タイトル(かな) | とらいあんぐるすとらてじー |
ハード | switch |
発売日 | 2022年3月4日 |
点数 | 86点(ぜひおすすめしたい) |
総評 | ・ユニットバランスと難易度バランスの良い王道SRPG ・シリアスで重厚なストーリー ・周回のダルさはマイナス |
↓キャラランク動画を作りました。良ければ見てください。
序文
トライアングルストラテジーは、「オクトパストラベラー」に続くHD-2Dシリーズ作品だ。ジャンルはSRPG。戦闘ではキャラクターを駒に見立ててマップ上を行動させ敵を撃破するというもので、FEシリーズやサモンナイトシリーズ、古くはアークザラッドやFFTなどと同様のジャンルだ。最近筆者がやったゲームでは「モナーク」もそうだった。
本作は、オクトパストラベラーやブレイブリーデフォルトで知られる浅野チームが開発に携わっているということで、「オクトラは苦手だがブレイブリーは大好き」という筆者にとっては期待と不安両方が入り混じる作品だった。
実際にプレイをした感想としては、SRPGに求める戦闘要素をしっかり抑えてくれており、とても面白かった。一方で、シナリオやキャラ描写のツッコミどころや周回要素のダルさについてはマイナス点かなという印象。本レビューでしっかりとその魅力と問題点を紹介していきたい。
なお、本レビューにはネタバレも含まれている。重大なネタバレについてはボタンで隠しているので、誤タップに注意いただきたい。
特徴
本作は3つのパートが存在し、これらを交互にプレイすることでゲームが進行していく。
①ストーリーパート
シナリオを読み進めて進行していくパート。読み進めるほか、「信念の天秤」と呼ばれるシステムで、多数決によりストーリー上の重要な決断を下していく。ストーリーが様々な分岐を見せるため周回要素がある。
②RPGパート
街や施設内を移動し、人々に話しかけながら情報収集、アイテム収集を行うパート。終了タイミングはプレイヤーの任意で、面倒であれば直ちにスキップをすることもできる。
通常のRPGと比較し狭い空間で行われるので、1回のRPGパートにつき所要時間は3~5分程度。
③戦闘パート
戦術シミュレーションタイプの戦闘を楽しむパート。同ジャンルにとってなじみ深い、マス目に区切られたフィールド内でユニットを動かし、行動指示をしていくタイプのものだ。
行動順はターン性でなく敵味方入り乱れており、ステータス「速度」の値などで決定される。
バックアタックはヒット時に必ずクリティカルとなるが、正面と側面のダメージに差異はない点はシンプル。
また、敵を前後に挟んで攻撃することで、追撃が発生する。
スキルの使用は、スキルごとに決まった「TP」を消費する形式。TPは1ターンで1回復する。TPの最大値は初期では3で、以降クラスアップするごとに最大5まで増える。
したがって、よくある「MP」システムは存在しない。
良い点
★しっかり作りこまれた戦闘パート
本作の戦闘は面白い。マジで面白い。正統派のSRPGをしっかりと正統&王道進化するとともに、同ジャンルの作品でしばしば見られる問題点にも一定の回答を見せてくれている。SRPG好きな層の「これこれ、これだよ」をしっかり抑えており、完成度はなかなかに高い。以下、細かく見ていこう。
- ユニット数は総勢30名と多い。レベル上げには傾斜がかかっており、低レベルのキャラほど取得経験値が大きいため、低レベルキャラを追い付かせるのが容易。
- 各ユニットの性能バランスがいい。この手のゲームでありがちな、「鈍重ユニットの使い道がない」「速度の高いユニット意外は無価値になる」といったことが、普通にストーリーを進める限りではそこまでなく、どのユニットもしっかり使える。
- 各ユニットの性能がユニークであり、完全下位互換となるようなキャラクターが一部を除きいない。同じヒーラー枠や弓枠でも、ユニット性能が大きく異なり、棲み分けがされている。
- 「行動順」「命中率」「想定ダメージ」「敵の攻撃範囲」などといった各種データが開示されているため、快適なシミュレーションバトルが可能。
- 難易度がちょうどいい。Normalでもしっかりと難しく、かなりやりごたえがある。
- 装備システムがシンプル。武器はひとつの武器を段階強化していくだけで、防具は存在しない。付け替え要素があるのはアクセサリーだけなので、装備に悩むことがあまりない。
- 地形や天候が戦略に重要な要素をもたらしている。たとえば、草地など「燃焼可能」のマスに炎攻撃を当てるとそのマスが燃焼し、通過したユニットにダメージを与えたり、天候が暴風のときは弓攻撃が当たり辛かったりする。
- 行動がターン制でないため、敵を倒す優先順位や「攻撃すべきか守るべきか」といった判断が重要となっており、面白い。
- 戦闘に敗北をしたり途中で諦めても、その戦闘で入手したexpが失われない。1戦に1時間以上かかることもあるSRPGではこの要素は大きく、敗北してしまった時の徒労感を緩和することができている。
- 戦闘不能によるユニットロストやデメリットがない。また、主人公セレノアが戦闘不能になってもゲームオーバーにならない。ユニットロストは、昔こそ緊張感のある独創的なシステムだったが、現在では単なるリセット要因にしか過ぎないため、この仕様の方が良い。
★シナリオはシリアスで複雑。だがわかりやすい
本作は3国間の戦争を描いたストーリーであり、ゲームを通じてシリアスな雰囲気で進行していく。イメージとしては、昔の「ファイアーエムブレム」シリーズや「戦場のヴァルキュリア」に近い。重要キャラもバンバン死んでいくので、無常さ、非情さが色濃く描かれており、読み進める手が止まらなくなる。特に17話以降の展開は必見だ。
各国の登場人物が多いため、一歩間違えれば理解の難しさにプレイヤーを置いていけぼりにしそうなものだが、随所に差し込まれるサブストーリーにより補足がされていること、Xボタンで発言者の情報が見られることなどの工夫により、きちんとストーリーにプレイヤーを引きこんでくれる点も◎。
見ての通りキャラデザも大変よく、もうこれ何ならセリフのところに立ち絵とか作っちゃってもよかったよね、もっと見たい!って思うくらい素晴らしい。
問題点
戦闘についてはとても面白く、SRPG好きは間違いなく「買い」な本作だが、主にシナリオやシステム面でやや気になる要素が散見された。
★周回を前提とした作りの割に、周回がダルすぎる
本作はマルチシナリオかつマルチエンディングで、要所要所に挟み込まれる「信念の天秤」での投票結果によりシナリオが様々な方向に分岐していく。エンディングは大きく分けて4種類あるため、周回プレイを余儀なくされている。
賢明な方は「いやいや、分岐点でセーブしとけばまるっと周回する必要ないじゃん」と思われるかもしれないが、様々な要素がそのやり方をし辛くさせている。
- 本作のED分岐は17話。4つの選択肢からどれを選ぶかでEDが分岐する。攻略情報などをみて理想的な選択肢を選び続ければ、1周目プレイでも真EDを含めた4種の選択肢を出現させることが可能だ。しかし真EDでは部隊を3つに分けることになるので、仲間の数が足りない1周目では真EDに進みづらく、普通に楽しもうと思った場合、真EDは自然と2周目以降の到達になる。
- 3話の分岐で2名、11話~15話の分岐で4名、ルートごとに仲間になるキャラクターが異なる。すべてのキャラを仲間にしようと思った場合、最低4周のプレイが必要になる。
- 登場人物の心情描写や裏側は各分岐に散りばめられているため、すべてをプレイしない限りシナリオに不明瞭な点が多い。
ということで、本作をきちんと楽しむには4周程度の周回が必要なわけで、シナリオの終盤まで何度も何度も同じ戦闘をプレイすることが非常に辛い。2周目以降は難易度をVery Easyにしてサクッと進めようと思っていたら、2周目以降は敵のレベルがアホみたいに上がるという親切な仕様のせいでVery Easyでもそれなりに戦闘に時間がかかる。戦闘面白いから2周目以降でも楽しめるように、という粋な計らいではあるのだが、そこは選ばせて欲しかった。さすがに4周もやる時間ないよ。。。
というか何なら、チャプター方式にして、周回は分岐点からやればOKというようにしてほしかった。
一部ルートのシナリオの不自然さ
本作は信念の天秤での行動結果によりシナリオがいくつも分岐したり収束したりするのだが、通ったルートによってはかなりキャラクターの言動が不自然になる。
違和感のあるキャラクターの言動
一部キャラの言動がやや不自然で、無理やりシナリオ展開に合わせられている感じが否めない。
など、挙げていけば他にも出てくるだろう。
SRPGは戦闘システムが面白いだけじゃなくて、そのお膳立てというか…どれだけアツい流れから戦闘が始まるか、というのが大事である。普通のコマンドタイプのRPGと比較して、戦闘に入るまでの導入やBGMの効果がゲーム全体の盛り上げを大きく左右するジャンルだと思っている。
その意味でこれらの「ん??」な要素は結構痛くて、感情移入しづらかった点は否定できない。ルートごとの整合性やキャラクターの心情描写はもう少し丁寧に欲しかった。
仲間になるキャラクターのチョイス
本作は総勢30名の仲間が加入するのだが、やや不満な点が2点ある。
- 仲間のチョイスが微妙。ほとんどの仲間はストーリーに直接関与しない、モブといっても差し支えないようなキャラたちで、ストーリーに絡む主要なメンバーは10名弱しかいない。その仲間も、詰所に最初からいる鍛冶屋や商人、酒場の姉さんといった、「お前が仲間になるんかーい!!」と突っ込みたくなるような面々が多い。
- 一方、ストーリーで絡むキャラクターたちはゲスト参戦ばかりで正式加入しないことが多い。前述したファルクス家当主ランドロイや、ローゼル村の若者ジェロムなどもルートによっては仲間になってもよかったのでは。
これらのせいか、30名もいる割には大所帯感が薄く、体感として仲間が少ないような印象を受けてしまったのは私だけだろうか。サモンナイトなんかはもっと人数が少ないが、全員がストーリーに絡んでいるので体感的には多く思えたのだが。
クラスチェンジのワクワク感が薄く、習得スキルがしょぼい
本作はキャラの成長に応じて基本クラス→上位クラス→最上位クラスの3つのクラスが存在するのだが、上位のクラスにクラスチェンジした際に覚えるスキルがキャラによってはショボく、かなり拍子抜けする。
- 主人公セレノアが最上位クラスになった際に覚えるのは、味方の受けたダメージの半分を代わりに受ける「ペインシェア」のみで、その後は何も覚えない。ちなみにこのペインシェアは、別のキャラクターがもっと初期の段階で普通に覚える。
- ジーラの最終スキルは、近くに敵がいると移動力が+1される「脱兎の心得」。これも別にダメなスキルじゃないけど、最終スキルにしてはパンチが弱い…そして他のキャラも覚える。
この点、条件を満たすことで各キャラの深掘りエピソードが2つ発生するので、それを見ることで何らかのスキルが入手できるなどの要素があってもよかった。(どうせ使っていれば深掘りエピソードの出現条件は満たすので)
戦闘に関して
- 敵の思考時間がやや長い
- 早送り機能を用いても待ち時間が長く、ターン制バトルでないため敵ターンに席を外すことも難しい。敵の行動自体をスキップできる機能があればよかった。
- 問題点というわけではないが、ZOCは欲しかった。
総評
続編必至の良作。SRPG好きはもちろん、これまでプレイしたことのない人にとってのデビュー作としても申し分のない出来だ。ユニットのバランスと個性に気を遣っていそうなところが、作品への愛が感じられてすばらしい。そしてSRPGを面白くするために欠かせない要素であるストーリー、BGMなどの各種演出も大変良い。一方、ストーリーの見せ方(周回前提の割に周回が面倒すぎるバランス)については大きなマイナスで、無駄な作業に過ぎない周回時間は苦痛のひとこと。次回作ではここは何とかしてほしい。本当。