨場感があり、終盤の怒涛の展開、切なくも美しいラストなど、ホラーゲームでありながら涙が零れるほどの上質なストーリーは必見である。物語の質でいえば、「Code:Velonica」と並び歴代バイオ最上位であろう。

ここから先、いくつかの項目に分けて
もう少し深掘りして解説しよう。

そう来たか!プレイヤーを良い意味で裏切る「終盤の展開」

本作は、前作「7」からプレイヤーに抱かせてきた「ある疑問」に対し、ストーリー上で回答を与えた。その展開が秀逸であった。

ネタバレ(クリックで展開)

主人公イーサンは既に普通の人間ではなくなっており、前作「7」の序盤で人間としての生を一度終えていたことが明らかになった。プレイヤーが操作しているイーサンは、前作で既にエヴリンの菌に侵された所謂カビ人間であり、彼のもつ驚異的な回復能力はそれ故のものであった。

  • プレイ中、大やけどを負おうが刃物で切りつけられようが回復薬を腕に振りかけるだけで瞬時に全回復し、「7」の序盤では腕を切断されてもステープラーで物理的にくっつけただけで機能していた。これに違和感を抱きつつも「ゲームだから」で無理やり納得していたプレイヤーは驚きを隠せなかった。
  • 一方、これが後付けの設定ではなく、きちんとした伏線もあった。「7」のとある戦闘ではイーサンが足首を切断されることがあり、その際回復薬を使用するとなんと切断された足が接着する。イーサンの「嘘だろ…」の言葉からもこれが意図された演出であることがわかる。

イーサンは「ヴィレッジ」のボスであるミランダに心臓を握りつぶされ死亡したかと思ったが、既にカビ人間と化していたため復活。最終決戦に臨み、感動のラストへと繋がるのであった。

終盤の怒涛の展開は必見。

印象深いNPC「四貴族」や武器商人デューク

本作を語る上で欠かすことのできないのが、敵幹部「四貴族」の存在である。
いずれも個性的で、特にその中の一人「ドミトレスク夫人」は発売前から大いに話題となった。

3メートル近い巨体のドミトレスク。発売前からプレイヤーを沸かせた。

また「4」以降お約束の武器商人は本作でも健在。本作における武器商人デュークはストーリーにも深く関わっており、「武器商人がなぜか敵から攻撃されない」など、いわゆるメタ的なお約束にもきちんとストーリー上の理由があることを匂わせている点も評価が高い。

商人デューク。彼に関する考察もネット上では非常に盛ん。

飽きさせない作り

本作、ゲーム本編を通して随所に飽きさせない工夫が施されている。そしてそれらの工夫が、特に初見のプレイヤーにとってはちょうどよい息抜き要素となっている。

  • 所々で挟まれる、「球体を落下させることなくゴールまでたどり着かせるミニゲーム」はシンプルながら中々面白い。報酬も高額換金アイテムのため、プレイ必須とまではいわず、「やらない自由」も存在する。
  • 四貴族のひとりベネヴィエント戦では、いわゆる謎解きゲームのような要素や、バイオ7を髣髴とさせるホラー要素もある。
  • ストーリー終盤、とある別キャラクターを操作する場面では、充実した装備によりいわゆる「無双」気分となり楽しめる。

これらの要素は、特に中盤以降、装備が整うことにより攻略が作業になりがちなバイオシリーズが抱えるジレンマに対してひとつの回答を提示しているといえる。

進化した操作感

前作「7」ではベイカー邸という限られた空間を探索する恐怖の演出のため、イーサンの操作感(特に足の速さ)はあまりよくなかった。しかし「8」のイーサンはクリスに戦闘訓練を積まれたということもあり、「7」のクリスに近い機敏な操作が可能となっている。村というオープンな空間を広く探索せねばならない本作において、この変更は英断であろう。

問題点

ここからは筆者の感じた本ゲームの問題点を述べていく。

ストーリー上の問題点

重要なネタバレ注意である。

本作、前述の通り最大の評価点はその練られたストーリーであるのだが、違和感を覚える点も多くあった。

随所にみられる「ご都合主義」な展開
  • イーサンを完璧に捕えたにも関わらず、一人の見張りも残さず離席した結果逃がしてしまうドミトレスク夫人と三姉妹
  • 如何様にもイーサンを殺すチャンスがあったにも関わらず、毎回落下させたり中途半端な罠でやり過ごそうとするハイゼンベルク
  • 相変わらず大事なことを話さない登場人物たち

など、「話の都合のためにキャラを動かしている」ような印象を抱く点が随所にみられ、シナリオへの没入感を損なう。「敵の大物感を演出したいけどイーサンは殺せない…」という開発の苦悩が透けて見えるようであった。

映画のようではあるけれど

本作、先に述べたように上質なストーリーが特徴的であり、物語の先の展開が気になりはするのだが、ホラー要素はあまり多くない。声優の熱演や、やたら気合の入った衣装の四貴族などの存在がどこかドラマやアニメを見ているような非現実感を覚えさせ、「はいはいフィクションでしょ」という一種の「冷め」を常に感じることとなってしまった。すなわち、プレイヤーは「視聴者」であり、「7」で感じたような「イーサン=自分」という没入感がない。どちらかというと、カプコンの「デビルメイクライ」シリーズをプレイしているような、そんな錯覚に襲われるのだ。

秘密主義が過ぎるクリス・レッドフィールドの失態

本作最大の違和感がここである。

ネタバレ(クリックで展開)

クリスはゲームのオープニングで、イーサンの自宅に襲撃し妻ミアを銃殺し、娘ローズを誘拐してしまう。実際にはこのミアはラスボスであるミランダであったわけだが、当のイーサンはそれを知らされていなかったため、クリスに対し強い怒りと、なぜそのようなことをしたのかという戸惑いを解消するために村を探索し、巻き込まれていくこととなる。

  • イーサンに対し「やめとけ」「関わるな」など突き放すが、何の説明もせずに妻を殺し娘を攫われて、関わらないわけがない。相手が知人であるクリスなら尚更である。
  • イーサンは「7」で単身ミアを助けにいった向こう見ずな実績があり、イーサンが自分を追いかけてくるであろうことはクリスであれば容易に予見できた。
  • クリスはミア(ミランダ)を銃撃後搬送するが、ミランダは死亡しておらず、実際は遺体に擬態していただけであった。輸送中、ミランダに部隊が襲われ、逃げられてしまう。これまで数多のB.O.Wと対峙してきたクリスであれば、たかだか数発の銃弾を撃ちこんで死んだように見えるだけの敵をそのまま輸送するのは考え難く、ストーリー展開の都合により動かされているように見える。
  • 肝心のミランダ輸送にクリスが同席していない。
  • とはいえ、クリス達は本物のミアの生存自体が既に絶望的だと思っている。偽ミアの擬態は夫であるイーサンから見ても完璧であり、「お前の妻は別人の化け物だ。だから殺す」と言って素直に聞き入れるとは考え難い。その意味では、クリスの行動も一定の理解はできる。
  • クリス編では仲間からも「イーサンには真実を伝えるべきだった」とたしなめられ、自身も「そうだな」と認めている。
    クリスの行動には批判も多い。

全体的に中途半端な戦闘パート

本作の主要な敵は「ライカン」という半人半狼のような存在であり、動きが素早く、知性をもつ。これまでの敵でいうと、「5」に登場するジュアヴォのような動きや出現パターンが近い。武器の構成もハンドガン、ショットガン、スナイパーライフル、手榴弾などオーソドックスなものであるから、全体的に戦闘パートが既視感が強い。一方イーサン側のできる行動は「4」~「6」のように体術があるわけでもなく、武器の強化システムも中途半端で爽快感がなく、こと戦闘においては正直あまり面白くはなかった。ボス的も、飛行するドミトレスク夫人をライフルで撃ち落としたり、巨大水棲生物と化したモローから逃げたり、「なんか前やったなコレ」感を常に感じながらのプレイとなった。

ライカン。手ごわいのだが、真新しさはあまり感じない。
やはり感じてしまう中だるみ

「良い点」で挙げたように、本作は中だるみしない工夫がなされている。しかしそれはゲーム性そのものについての話であり、ストーリーという視点からみると中だるみしている感は否めなかった。

  • やはり「四貴族」に全員同等の「格」を与えることが難しいのか、印象深いドミトレスク夫人とハイゼンベルクと比較し、2人目、3人目に戦うこととなるベネヴィエント、モローの印象がどうにも薄く、ストーリーの通過点として排除する障害物のような感情を抱くことになってしまう。
  • 「四貴族」「フラスクを4つ集める」といった、次の展開に進むために〇個の何かを集める、といった展開はどうしても中だるみしやすく、これは仕方ないともいえる。しかしせっかくの良いキャラクターである四貴族、もう少しキャラを全員立たせてほしかった。
四貴族のひとり、モロー。どうにも格落ち感が否めない。(実際そうなのだが)

総評

「バイオハザード ヴィレッジ」は、バイオハザード7の正当な続編として、またイーサン・ウィンターズの物語の完結として、十分に満足がいくものであった。しかし肝心のゲーム部分にやや改善すべき点があるようにみられる。バイオシリーズはやはり国産ホラーゲームの金字塔であるから、従来のホラー要素を大切にしつつ、また「4」から繋がるアクションとしての面白さも追求しつつ、より進化したバイオハザードシリーズがプレイできることを筆者は楽しみにしている。

ジュドーさん
ジュドーさん
いやあ、まさかバイオで泣きそうになるとはね。シリーズ屈指の物語は、ファンであれば必見だ!


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