タイトル(かな) | えるでんりんぐ しゃどうおぶじえるどつりー |
ハード | PS5,PS4,PC,Xbox One,Xbox Series X|S |
発売日 | 2024年6月21日 |
点数 | 94点(傑作) |
総評 | ・DLCを超えた傑作DLC ・多くの新要素、凶悪なボス群 ・本編の悪い点もそのまま引き継いでいる |
レビュー執筆時点 | 2024年7月9日 |
序文
筆者は「エルデンリング」を2022年で最も面白かったゲームとして挙げており、また、このブログ全体でも「バルダーズゲート3」に続く2位タイ(もうひとつは「ゼノブレイド3」)と評価させていただいている。(2024年7月時点)
そんな傑作エルデンリングのDLCとくれば、期待しないわけにはいかない。価格が4,000円前後とお高めなことも、それに見合うボリューム・クオリティであることを暗に示しておりむしろプラス要素として感じられ、ワクワクの要因であった。
実際にプレイしてみた感想としては…総合的には、とても面白かった。首を長くして発売を待った甲斐のある、傑作DLCであった。
一方で、加点部分を打ち消すほどではないものの、不満点も複数あった。それは本編から続くものもあれば、DLCで新たに感じた不満点もあった。
(まあそれを補って余りある面白さだったのだが)
本レビューで、これらの感想をしっかりと伝えていきたい。
なお、本レビューは本文中にネタバレを含む箇所がある。閲覧の際は十分に注意していただきたい。
筆者のプレイ環境
本編発売時に1.5周ほどプレイしたきりだったので、DLCに備えて1からプレイし直すことにした。ビルドはいわゆる技量神秘。猛禽の鉤爪の神秘派生をメインに、パリィ用の中盾と、致命用の慈悲の短剣を用意。
ただ、DLCを満喫したいと思い、DLC後はなるべくDLC武器や戦技を優先的に使うことにした。DLC装備でよく使ったのは、レディソードの出血派生、毒手、逆手剣あたり。
また、DLC武器を強化するために、鍛石掘りの鈴玉【4】と喪色掘りの鈴玉【5】も忘れずに入手しておいた。
レベルはDLC開始時点で120前後。DLCクリア時は190前後。ボス戦での遺灰は縛った。
おそらく、平均的なプレイヤーの枠内に入っていると思う。
良かった点①期待を超えるボリューム
序文でも少し触れたが、本DLCは、DLCという枠に収まらないほどの大ボリュームであった。事前の開発インタビューで
「世界の大きさはリムグレイブと同じか、少し広いくらい」
とのコメントがあったが、体感としては遥かにそれを上回る。
また、単に広さだけでなく、新規ダンジョン&ボス、アイテム、戦技、魔術や祈祷などなど、すべてがDLCの枠を超えていた。新たな武器種も多く増えたため、やり応えと満足度だけでなく、十分な新鮮さをもプレイヤーに与えてくれた点は非常に満足度が高かった。
この新鮮さという点はとても嬉しい要素で、エルデンリングは本編のボリュームがすさまじく、また完成度も高いゲームであったからこそ、DLCで単にフィールドを増やしたとしても、「同じことをしている感」で楽しめないのではないかという危惧をしていた。
しかし、新たな武器種、戦技、魔術や祈祷等の追加が想定より多かったことや、1つ1つのダンジョンの作り込みが本編よりしっかりしていたことにより、飽きるどころか、本編をプレイしていた時のあの新鮮な楽しさを再度味わうことができたため、時間を忘れプレイすることができた。
良かった点②ボスの難易度バランス
ボス戦については色々思うことがあり、不満点についても後述するが、全体通してやり応えと満足感のあるボスが多かった。
序盤のレラーナ、中盤のメスメル、終盤のラスボス。特にこのあたりはプレイ中は絶望感があり半ギレになっていたものの、攻撃の対処や装備、戦技、霊薬の工夫をすることで、なんやかんや最終的には勝てるようになっているし、戦っていて楽しい。終わりよければ全てよし。この辺りの、「ギリギリ」なバランス感覚は流石。
パリィの活躍機会が多かった点や、ボス相手にも出血や毒といった状態異常に活躍の機会が多く与えられている点も楽しめた。
良かった点③世界観とロケーション
また、DLCの舞台となる影の地のロケーションも素晴らしかった。影の地は、その名の通り全体的に薄暗く陰鬱な雰囲気をもつ一方で、場所によっては薄明るい光が差し、えもいわれぬ幻想的な光景を見せてくれる。青海岸や巫女村などの美しさ、ギザ山の危険な雰囲気など、「冒険している感」は本編以上。
DLC全体のストーリーや登場NPCも良かった。(筆者の頭ではプレイしただけでは全容は理解できず、クリア後に皆様の意見で補完しているが)本編に登場しなかったデミゴッドの一人、ミケラの足取りを追うことが主目的となるが、ミケラ自身は最後の最後まで登場せず、わずかに残される十字の足跡や、ミケラ以外のNPCの発言や行動から彼女の動きを考察していくことになる。
DLCの登場NPC達は、序盤はミケラの魅了の術に侵されているが、あることをきっかけに魅了が消え、各々の目的のために動き始めることになる。この辺りの群像劇感は、エルデンリング本編には見られなかったものだ。
本編プレイ中はあまりストーリーを意識しなかったのだが、DLCではミケラや登場NPC達の動きや結末が気になりっぱなしであり、世界の冒険と同時に楽しむことができた点はとても良かった。
続いて、本DLCの不満点についても述べていきたい。本編のゲームデザインが素晴らしいがゆえに、DLCについても非常に満足度の高い作品であったが、不満点も少なからずあった。これは、本編から引き続き生じているものもあれば、DLCで新たに生じたものもある。このあたりについて見ていこう。
不満点①探索の楽しみが薄い
本DLC、確かに世界は広いのだが、フィールドにおいて「何もない」場所の面積が大きい。本編では、端まで行けばダンジョンや教会など何かしらの発見があることはもちろん、その道中にも様々な発見があり、それが探索のご褒美となっていた。しかしDLCでは、端まで行けば何かしらあることは本編同様だが、その道中は何もないことが多い。結果、ただ霊馬で突っ切っていくだけのエリアが非常に多い。
DLC自体のボリュームは膨大なため、それでも全くボリューム不足ということはないのだが、フィールド探索の楽しみという点では間違いなく本編より劣る。
また、置かれているアイテムに低レベルの強化素材が非常に多く、これも不満点であった。DLCのプレイ条件を満たすプレイヤーは、既に強化素材の鈴玉などは入手している場合がほとんどである。崩れゆくファルム・アズラのボスの撃破が必要な「鍛石掘りの鈴玉【4】」はまだしも、それ以外の鈴玉は入手しているであろうし、強化素材は概ね店から購入できる状態となっているはずだ。
せっかく探索しても、手に入るものは店で買える強化素材。これにはガッカリ。青や黄のアイテムアイコン以外には何のワクワク感もなかった点は残念であった。
今さら鍛石【3】とかもらってもね…。
不満点②強敵とボスの挙動について
また、敵の挙動も不満であった。
良い点でも述べた通り、難易度という意味では絶妙なバランスであったためその点は評価しているのだが、ソウルシリーズは新たな作品ごとにプレイヤーの上達に対応するため、最近の作品は敵の挙動が不自然な方向に進化し、「プレイヤーの動きを狩るための動き」となってしまっている。
不自然なディレイ、終わらない連続攻撃と切れないスタミナ、雑魚敵の強靭の高さ…。自キャラと敵が戦っているのではなく、画面の向こうのプレイヤーと開発が戦っているかのように錯覚させられる。特にディレイ周りは動きが不自然極まりなく、難易度以前に没入感を失う要因となっており、冷めてしまうシーンが多くあった。
エルデンリング本編のレビューでもその点について述べさせてもらったが、本DLCは特にそれが顕著である。
どんどん上達していくプレイヤーに刺激を与えるための策であることは理解できるのだが、こんなイタチごっこのような調整はもうお腹いっぱいである。そろそろ戦闘のデザインを見直す時が来たのではないだろうか。
さらに言うならば、竜系のボスが本編同様にかなり多かったことや、一部ボスがリトライにやたら時間がかかる配置でストレスが溜まる点も不満であった。特に、モースの廃墟近辺の霊炎竜などはかなりのストレス配置。周囲に霊炎竜と戦っている雑魚がいて、戦闘を仕掛けようものならそれらの雑魚もこちらへ向かってくる。そのため、安全策をとろうとしたら霊炎竜と雑魚の戦いを見守ってから戦闘を仕掛けることになる。なぜこのようにしたのか、意図を掴みかねる配置であった。
不満点③マッピングの不親切さ
「影樹の破片」や「霊灰」といった強化アイテムの収集がし辛いという点も気になった。これは本編における「黄金の種子」や「聖杯の雫」の収集の際も同じことを感じた。
入手した場所のマッピングがされないので、後から未入手のものを探そうとした場合に非常に不便である。
この辺りは過度なゲームらしさを排除する(リアルに寄せる)という側面から意図的にしているのであろうことが予想できるが、手動のマーカーは(本編合わせて)最大20個までしか置けないし、使い勝手もそれほど良くない。影樹の破片は50個、霊灰は25個も手に入るため、手動マーカーすら足りない点は流石に改善しても良いのではないだろうか。
ボスに勝てず詰まる→影樹の破片を集めよう→どこが入手済かわからず総当たりで探索するという流れはゲーム体験を損なっているように思うし、あまり好きではなかった。
不満点④やっぱり取り逃すNPCイベント
この点も本編レビューの際も言及した箇所。
NPCイベントが特定の場面まで進むとスキップされ進行になる点、ソウルシリーズの伝統でもあるし、何より現実的ではあるのだが…。
しかし、従来のソウルシリーズのように周回にそれほど時間がかからないならばともかく、本作ほどの長大なゲームは、一部のコアゲーマー以外は1周プレイして終わるのが標準であると考えられ、一度取り逃してしまうとそれっきりとなってしまう可能性が高い。そして、戦技「速斬」をはじめ貴重な報酬が多いので、取り逃がしのダメージも大きい。
特にDLCは、周回の際は再度本編をモーグのところまでクリアする必要があるし、DLC自体のボリュームも大きい。逃したNPCイベントだけをモチベーションに周回をするのは容易ではないだろう。
DLCにおいては、もう少しNPCイベントの時限要素はケアが欲しかったと感じるところだ。
総評
本編引き続き、非常に満足度の高いゲームであった。価格はDLCとしてはかなり高めであるものの、本編を楽しんだ人は間違いなく買いの傑作。
一方で、このDLCを機にもう少しゲームとしての遊びやすさに訴求しても良かったのではないかなと思った。本作は過去のソウルシリーズと違い、ステータスの振り直しや戦技の付け替えといったゲーム的な歩み寄りがみられる。NPCイベントや収集アイテムのマッピング周りなども、これらの歩み寄りに含めるという選択肢はあっただろうと感じるところだ。